確定申告書「税金の計算」の書き方 - 個人事業主の記入例付き

更新日 2024年7月25日

確定申告書「税金の計算」の書き方

確定申告書の第一表にある「税金の計算」欄について、書き方をわかりやすく解説します。個人事業主向けの記入例を掲載していますが、還付申告をする会社員の方などにも参考にして頂けます。

確定申告書 第一表 - 税金の計算

確定申告書 第一表「税金の計算」の書き方 - 全体の記入例

確定申告書 第一表「税金の計算」は、大まかに分けると以下の4ステップで行います。自力でやると大変ですが、確定申告対応の会計ソフトなどを使用すれば、速く正確に申告書を作成できます。

「税金の計算」- 各欄の目的をわかりやすく整理

確定申告書 第一表「税金の計算」の書き方 - 4ステップで考えるとわかりやすい

このように大枠を理解しておけば、小難しい専門用語に惑わされることはありません。ここからは、一般的な個人事業主の記入例を用いて、各ステップごとに細かく解説していきます。

1.「所得税額」を求める

確定申告書 第一表「税金の計算」の書き方 - 所得税額(上の㉚に対する税額)を求める

「課税される所得金額㉚(課税所得)」を記入したら「所得税額㉛」を求めます。税率は課税所得によって異なるため、後述の速算表に当てはめて計算するのが一般的です。

「所得税額」を求める欄

課税される所得金額 「⑫ - ㉙ = ㉚」(1,000円未満の端数は切り捨て)
※ 計算結果がマイナスなら何も記入せず「0円」とする
上の㉚に対する税額 (所得税額) 以下の速算表をもとに算出した「所得税額」を記入

以下の速算表に照らして「課税所得㉚ × 税率 - 控除額 = 所得税額㉛」のように計算します。たとえば、課税所得が200万円であれば「200万円 × 10% - 9万7,500円 = 10万2,500円」となります。

所得税の速算表 - 国税庁サイトから転載

課税される所得金額 税率 控除額
~195万円 5% 0円
195万円~330万円 10% 97,500円
330万円~695万円 20% 427,500円
695万円~900万円 23% 636,000円
900万円~1,800万円 33% 1,536,000円
1,800万円~4,000万円 40% 2,796,000円
4,000万円~ 45% 4,796,000円

※「~」は、「超~以下」

ちなみに、株で儲けるなどして確定申告書の第三表を提出するときは、第三表で「所得税額」を計算します。その場合、第一表の「課税所得㉚」欄には何も記入しません。

2.「基準所得税額」を求める

確定申告書 第一表「税金の計算」の書き方 - 再差引所得税額(基準所得税額)を求める

「配当控除」や「住宅ローン控除」などの税額控除があれば記入します。税額控除を受ける人は、全体の1割程度にすぎません。税額控除を受けない人は、先ほど算出した「所得税額㉛」が、そのまま「基準所得税額㊸」となります。

所得税の「税額控除」とは?
「所得税額」から一定額を直接差し引くことを「税額控除」という。税額控除の適用を受ける際、基本的には所定の計算書などを添付する必要がある。こうした添付書類を前もって作成しておき、それを見ながら確定申告書に転記すると効率がよい。

「基準所得税額」を求める記入欄

配当控除 第一表の「配当⑤」欄について控除額を記入する
※「特定証券投資信託」については所定の計算書を使用
「投資税額等控除」を受ける個人事業主が記入する
・左側の空欄に「投資税額等」と記入 ・区分欄に「1」と記入
(特定増改築等) 住宅借入金等特別控除 別紙「計算明細書」から転記する
区分1…東日本大震災の特例でのみ使用する欄
区分2…給与などで年末調整済であれば「1」と記入
政党等寄附金等 特別控除 ㉟~㊲ 別紙「計算明細書」から転記する
住宅耐震改修 特別控除等 ㊳~㊵ 別紙「計算明細書(区分1・2)(区分3)」から転記する
区分:耐震改修=1、特定改修=2、認定住宅=3、併用=4
差引所得税額 「㉛ - (㉜~㊵の合計) = ㊶」
※ 計算結果がマイナスなら「0円」と書く
災害減免額 被災した年分の所得に応じた控除額を記入する
ただし、災害で資産の半分以上を損失した場合に限る
再差引所得税額 (基準所得税額) 「㊶ - ㊷ = ㊸」

「投資税額等控除㉝」については、製造業などの一部業種を除き、一般的な個人事業主が利用できるものはほぼありません。いくつか例示しておくので、参考までにご覧ください。

個人事業で利用できる「投資税額等控除」の一覧
・試験研究費の総額に係る所得税額の特別控除
・中小事業者が試験研究を行った場合の所得税額の特別控除
・特別試験研究費に係る所得税額の特別控除
・高度省エネルギー増進設備等を取得した場合の所得税額の特別控除
・中小事業者が機械等を取得した場合の所得税額の特別控除
・地域経済牽引事業の促進区域内において特定事業用機械等を取得した場合の所得税額の特別控除
・地方活力向上地域等において特定建物等を取得した場合の所得税額の特別控除
・地方活力向上地域等において雇用者の数が増加した場合の所得税額の特別控除
・特定中小事業者が経営改善設備を取得した場合の所得税額の特別控除
・特定中小事業者が特定経営力向上設備等を取得した場合の所得税額の特別控除
・給与等の引上げ及び設備投資を行った場合の所得税額の特別控除
・認定特定高度情報通信技術活用設備を取得した場合の所得税額の特別控除
・革新的情報産業活用設備を取得した場合の所得税額の特別控除
・事業適応設備を取得した場合等の所得税額の特別控除
・特定復興産業集積区域において機械等を取得した場合の所得税額の特別控除
・企業立地促進区域等において機械等を取得した場合の所得税額の特別控除
・避難解除区域等において機械等を取得した場合の所得税額の特別控除
・特定復興産業集積区域において被災雇用者等を雇用した場合の所得税額の特別控除
・企業立地促進区域等において避難対象雇用者等を雇用した場合の所得税額の特別控除
・避難解除区域等において避難対象雇用者等を雇用した場合の所得税額の特別控除

「(特定増改築等)住宅借入金等特別控除㉞」は、いわゆる「住宅ローン控除」を利用する際の記入欄です。所定の計算明細書を作成し、控除額を申告書に転記すればOKです。

3.「所得税及び復興特別所得税の額」を求める

確定申告書 第一表「税金の計算」の書き方 - 所得税及び復興特別所得税の額を求める

先ほど求めた「基準所得税額㊸」に基づいて、以下の通り「所得税及び復興特別所得税の額㊺」を計算します。

「所得税及び復興特別所得税の額」を求める欄

復興特別所得税額 「㊸ × 0.021 = ㊹」(1円未満の端数は切り捨て)
所得税及び 復興特別所得税の額 「㊸ + ㊹ = ㊺」

4.「第3期分の税額」を求める

確定申告書 第一表「税金の計算」の書き方 - 第3期分の税額を求める

源泉徴収予定納税は、いうなれば所得税を“前払い”する制度です。すでに納付が済んでいるわけですから、その金額を差し引いて「第3期分の税額」を算出します。

「第3期分の税額」を求める欄

外国税額控除等 ㊻~㊼ 別紙「外国税額控除に関する明細書」等から転記する
※ 外国で“所得税に相当する税金”を納付する場合のみ
源泉徴収税額 第二表「㊽源泉徴収税額の合計」から転記する
申告納税額 「㊺ - (㊻~㊽の合計) = ㊾」
プラスの場合……100円未満の端数は切り捨て
マイナスの場合…1円未満の端数は切り捨て
予定納税額 第1期分と第2期分の合計を記入
第3期分
の税額
納める税金 51 「㊾ - ㊿ = 」
※ 計算結果がプラスの場合のみ記入する
還付される税金 52「㊾ - ㊿ = 」
※ 計算結果がマイナスの場合のみ記入する

金額がマイナスの場合は、数字の先頭に「-」か「△」を記入する

「源泉徴収税額」の調べ方(例)

自分で記帳しておく 支払調書を参照する
確定申告書 第一表「税金の計算」の書き方 - 源泉徴収税額(帳簿の付け方・見方)
確定申告書 第一表「税金の計算」の書き方 - 源泉徴収税額(支払調書の見方)

源泉徴収税額は自分で記帳しておくのが基本ですが、パッと確認したいときは「支払調書」という書類が役立ちます。通例では、確定申告前の1月~2月ごろに取引先から送られてきます。取引先が複数ある場合は、それらの合計額を記入しましょう。

所得税の納期限 - 確定申告で納めるのは「第3期分」

第1期分 第2期分 第3期分
予定納税あり 予定納税
当年7月末まで
予定納税
当年11月末まで
確定申告・納付
翌年3月15日まで
予定納税なし - -

※土日祝の場合は翌平日へ繰り越し

予定納税の対象者には、6月中旬ごろに通知が届きます(郵送or電子受取)。この通知が送られていなければ「第1期分・第2期分」は関係ありませんので、「予定納税額㊿」欄は空欄とします。

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