確定申告書の書き方 - 個人事業主・フリーランスの記入例つき

更新日 2024年7月13日

確定申告書類の書き方 - 個人事業主・フリーランスの記入例

個人事業主・フリーランス向けに、確定申告書「第一表・第二表」の書き方を記入例つきで解説します。2023年分の確定申告書は、原則として2024年(令和6年)2月16日〜3月15日に提出する必要がありました。

確定申告書の構成 - 第一表・第二表

確定申告書の「第一表・第二表」はセットで提出します。関連する項目も多いので、2つ並べて記入するとよいでしょう。

第一表 第二表
確定申告書 第一表(令和5年分以降用)- 全体の記入例
確定申告書 第二表(令和5年分以降用)- 全体の記入例

一般的な個人事業主・フリーランスの記入例をもとに、確定申告書の書き方・見方をわかりやすく解説します。ただ、あらかじめお伝えしておきますが、帳簿とにらめっこしながらすべて自力で申告書を作成するのは、非常に骨が折れる作業です。

個人事業主向けの会計ソフトを使えば、帳簿付けと確定申告の両方を効率化できますから、未導入の事業主はぜひ検討してみましょう。「事業所得」として申告するなら、帳簿付けは必須です(帳簿がなければ原則「雑所得」)。

「申告書A」と「申告書B」の違い - 2021年分まで
2021年分(令和3年分)までは「申告書A」と「申告書B」の区別が存在しました。2021年分以前の還付申告や修正申告などでは、今後もこれらを使い分ける必要があります。
>> 2021年分以前の確定申告書類 - 申告書AとBの違い

1. 基本情報

第一表 第二表
令和5年分以降用 確定申告書 第一表 基本情報
令和5年分以降用 確定申告書 第二表 基本情報

管轄の税務署は、国税庁のページで「納税地の住所」を入力して検索できます。基本的には「自宅=納税地」です。別の場所にオフィスがある人も、自宅の住所を記入すればOKです。「屋号」欄は、屋号やペンネームがなければ空欄とします。
>> すぐにマイナンバーを知る方法まとめ

第一表の「種類」欄 - 当てはまるものに◯をつける

  • 青色:青色申告を行う個人事業主
  • 分離:第三表を提出する人(株の配当など)
  • 国出:国外移住などで特例制度を利用する人
  • 損失: 第四表を提出する人(事業の赤字など)
  • 修正:修正申告をする人

第一表の「特農」欄は農家用の記入欄ですから、普通の個人事業主・フリーランスは無視してOKです。「整理番号」欄は、税務署側で自動的に補完されるので、番号を覚えていなければ記入しなくても問題ありません。

2. 収入金額等・所得金額等

第一表 第二表
令和5年分以降用 確定申告書 第一表 収入金額等・所得金額等
令和5年分以降用 確定申告書 第二表 収入金額等・所得金額等

第一表には「事業収入」や「事業所得」の金額を記入します(収入 - 必要経費 = 所得)。収支内訳書青色申告決算書を先に作成し、そこから転記すればOKです。区分欄には、帳簿の種類を1~5の番号で記入します。

「事業収入」の区分欄 - 帳簿の種類を選択

  1. 優良な電子帳簿 (税務署への事前届出あり)
  2. その他の電子帳簿 (税務署への事前届出なし)
  3. 紙の帳簿 (複式簿記)
  4. 紙の帳簿 (簡易簿記)
  5. 上記のいずれにも該当しない (記帳の仕方が分からない場合など)

第二表には、源泉徴収を受けた収入についてだけ記入します。ここで記入漏れがあると、所得税を余分に納めることになるため注意しましょう。源泉徴収をまったく受けていなければ何も記入しません。

源泉徴収を受ける事業主(主な例)
作家、デザイナー、編集者、通訳、講師、コンサルタント、開業医、弁護士や税理士などの士業、スポーツ選手、インストラクター、モデル、芸能人、ホステス、家内労働者等、馬主 など

「源泉徴収税額」は、個人事業主が自分で計算するか、取引先から1月~2月ごろに送付される「支払調書」という書類を参考にするのが一般的です。支払調書が手元に届いてなければ、送ってもらえるよう取引先と交渉してみましょう。

3. 所得から差し引かれる金額(所得控除)

第一表 第二表
令和5年分以降用 確定申告書 第一表 所得から差し引かれる金額(所得控除)
令和5年分以降用 確定申告書 第二表 所得から差し引かれる金額(所得控除)

「所得控除」は上図のように、ざっくり3種類に大別すると理解しやすいです。社会保険料控除」と「基礎控除」は、ほとんどの人が該当するので忘れず記入しましょう。

【第一表・第二表】記入する前に準備しておくこと

保険料など
控除証明書や領収書を手元に用意しておく
社会保険料小規模企業共済等掛金生命保険料地震保険料
本人や家族の事情
控除額や要件を確認し、家族のマイナンバーがわかる書類を用意しておく
寡婦ひとり親勤労学生障害者配偶者扶養基礎
その他の負担
添付書類などを用意し、控除額を計算しておく
雑損医療費寄附金

>> 所得控除の一覧表 - 各控除の概要がパッとわかる!

第一表には控除額を記入するだけなので、上記の準備をしておけば、そう迷うことはありません。第二表については、「本人に関する事項」と「配偶者や親族に関する事項」の用語が難しいので、下表でわかりやすく整理しておきます。

【第二表】本人・配偶者や親族に関する事項(用語説明)

本人に関する事項
寡婦…………婚姻歴のある単身女性なら◯ (ひとり親を除く)
ひとり親……シングルマザー・ファザーなら◯ (婚姻歴の有無は問わない)
勤労学生……所得75万円以下の働いている学生・生徒なら◯
障害者………知的障害、精神障害、身体障害等があれば◯ (特別障害者を除く)
特別障害者…重度の知的障害、精神障害、身体障害等があれば◯
配偶者や親族に関する事項
障……障害者に該当すれば○
特障…特別障害者に該当すれば○
国外…国外居住なら◯か1〜5の区分番号(国外居住親族の区分
年調…国外居住かつ、年末調整で扶養控除か障害者控除を受けていれば○
同一…あなたが所得1,000万円超で、配偶者が「同一生計配偶者」なら○
別居…別居している場合or国外居住の場合に○
16……16歳未満なら○
調整…あなたの給与収入が850万円以下なら記入不要

上記のような特殊事情を抱えているケースはそれほど多くありません。一般的な個人事業主・フリーランスであれば、一つも◯をつけずに終わることも珍しくないでしょう。

4. 税金の計算

第一表 第二表
令和5年分以降用 確定申告書 第一表 税金の計算
令和5年分以降用 確定申告書 第二表 税金の計算

税金の計算は、国税庁が公開している「速算表」を用いるのが一般的です。「課税される所得金額㉚」を以下の速算表に当てはめ、「㉚ × 税率 - 控除額 = 税額」を計算します。

所得税の速算表

課税される所得金額 税率 控除額
~195万円 5% 0円
195万円~330万円 10% 97,500円
330万円~695万円 20% 427,500円
695万円~900万円 23% 636,000円
900万円~1,800万円 33% 1,536,000円
1,800万円~4,000万円 40% 2,796,000円
4,000万円〜 45% 4,796,000円

※「~」は「超~以下」


計算例
たとえば、課税される所得金額が200万円のとき、税額は次のように算出できる。
「200万円 × 10% - 9万7,500円 = 10万2,500円」

予定納税」を行った事業主は、第1期・第2期分の合計額を記入し、第3期分の税額を求めます。予定納税を行っていない場合は「申告納税額㊾ = 第3期分の税額」となります。

第二表の「特例適用条文」欄は、税務上の特例を受ける際に記入します(住宅ローン控除など)。といっても、青色申告の各種特典のように、条文の記入なしで適用できる特例等も多いです。

>>「税金の計算」欄の書き方を詳しく解説!

5. その他・延納の届出

第一表 第二表
令和5年分以降用 確定申告書 第一表 その他・延納の届出
令和5年分以降用 確定申告書 第二表 その他・延納の届出

第一表の「その他」欄では、主に「事業専従者(せんじゅうしゃ)」と「青色申告特別控除」について記入します。収支内訳書青色申告決算書を見ながら記入するとスムーズです。

「事業専従者」と「青色申告特別控除」- ここを見ればOK

(白色申告)収支内訳書 1ページ 青色申告決算書 2ページ
(白色)事業専従者 - 収支内訳書を参照して申告書へ記入
青色事業専従者・青色申告特別控除 - 青色申告決算書を参照して申告書へ記入

第一表の「未納付の源泉徴収税額(60)」欄は、還付申告でのみ使用します。「還付される税金(52)」がなければ記入不要です。

所得税の「延納」とは?
所得税を2回に分けて納付する制度。原則、3月15日と5月31日の期限までに納付すればよい。ただし、3月15日の納付期限までに所得税額の50%以上を納付する必要があり、残りの税額に対して年利1.5%~2%前後の「利子税」が別途かかる。

任意で「延納」を行う場合は、1回目と2回目に納付する金額を記入すればOKです。別途届出書などを提出する必要はありません。延納しない場合は、2ヶ所とも空欄にしておきます。

6. 住民税・事業税

令和5年分以降用 確定申告書 第二表 住民税・事業税

確定申告は、住民税個人事業税の申告も兼ねています。細かな制度上の違いに対応するため、ここで微調整を行います。事業所得の申告をするだけなら、大部分は記入不要です。

住民税の記入欄
令和5年分以降用 確定申告書 第二表 住民税の記入欄
事業税の記入欄
令和5年分以降用 確定申告書 第二表 事業税の記入欄

個人事業税は「法定業種(全70種)」に対して課税されます。わりと対象範囲が広いので、非課税となるケースはそう多くありません。税率は原則5%ですが、ごく一部の業種だけ税率が異なります(畜産・水産・マッサージなど)。
>> 個人事業税の非課税業種や税率をわかりやすく解説

住民税と事業税の両方に関わる記入欄

令和5年分以降用 確定申告書 第二表 住民税と事業税の両方に関わる記入欄

青色事業専従者の事前届出をしていない場合、所得税においては専従者給与を経費計上できませんが、住民税・事業税においては経費計上できます。

うっかり専従者の届出書を提出し忘れていた事業主は、右下隅の「所得税で控除対象配偶者などとした専従者」欄に、専従者とする親族の氏名・給与額を記入しておきましょう。

>> 添付書類台紙の作成方法
>> 収支内訳書の書き方(白色申告)
>> 青色申告決算書の書き方(青色申告)
>> 個人事業の確定申告で提出する書類