個人事業税の計算式と計算例・控除など
更新日 2024年7月27日
個人事業税は、地方自治体が送付する納付書にしたがって納税する地方税です。 個人事業主が自ら計算する必要はありませんが、大体いくらになるかを知っておきたい人は、本ページの計算例を参照してみて下さい。
個人事業税の厳密な計算式
事業所得における個人事業税の厳密な計算は、以下のように行います。
- 個人事業税の計算式
- (事業所得 + 所得税の事業専従者給与(控除)額 − 個人の事業税の事業専従者給与(控除)額 + 青色申告特別控除額 − 各種控除)× 税率 = 個人事業税の税額
上記の計算式は東京都主税局が公示しているものですが、このままでは分かりにくいかと思います。 正確性は損なわれますが、計算式を簡略化すると以下のようになります (記事後半の計算例の通り、大抵の場合は簡略化した式で算出しても同じ計算結果になります)。
- 個人事業税の計算式(簡易版)
- (収入 − 必要経費 − 専従者給与等 − 各種控除)× 税率 = 個人事業税
この「必要経費」の中に専従者給与等は、含んでいません。 計算式の中にある用語については、下表を参考にして下さい。
事業所得 | 収入 − 必要経費 − 専従者給与等 − 青色申告特別控除 = 事業所得 不動産所得がある場合は、その金額も含む。 (雑所得が課税対象とされる場合もあり。) |
専従者給与 (専従者控除) | 家族従業員に支払う給料のこと (白色申告の場合は、専従者給与ではなく専従者控除) 一定額を必要経費として控除できる。 |
青色申告特別控除 | 青色申告者にのみ適用される特別控除(10万円 or 55万円 or 65万円) 青色申告特別控除は個人事業税には適用されない。 (その理由から、厳密な計算式の中では相殺されている。) |
各種控除 | 1年間営業していれば、事業主控除290万円が適用される (ただし年の途中で開業した場合などは、290万円の月割となる) 事業主控除とは別に「繰越控除」がある。(詳細は後述) |
税率 | 3~5%(業種によって異なる。) |
上表に記載の通り、事業所得はこの式で算出します。
収入 − 必要経費 − 専従者給与等 − 青色申告特別控除 = 事業所得
専従者給与(控除)や青色申告特別控除も差し引いた後の金額が、事業所得なのです。
しかし、個人事業税では青色申告特別控除が適用されません。 ですから、東京都主税局の計算式では「事業所得」の計算の中で一度差し引かれる青色申告特別控除額を、 もう一度計算で足すことで、相殺するという計算式になっているわけです。
この理由で、冒頭で挙げた東京都主税局の厳密な計算式には 「青色申告特別控除額」がプラスされる形で計算式の中に入っています。
そこからさらに、各種控除を差し引いた金額が課税対象になります。 これに業種によって異なる税率をかけて、個人事業税の金額を算出します。
計算式の「各種控除」とは?
個人事業税の計算でいう「各種控除」は、所得控除とは異なるものです。 ここでいう各種控除とは、以下の「事業主控除」と「繰越控除」を指します。
事業主控除290万円
- 年間290万円(営業期間が1年未満の場合は月割額)
この事業主控除は、全ての事業に適用されます(営業期間が1年未満の場合は月割額)。 なので、収入から必要経費を差し引いた後の金額が290万円以下であれば、個人事業税も課されないということになります。 あまり儲かっていなければ、個人事業税を納める必要がないということです。
繰越控除
- 損失の繰越控除(青色申告者で、赤字となった時)
- 被災事業用資産の損失の繰越控除(白色申告者で、震災などによって損失がある時)
- 譲渡損失の控除と繰越控除(機械などの事業用資産を譲渡したために損失が生じた時)
個人事業税の税率について
最後にかける税率は、業種によって異なります。 ただ、ほとんどの業種は税率5%だと思っておきましょう。 事業の種類と税率の関係については、下記の通りです。
一部の特殊な業種のみ3~4%で、多くの業種における個人事業税の税率は5%です。 上表を簡単にまとめると、下記のようになります。
税率 | 業種 |
---|---|
5% | 物品販売業・飲食店業・デザイン業など、多くの業種 |
4% | 畜産業・水産業・薪炭製造業 |
3% | あんま・マッサージ・指圧・はり・きゅう・柔道整復 その他の医業に類する事業と装蹄師業 |
個人事業税の課税対象にならない業種もあるが、ほとんど多くの事業は課税対象
個人事業税の計算例
下記のケースで、個人事業税を計算してみましょう。先述のとおり、個人事業税に青色申告特別控除は影響しませんが、本例ではあえてこれを含めています。
- 年間収入 1,000万円
- 必要経費 600万円
- 専従者なし
- 青色申告特別控除 65万円
- 料理店業(税率5%)
個人事業税の計算例
先に、東京都主税局の厳密な計算式に準じて、個人事業税を算出する方法を紹介します。 まずは、事業所得を算出します。
- 事業所得の算出方法
- 収入 − 必要経費 − 専従者給与等 − 青色申告特別控除 = 事業所得
1,000万円 − 600万円 − 65万円 = 335万円(事業所得)
事業所得が分かったので、冒頭で挙げた東京都主税局の計算式に、他の金額をあてはめましょう。
- 個人事業税の計算式
- (事業所得 + 所得税の事業専従者給与(控除)額 − 個人の事業税の事業専従者給与(控除)額 + 青色申告特別控除額 − 各種控除)× 税率 = 個人事業税の税額
335万円 + 65万円 − 290万円 = 110万円
今回は「専従者なし」なので、計算に専従者給与額などは関係ありません。 個人事業税に青色申告特別控除は適用されないので、 事業所得に青色申告特別控除(65万)を足して相殺し、事業主控除(290万)を差し引きます。
「料理店業」は、個人事業税の税率が5%なので、110万円に5%をかけます。
110万円 × 0.05 = 55,000円
よって、この場合は55,000円を個人事業税として納付します。
個人事業税の計算例(簡易版)
なお、簡易版の計算式で算出しても同じ結果になります。
- 個人事業税の計算式(簡易版)
- (収入 − 必要経費 − 専従者給与等 − 各種控除)× 税率 = 個人事業税
1,000万円 − 600万円 − 290万円 = 110万円
110万円 × 0.05 = 55,000円
2月~3月の確定申告期間に申告を行っていれば、その内容が税務署から地方自治体に伝達されます。 そして8月頃に都道府県税事務所から、個人事業税の通知書が郵送されます。 個人事業税の納付時期は8月と11月なので、本例では55,000円を2回に分割して納付することになります。
計算のポイントまとめ
個人事業税の計算に関するポイントをまとめておきます。先述のとおり、個人事業税は自治体から納税額を通知されるものであり、納付のために納税者がみずから計算する必要はありません。
個人事業税の計算に関するポイント
- 大抵の場合、簡易版の計算式で個人事業税額をもとめることができる
- 年間290万円の「事業主控除」が適用される
- 事業主控除の他、赤字や被災損失がある場合には「繰越控除」も適用される
- 税率は業種によって異なり「3〜5%」だが、大抵の業種は「5%」
- 青色申告特別控除は適用されない
- 専従者給与等は適用される
納税の対象になる個人事業主・フリーランスには、通常8月頃に通知書と納付書が郵送されます。これにしたがって、8月と11月の2回にわたって個人事業税を納付します。
>> 個人事業税の納付方法や納付期限について
>> 個人事業主が納める主な税金の納付時期まとめ
>> 個人事業主の節税方法まとめ