所得の種類 - 10の所得区分を分かりやすく解説
更新日 2024年7月17日
所得税法では、所得が10種類に大別されています。所得の性質に応じて分類されており、それぞれに応じた税金の算出方法が用意されています。
10種類の所得について
まずは10種類の所得をざっくりとおさえておきましょう。 個人事業では、大体において本業の所得は「事業所得」です。 なので、特別なことをしてないかぎり、この事業所得をおさえておけばOKです。 会社員の場合は大抵、「給与所得」が主な所得です。
所得の種類 | 概要 |
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利子所得 | 預貯金や公社債の利子など 例)銀行預金の利息 |
配当所得 | 株主や出資者が、法人から受けとる配当など 例)株の配当金 |
不動産所得 | 土地や建物などの貸し付けによる所得 例)所持しているアパートの家賃収入 |
事業所得 | 一般的な事業から生まれる所得(収入 − 必要経費 = 所得) 例)フリーランスのデザイナーが本業で得る利益 |
給与所得 | 勤務先から受けとる給料や賞与 例)会社員やアルバイトスタッフがもらう月給やボーナス |
退職所得 | 退職によって勤務先から受ける退職手当など 例)会社を辞める時にもらう退職金 |
山林所得 | 山林を伐採したものなどを譲渡した場合に生ずる所得 例)所有している山林を売ったときの利益 |
譲渡所得 | 土地・建物・株式など、資産の譲渡による所得 例)土地や株式を譲渡して得た利益 |
一時所得 | 上記8つに当てはまらない、一時的な所得 例)懸賞や福引きの賞金品 |
雑所得 | 上記9つに当てはまらない所得 例)印税、公的年金 |
これらの所得には、総合課税のものと分離課税のものがあります。総合課税の対象になる所得は、最終的に他の所得と合計して所得計算を行い、税金を算出します。一方、分離課税の対象になる所得は、他の所得と合算せず、切り離して税金を算出します。
同じ所得でも、その内容によって総合課税の対象になる所得と、分離課税の対象になる所得に分かれる場合もあります。例えば、譲渡所得は、譲渡するものの内容によって、総合課税の対象と分離課税の対象に分かれます。
所得の課税方式と計算方法
所得に応じて、その課税方式と計算方法が異なります。前述の通り、総合課税の所得は、最終的に他の所得と合算して税金を算出します。一方、分離課税の所得は、他の所得と合算せず、切り分けて税金を算出します。
所得の種類 | 課税方式と基本的な計算方法 |
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利子所得 | 原則的に源泉分離課税 自分で計算する必要なし |
配当所得 | 確定申告不要制度 or 総合課税 or 申告分離課税 源泉徴収される前の収入金額 − 株式等取得のための借入金利子 = 配当所得 |
不動産所得 | 総合課税 収入金額 − 必要経費 = 不動産所得 |
事業所得 | 原則的に総合課税 収入金額 − 必要経費 = 事業所得 |
給与所得 | 総合課税 源泉徴収される前の収入金額 − 給与所得控除額 = 給与所得 |
退職所得 | 分離課税 (源泉徴収される前の収入金額 − 退職所得控除額) × 50% = 退職所得 |
山林所得 | 分離課税 収入金額 − 必要経費 − 特別控除額(最高50万円) = 山林所得 |
譲渡所得 | 総合課税 or 分離課税 ケースにより計算式が異なる |
一時所得 | 総合課税(一部は源泉分離課税) 総収入金額 − 収入を得るために支出した金額 − 特別控除額(最高50万円) = 一時所得 一時所得は、その所得金額の半分だけが総合課税の対象になる |
雑所得 | 原則的に総合課税(分離課税の対象になるものも) ・公的年金等 → 収入金額 − 公的年金等控除額 = 公的年金等の雑所得 ・公的年金等以外のもの → 収入金額 − 必要経費 = その他の雑所得 |
不動産所得と給与所得については、その全てが総合課税の対象です。一方、退職所得と山林所得については、その全てが分離課税の対象となっており、他の所得と合算をせず単体で税金を算出します。その他の所得については、その内容に応じて課税方法が異なります。
利子所得
利子所得の中で多くの人に関係するのは、銀行口座に預貯金をして受け取る利息です。それ以外には、公社債(国債や社債など)の利息、合同運用信託や公社債投資信託の収益分配金が含まれます。
銀行預金につく利息は、受け取る時点ですでに税金が差し引かれています。よって、確定申告の際にこの内容を含める必要はありません。>> 預金利息の記帳方法
利子所得のポイント
- 銀行や国債など、公的な性質の強いものの利息や分配金が「利子所得」
- 利子所得で多くの人に関係するのは、銀行利息
- 銀行利息は、あらかじめ税金が差し引かれて振り込まれる(源泉分離課税)
>> 利子所得の詳細
配当所得
株主や出資者が、法人から受け取る利益の配当金、余剰分の分配金などを配当所得と呼びます。最も身近な例は、株式の配当金、投資信託の分配金です。
これらの配当金や分配金は、利子所得と同様に、配当金を受け取る際に源泉徴収されています。なので、この内容を確定申告に含める必要はありません。 ただし、納税者の希望により、総合課税か申告分離課税を選択することができます。
配当所得のポイント
>> 配当所得の詳細
不動産所得
不動産所得とは、土地や建物、航空機や船舶、借地権などの貸し付けによる所得のことです。例えば、マンションの部屋を貸して家賃収入を得ている場合は、これが不動産所得になります。
事業的な規模で不動産収入を得ている場合は、所得の計算方法が異なります。 目安としては、たとえば人に貸し出しできるアパートやマンションの部屋をおおよそ10部屋以上もっている場合などが、事業的規模にあたるとされています。
不動産所得のポイント
- 土地や建物、航空機や船舶、不動産に付く権利などの貸し付けによる所得
- 代表的な例は、賃貸物件を人に貸して家賃収入を得る場合の所得
- 不動産所得は総合課税の対象なので、他の所得と合算して確定申告する
>> 不動産所得の詳細
事業所得
事業所得とは、事業から生まれる売上から必要経費などを差し引いた利益のことです。自分で事業を営んでいる多くの人にとっての、生業の利益です。ほとんどの個人事業主にとって、最も重要なのがこの事業所得です。
デザイナー・税理士・飲食店・小売店・広告代理店・歯科・漁師・農家など、じつに様々な仕事があります。こういった仕事の売上から生じる所得が、事業所得に該当します。「株や不動産はやってなくて、本業の収入だけで生活してるよ」という事業主は、この事業所得を重点的に理解しておきましょう。
事業所得のポイント
- 多くの個人事業主にとって最も重要な所得
- 所得が事業所得のみという個人事業主も多い
- 事業所得は総合課税の対象なので、他の所得があれば合算して確定申告する
>> 事業所得の詳細
給与所得
勤務先から受け取る給与や賞与などが、給与所得になります。具体的には、会社員やパート・アルバイトスタッフなどが勤め先からもらう月給やボーナスです。
会社勤めをしている人にとって最も重要なのが、この給与所得です。給与所得を得ている人のことを、給与所得者と呼びます。 「収入は会社からの給料だけで、他からの収入はないよ」という人は、ひとまずこの給与所得だけ理解しておけばOKです。
ちなみに、個人事業においては「個人事業主への給料」という考え方はしません。なので、どこかに勤めていながら個人事業を行っているということでなければ、個人事業主には関係のない所得と言えます。>> 事業主・従業員・専従者の給与について
給与所得のポイント
- 勤務先から受け取る給料や手当、ボーナスが給与所得
- 所得が会社からの給与所得だけという給与所得者も多い
- 給与所得は総合課税の対象なので、他の所得があれば合算して確定申告する
>> 給与所得の詳細
退職所得
一般的に、会社員が会社を辞める際に受け取る退職金が、退職所得に当たります。退職金は会社から受け取るお金ですが、先に挙げた「給与所得」とは別の扱いになるということです。退職金は、支払われる段階で所得税と住民税が源泉徴収されるので、自分で申告する必要はありません。
退職所得のポイント
- 会社を辞めるときに受け取る退職金が退職所得になる
- 退職金も会社から受け取るお金だが、給与所得とは別に扱う
- 退職金は受け取る時にすでに税金が差し引かれている
>> 退職所得の詳細
山林所得
山林所得とは、山林を伐採して譲渡したり、山林を立木のまま譲渡することにより生じる所得のことです。 一般的に山林を所有する機会はそうないので、多くの人にとって関係のない所得と言えます。
山林を取得してから5年以内に譲渡したものは、山林所得ではなく事業所得か雑所得になります。また、山林を山ごと譲渡する場合、その土地の部分については、山林所得ではなく譲渡所得の扱いになります。
山林所得のポイント
- 山林を伐採 or 木が生い茂ったまま譲渡することによる生じる所得
- 山林所得は分離課税の対象なので、他の所得とは切り離して計算する
>> 山林所得の詳細
譲渡所得
譲渡所得は、土地や建物などを譲渡することにより生じる所得のことです。おおまかに言うと「けっこうな金額になるものを譲渡することにより生じる所得」です。土地や建物以外にも、下記のような項目については、譲渡所得として申告する必要があります。
- 借地権
- 株式、公社債など
- 宝石などの貴金属類
- 書画や骨董などの古美術品
- 船舶や機械器具
- 漁業権、ゴルフ会員権、特許権、著作権などの権利関係
譲渡所得の課税方法は、譲渡の内容によって総合課税と分離課税に分かれています。ほとんどのものは総合課税の対象ですが、土地や建物、株式などの譲渡については分離課税の対象です。
譲渡所得のポイント
- 土地や建物など、けっこうな金額になる資産を譲渡することによる生じる所得
- 土地、建物、株式、貴金属類、古美術品、船舶、機械器具、各種の権利などが対象
- 譲渡の内容によって、総合課税と分離課税の対象に分かれる
>> 譲渡所得の詳細
一時所得
一時所得とは、以下の性質をもたない一時的な所得のことをいいます。
一時所得は、下記の性質をもたない
- 継続的な営利行為から生じる
- 業務や資産譲渡の対価である
例えば、クイズ番組で得た賞金、生命保険の満期一時金、賃貸住宅での立退料などが一時所得にあたります。 先に挙げた8つの所得に当てはまらない所得とも言えますが、 後述の「雑所得」とも区別されるので、あわせてご参照ください。
一時所得のポイント
>> 一時所得の詳細
雑所得
上記9つのいずれにもあてはまらない所得が、雑所得です。雑所得は「公的年金等」と「公的年金以外のもの」の2つに大別されます。 国民年金や厚生年金、企業年金などの支給による所得が「公的年金等」にあたります。一方、たとえば著述家や作家以外の人が受ける原稿料や印税・講演料が「公的年金以外のもの」にあたります。
雑所得のポイント
- 他9つの所得にあてはまらないのが雑所得
- 国民年金や厚生年金などの支給による所得が公的年金等の雑所得にあたる
- 公的年金以外の代表例は、それを本業としていない人が得る原稿料や印税、放送謝礼など
- 原則的には総合課税の対象だが、分離課税の対象になる雑所得もある
>> 雑所得の詳細
>> 総合課税の対象になる所得まとめ
>> 分離課税とは?総合課税との違い
>> 個人事業主にとって最も重要な「事業所得」
>> 会社員にとって最も重要な「給与所得」