申告分離課税とは?源泉分離課税との違い・対象の所得など
更新日 2024年7月08日
- 申告分離課税と源泉分離課税の違い
- 申告分離課税の対象になる所得
- 山林所得とは
- 土地・建物などの譲渡による所得
- 特定公社債の利子所得とは
- 株式などの譲渡による所得とは
- 上場株式などから受け取る配当所得とは
- まとめ
申告分離課税と源泉分離課税の違い
まずは課税方法のおさらいをしておきましょう。所得税の課税方法は、大きく分けて「総合課税」と「分離課税」があります。 総合課税とは、対象となる所得を合算し、まとめて所得税の金額を算出する課税方法です。 分離課税は、他の所得と合算して税金を計算しません。切り離して考えます。
課税方法の分類
- 総合課税
- 分離課税(申告分離課税・源泉分離課税)
分離課税は、さらに2つに分けられます。「申告分離課税」と「源泉分離課税」です。
申告分離課税 | 源泉分離課税 |
---|---|
他の所得金額と合計せず、分離して独自に税額を計算する | |
原則として確定申告によってその税額を納める | 所得を支払う者が、その所得の支払いの際に一定の税率で所得税を源泉徴収して納める |
どちらも、総合課税の対象となる所得と切り離して税金を考えます。この点では同じです。
申告分離課税は、原則として本人が確定申告によってその税額を納めることになります。 一方、源泉分離課税は、所得の支払者が、その所得の支払いの際に一定の税率で所得税を源泉徴収して、納税します。 ですので、本人が所得を受け取る際には、すでに納税が完結しており、確定申告できません。 この点で、申告分離課税と源泉分離課税は異なります。
申告分離課税の対象になる所得
以下の所得は、申告分離課税の対象です。
申告分離課税の対象になる所得の例
- 山林所得
- 土地・建物などの譲渡による譲渡所得
- 株式などの譲渡による所得
- 上場株式などから受け取る配当所得
- 特定公社債(国債、地方債、公募公社債など)の利子所得
- 事業規模で行う、株式などを譲渡したことによる所得や先物取引にかかわる所得
特定公社債は、平成28年1月1日以後に支払いを受けるもの
山林所得
山林所得は、山林を伐採して譲渡したり、立木のまま譲渡することにより生じる所得です。 山林などは、育成に時間がかかるため、税額が低くなるよう配慮されています。
山林所得で申告分離課税に当てはまらないもの
山林所得は原則的に申告分離課税の対象ですが、下記のものについては事業所得か雑所得として扱われます。 これらは、いずれも総合課税の対象となります。
- 山林を保有して5年以内であるが、事業規模(50ヘクタール以上)で行っている場合 → 事業所得
- 山林を保有して5年以内であり、事業規模でない場合 → 雑所得
>> 山林所得の計算方法など
土地・建物などの譲渡による所得
譲渡所得には、総合課税のものと分離課税のものがあります。 土地や建物の譲渡所得、株式や特定の公社債の譲渡所得は、いずれも申告分離課税の対象になっています。
土地や建物など、不動産の譲渡による所得は、譲渡した不動産の保有年数によって税率が異なります。 保有期間が5年以内のものを「短期譲渡所得」、5年超のものを「長期譲渡所得」といいます。
一般的な土地・建物の譲渡の場合の税率は、下記の通りです。
- 短期譲渡所得 → 所得税30%、住民税9%
- 長期譲渡所得 → 所得税15%、住民税5%
それぞれ2.1%の復興特別所得税が加算される
株式などの譲渡による所得
株式などの譲渡による所得は、譲渡所得・事業所得・雑所得の3つに分けられます。 いずれの場合でも、株式などの譲渡による所得は、申告分離課税の対象です。 ここでいう「株式など」には、下記のものが含まれています。 株式、外国株式、株式投信、公社債、ETF、REITなど。
株式などの譲渡による所得の税率は下記の通りです。
- 上場株式などに関わる譲渡所得など → 20% (所得税15%、住民税5%)
- 一般株式に関わる譲渡所得など → 20% (所得税15%、住民税5%)
それぞれ2.1%の復興特別所得税が加算される
上場株式などから受け取る配当所得
上場株式などから受ける配当は、総合課税か申告分離課税かを選択することができます。
申告分離課税を選択できる条件
- 上場株式などの配当を受けている人で、大株主ではない場合
- 上場株式などの配当や、非上場株式の配当の場合には、配当金が10万円以下の場合
申告分離課税を選択するメリット・デメリット
申告分離課税を選ぶメリットは、株や投資信託などを売却して損失が出た場合に、損益通算ができることです。 ただし、申告分離課税を選択した場合には、配当控除を受けることができないというデメリットがあります。
申告分離課税にした場合の税率は、20%(所得税15%、住民税5%)です。 申告分離課税の場合は、2.1%の復興特別所得税が加算されます。
特定公社債の利子所得
特定公社債の範囲
特定公社債の範囲は次のように定められています。 国債、地方債、外国国債、外国地方債のほか、公募上場されている公社債、証券会社や銀行が発行する社債などが含まれます。
特定公社債の利子所得の改正
平成28年1月以降、「公社債税制」は大幅な改正が行われました。 「特定公社債」の利子については、改正前は源泉分離課税であり、申告が不要でした。 しかし、改正後は申告分離課税になり、上場株式などの売却の損失との損益通算ができるようになりました。 改正後の税率については、以下の通りです。
申告分離課税の場合 ⇒ 税率20%(所得税15%、住民税5%)で確定申告。 ※申告分離課税の場合は、2.1%の復興特別所得税が加算されます。
まとめ
総合課税は、得る所得の金額によって税率が変動する課税方式です。 所得が高い人ほど税金を多く支払うことになります。 これに対して申告分離課税は、その対象となる所得に対して、一定の税率がかかる仕組みになっています。 他の所得とは合計せずに、分離して税金を計算する制度です。
基本的には、納税者自身が「総合課税」か「申告分離課税」かを選ぶことはできません。 ただし、「上場株式などから受け取る配当所得」などは、申告不要制度や総合課税、申告分離課税などの選択肢から選ぶことができます。
総合課税を選択した場合は、配当控除を受けることができますが、申告分離課税を選んだ場合は、株などの売却損失との通算ができます。申告分離課税を選択した場合は、その後、その所得を総合課税に変更することはできません。総合課税を選択した場合も同様になります。
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