収入と所得の違いは? - 所得は全部で10種類

更新日 2024年7月17日

収入と所得の違いについて

本記事では、基本的に収入や所得を1年単位のものという前提で話を進めます。ですので、とくに「年間収入」や「年間所得」と記載せず、単に「収入」や「所得」と記載しています。

所得とは? - 個人事業主の場合

1年間で入ってくるお金が「収入」です。たいていの場合、個人事業主なら「収入 ≒ 売上」と思って差し支えありません。 厳密に言うと、「収入」は対価性のない無償の経済的利益まで含む広い概念です。そのなかに含まれる「売上」は、商品の販売やサービスなどの対価に応じて受け取る代金を指します。 >> 収入と売上の関係を詳しく

個人事業主の所得は、収入(事業収入)から必要経費を差し引いたものです。事業を通じて得るものなので、これを「事業所得」と呼びます。

個人事業主の所得

収入 − 必要経費 = 事業所得

事業所得の課税のしくみ - 国税庁

ここでいう事業所得を、もっと一般的な言葉で置き換えるなら「年収」です。個人事業が専業であれば、事業の収入から必要経費を差し引いた後の事業所得が、個人事業主の年収になるわけです。この年収をもとにして、その人の所得税を計算します。

さらに詳しく書くと、下記の計算式で所得税をもとめます。

所得税の計算式(個人事業主の場合)
収入 − 必要経費 − 各種控除 = 課税所得金額
課税所得金額 × 税率 − 控除額 = 所得税額
>> 個人事業主の所得税計算について

>> 「事業収入」について詳しくはこちら - 持続化給付金の計算

所得とは? - 会社員の場合

会社員にとっての収入とは、1年間で得た給料のことです。もちろんボーナスも含めます。源泉徴収票で示されている「支払金額」が、収入に当たります。会社員の場合、この「支払金額」のことを「年収」と呼ぶのが一般的です。

勤務先から配布される会社員の源泉徴収票

会社員の所得とは、1年間で得た収入(給与収入)から「給与所得控除」を差し引いた後のものです。 これを「給与所得」と呼びます。大抵の場合、この給与所得をもとに所得税を計算します。

会社員の所得

収入 − 給与所得控除 = 給与所得

給与所得 - 国税庁

「給与所得控除」とは、所得税や住民税を計算する際に、収入から差し引くことができる金額のことです。 会社員の場合は、個人事業主のように収入から必要経費が差し引けません。 必要経費の代わりとして、この給与所得控除を差し引くことができる仕組みになっています。

給与所得控除額は、その人の給与収入(年収)に応じて異なります。 なお下表は、給与収入が660万円未満の部分については概算で、細かな金額は実際の結果と異なります。

給与収入と給与所得控除 - 令和2年分以降

給与収入額給与所得控除額
850万円 〜195万円
660万円 〜 850万円収入金額 × 10% + 110万円
360万円 〜 660万円収入金額 × 20% + 44万円
180万円 〜 360万円収入金額 × 30% + 8万円
〜 180万円収入金額 × 40% − 10万円
(計算結果が55万円未満の場合は55万円)

「〜」は「超 〜 以下」 給与所得控除 - 国税庁

給与所得控除の最低額は、令和元年分まで65万円でしたが、令和2年分から55万円に変更されました。 上表のとおり、最低でも55万円は給与所得控除があります。 どんなに年収が低くても、55万円は差し引かれるということです。 たとえば給与収入が100万円の場合、下記の計算で給与所得をもとめます。  100万円 − 55万円 = 45万円(給与所得)

会社員の所得税 - 計算例

会社員の所得税について、計算例を見ていきましょう。例えば、給与収入が500万円の場合です。 まずは上の表を参考にして、給与所得控除額を算出します。

500万円 × 0.2 + 44万円 = 144万円(給与所得控除額)

この場合、給与所得控除額が概算で144万円だということが分かりました。そして先述の通り、給与所得の計算方法は「収入 − 給与所得控除 = 給与所得」なので、 以下の計算から、この人の給与所得金額は356万円ということになります。

500万円 − 144万円 = 356万円(給与所得金額)

この給与所得から「所得控除」を差し引いて、課税対象となる「課税所得」を算出します。 この人の所得控除の合計が100万円だった場合、以下の計算から課税所得金額を算出します。

356万円 − 100万円 = 256万円(課税所得金額)

課税所得金額とは、課税の対象になる所得の金額です。 この課税所得に応じた税率をかけて、そこから「控除額」を差し引いた金額が、 納付する所得税額となります。

所得税の速算表

課税所得金額税率控除額
195万円未満5%0円
195万円以上 330万円未満10%97,500円
330万円以上 695万円未満20%427,500円
695万円以上 900万円未満23%636,000円
900万円以上 1,800万円未満33%1,536,000円
1,800万円以上 4,000万円未満40%2,796,000円
4,000万円以上45%4,796,000円

平成27年分〜令和6年分の所得税率

本例の場合、課税所得金額は256万円でした。 上表を参照すると、課税所得金額が195万円~330万円に当たるので、以下の計算で所得税額を計算します。

2,560,000 × 0.1 − 97,500 = 158,500円

今回の計算で、所得税の金額は「158,500円」ということになります。 なお、令和19年までは復興特別所得税(2.1%)も合わせて納めることになっています。

>> 個人事業主の所得税計算についてはこちら

所得の種類は10種類

所得税法では、所得が大きく10種類に分けられています。それぞれの所得に応じて、計算方法が異なります。 さきほど会社員の所得税計算を解説しましたが、あれは給与所得についての計算です。会社員にとってメインになる所得は、大抵「給与所得」です。

所得の種類概要
利子所得預貯金や公社債の利子、合同運用信託などの収益の分配にかかわる所得
配当所得株主や出資者が、法人から受けとる配当金など
不動産所得土地や建物などの貸し付けによる所得
事業所得一般的な事業から生じる所得 → 個人事業主の重要な所得
給与所得勤務先から受ける給料や賞与など → 会社員の重要な所得
退職所得退職によって勤務先から受ける退職金など
山林所得山林を伐採したものなどを譲渡した場合に生じる所得
譲渡所得土地や建物など、資産の譲渡による所得
一時所得上記8つに当てはまらない、一時的な所得
雑所得上記9つに当てはまらない所得

個人事業では、だいたいにおいて本業の所得は「事業所得」です。 なので、株や不動産に手をつけていないのであれば、ひとまず事業所得をおさえておけばOKです。

>> 持続化給付金を分かりやすく!「事業収入」の考え方や計算例など
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