個人事業主の国民健康保険料
更新日 2024年6月04日
国民健康保険の基本
個人事業主になったら国民健康保険に加入しましょう。 この保険料はお住まいの自治体によって異なり、また納税者の前年所得などに応じて決定されます。
- 国民健康保険とは?
- 国民健康保険とは、病気やケガをしたときに安心して治療をしてもらえるよう、加入者が所得に応じて保険料を出しあい、医療費に充てる相互扶助の制度。日本では、すべての国民が何らかの公的な医療保険に加入する、国民皆保険制度を採用している。
国民健康保険は、国ではなく地方自治体が運営している。 平成30年4月1日から国民健康保険制度が広域化され、財政運営の主体が、市町村から都道府県へ変更となった。
国民健康保険の概要
年度 | 4月1日〜翌年3月31日 |
---|---|
納付書の送付時期 | 大体6月〜7月(自治体によって異なる) |
保険料 | 納税者の前年所得や自治体によって異なる |
年間納付額のお知らせ 送付時期 | 翌年1月〜2月上旬 |
運営 | 地方自治体 |
なお、都道府県が運営する国民健康保険に入らず、国民健康保険組合(健保組合)の保険に入ることもできます。 健保組合の保険に入っておけば、国民健康保険に入る必要はありません。健保組合の保険は定額のところも多く、所得が多い人にとっては節税になる場合があります。
国民健康保険の加入に必要なもの
お住まいの地域の役所にいけば国民健康保険に加入できます。 ここでは、加入手続きをするときに役所へ持参するものをまとめています。
引っ越しをした場合
国民健康保険は地方自治体が運営しています。遠くに引っ越しをすると運営者が変わるので、以前の住所を管轄する役所でまず脱退の手続きをしてから、新しい住所の役所で加入手続きを行います。
- 転出証明書(以前の住所を管轄する役所でもらっておく)
- マイナンバーを確認できるもの(番号確認書類)
- 本人確認できるもの(身元確認書類)
個人事業主になった場合
たとえば会社を辞めて個人事業主になった場合、健康保険の資格喪失証明書を持参します。 扶養家族がいない人は、退職証明書でも代用できます。
- 健康保険の資格喪失証明書
- マイナンバーを確認できるもの(番号確認書類)
- 本人確認できるもの(身元確認書類)
マイナンバーを確認できるものには「通知カード」や「マイナンバーカード」があります。マイナンバーカードであれば、これ1枚で番号確認と身元確認が済みます。
>> 自分のマイナンバーが分からない場合
保険料のおおまかなイメージと年間上限金額
上述の通り、国民健康保険を運営しているのは各地方自治体です。 保険料の計算方法は、住んでいる地域によって大きく異なります。 そのため、年収にもよりますが、国民健康保険料が低い自治体と高い自治体では2倍以上の金額差が生じます。 計算方法も複雑ですので、ここでは所得に対する保険料のおおまかなイメージをおさえておきましょう。
39歳までの国保被保険者は、「医療分」と「後期高齢者支援分」を国民健康保険料として納付します。 40歳から64歳までの国保被験者は「医療分」「後期高齢者支援分」に加えて「介護分」も納付します。 つまり、年齢が40歳以上になると保険料の負担が大きくなります。
年齢層 | 国民健康保険料の内訳 |
---|---|
39歳まで | 医療分 + 支援金分 |
40歳から64歳 | 医療分 + 支援金分 + 介護分 |
過去に札幌市が分かりやすい保険料の早見表を出していたので、その抜粋を以下に掲載します。 (札幌市は、全国平均よりも保険料がやや高い地域です。)
所得とは、収入から必要経費などを差し引いた金額です。 個人事業主の場合、前年の所得に応じて保険料を算出することになります。 (収入 − 必要経費 = 所得)
北海道札幌市 令和6年度 一人世帯の場合
前年の所得 | 39歳までの方の年間保険料 | 40歳〜64歳の方の年間保険料 |
---|---|---|
118万円 | 約16万円 | 約20万円 |
237万円 | 約31万円 | 約38万円 |
316万円 | 約41万円 | 約50万円 |
436万円 | 約56万円 | 約69万円 |
520万円 | 約67万円 | 約81万円 |
610万円 | 約78万円 | 約95万円 |
705万円 | 約87万円 | 約104万円 |
この例でいうと、35歳の個人事業主の年間所得が520万円の場合は、 年間の国民健康保険料として約67万円納付することになるということです。 同じ所得金額の方が仮に50歳であれば、保険料は約81万円です。なかなか大きな負担ですね。
納付した保険料は社会保険料控除として控除できる
納めた国民健康保険料は「社会保険料控除」として、全額が所得から控除できます。下記の「各種控除」の部分に、この社会保険料控除が当てはまります。この控除額が多いほど、納める税金も少なくなります。 >> 個人事業主の所得控除一覧
- 所得税の計算式
- 収入 − 必要経費 − 各種控除 = 課税所得金額
課税所得金額 × 税率 − 控除額 = 所得税額
>> 個人事業主の所得税計算について
確定申告時期の少し前の1月〜2月上旬に、お住まいの市町村から「年間納付額のお知らせ」が送られてきます(自治体によって通知書の呼び方は様々です。)このお知らせが郵送されます。国民健康保険の場合は、国民年金のように「控除証明書」と呼ばれるものは発行されません。
個人事業主が確定申告で提出する「確定申告書」に社会保険料控除の記入欄があるので、そこに納付した金額などを記入します。自治体から送付されるお知らせをもとに、金額を書き込みましょう。 国民健康保険に関する「年間納付額のお知らせ」は、確定申告の際に添付する必要はありません。
国民健康保険料の仕訳について
国民健康保険料は事業の支出ではなく、事業主本人のプライベートな支出とみなします。ですので、納めた国民健康保険料について記帳する必要はありません。 たとえば事業用の銀行口座などから国民健康保険料を振替納付して、なんらかの形で帳簿づけが必要な場合には「事業主貸」の勘定科目で処理しておけばOKです。
複式簿記での仕訳例
日付 | 借方 | 貸方 | 摘要 |
---|---|---|---|
20XX年4月30日 | 事業主貸 30,000 | 普通預金 30,000 | 国民健康保険料 |
このように、国民健康保険料や国民年金、所得税、住民税などは、事業主個人の私的な支出と考えます。 私的な支出を帳簿づけする必要はありません。やむをえず記帳しておく必要がある場合は、 上述のように「事業主貸」の勘定科目を利用します。 これは事業用の銀行口座から事業主のポケットマネーを引き出した場合などに使う勘定科目です。
逆に、個人事業税や、事業で使う資産の固定資産税などは、 個人事業の経費として計上できます。この場合は租税公課という勘定科目で経費として仕訳します。
>> 個人事業主が納付する税金の仕訳一覧
>> 社会保険料控除について - 国民健康保険と国民年金
>> 個人事業主の保険・年金・共済まとめ