セーフティ共済とは?前納分の経費処理や節税効果など

更新日 2024年7月13日

経営セーフティ共済について

経営セーフティ共済とは?

経営セーフティ共済とは、連鎖倒産から中小企業や個人事業主を守るための共済です。 正式名称は「中小企業倒産防止共済」。「セーフティ共済」や「経営セーフティ共済」とも呼ばれます。

経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)の要点

  • 経営セーフティ共済は、個人事業主や中小企業が取引先の倒産に備えるための共済
  • 個人事業主や中小企業が加入できる
  • 掛金は月額5,000円〜20万円(年間にすると6万円〜240万円)
  • 掛金は5,000円単位で、任意で決めることができる
  • 掛金の累計上限は800万円(月最高の20万円の場合は40ヶ月分で上限に)
  • 掛金は全額を「必要経費」として扱えるので節税策として有効(「控除」ではない)
  • 解約時にもどってくるお金は、収入として扱う(課税の繰り延べ)
  • 取引先が倒産してしまった場合、掛金総額の10倍の範囲内で融資を受けることができる
  • 掛金の累計上限は800万円なので、8,000万円が融資の上限額

本来の目的は、取引先が倒産してしまった場合にスピーディに融資を受けることにより、事業の共倒れを防ぐというものです。 しかし、ネット上で節税手段のひとつとして周知されるようになってから、リスクヘッジや課税の繰り延べを目的として広く利用されるようになりました。

加入要件は業種によって多少異なりますが、いずれの業種でも資本金・出資総額が5,000万円以下、従業員50名以下であれば、基本的に加入できます。簡単にいうと、規模が小さい中小企業と個人事業主が対象の共済です。 個人事業主が法人成りする場合は、会社に契約を引き継ぐことができます。

掛金月額と経費計上について

経営セーフティ共済の掛金は、月額5,000円〜200,000円の間で、5,000円単位で自由に決められます。 月額の最高掛金が20万円なので、年間合計240万円です。掛金は総額が800万円になるまで積立てができます。

1年前納分も当期の経費に計上できる

1年分を前納すると、その分も当期の経費として計上できます。 これにより、初年度は最高で460万円を当期の経費とすることも可能です。 ただし、個人事業の場合、事業所得以外の収入(不動産所得等)は、 掛金の必要経費としての算入が認められないので注意しましょう。

勘定科目は、会計ソフトにもともと用意されている「保険料」「損害保険料」「支払保険料」などの科目を使って仕訳します。 他の経費に比べて掛けた金額が大きくなる場合(決算書で目立つ場合)には「セーフティ共済」という勘定科目を新たに作ってもOKです。
>> 経営セーフティ共済の仕訳方法について

前納減額金の計算方法について

前納をすると、少しだけ割引になります。「掛金月額に0.09%と前納月数の累計をかけた金額」が前納減額金として戻ってきます。 以前は0.5%でしたが、この減額率は見直しされ、2017年(平成29年)11月以降の前納分からは0.09%になりました。

前納減額金の計算式
掛金の月額 × 0.0009 × 前納月数の累計 = 前納減額金
(1% = 0.01なので、0.09% = 0.0009)

例えば、掛金月額が20万円の人が2017年12月に「12月の分の納付と、翌年11ヶ月分の前納」をした場合は以下のように計算します。

200,000 × 0.0009 × 66ヶ月 = 11,880円
この場合の前納減額金は11,880円ということになります。

「ん、なんで11ヶ月じゃなくて66ヶ月になっているんだ」と思うかもしれませんが、 この計算ルールが「前納月数の累計」なので、以下の通り算出するわけです。
1ヶ月 + 2ヶ月 + 3ヶ月 + ... 10ヶ月 + 11ヶ月 = 66ヶ月

例えば、6ヶ月分を前納した場合には「前納月数の累計」は21ということになります。
(1 + 2 + 3 + 4 + 5 + 6 = 21)

掛金の変更 - 増額と減額について

掛金の変更は可能です。増額・減額ともに手続きが必要となりますが、どちらも対応してもらえます。 増額に条件はありませんが、減額する場合には、以下のいずれかに該当する必要があります。

  • 事業規模が縮小したとき
  • 経営の著しい悪化、病気、ケガ、急な出費などにより、掛金納付が著しく困難なとき
  • 共済金の貸付残高と掛金総額の10倍に相当する額との合計額が、8,000万円に達しているとき

解約のタイミングと解約手当金について

掛金の納付月数が40ヶ月以上になれば、解約をすることで、今までに納めた金額が全て戻ってきます。 その際は、法人であれば益金、個人事業主であれば所得に加算されます。

このように、積み立てる時は経費にできますが、戻す時は利益になるので、解約をするタイミングに注意が必要です。 また、掛金の納付月数が12ヶ月未満の場合は、解約手当金がもらえないので早期の解約にも注意しましょう。

共済契約者が任意で解約する場合の掛金納付月数と解約手当金について

掛金納付月数解約手当金
1ヶ月~11ヶ月0%
12ヶ月~23ヶ月80%
24ヶ月~29ヶ月85%
30ヶ月~35ヶ月90%
36ヶ月~39ヶ月95%
40ヶ月以上100%

上記は、契約者が任意のタイミングで解約する場合の解約手当金の割合です。 解約の種類はあと2種類あり、個人事業主が亡くなったり法人を解散した場合は「みなし解約」、 12ヶ月分以上掛金の払込みが滞った場合に、中小機構に強制的に解約される場合を「機構解約」といい、 解約の種類によって解約手当金の割合が若干異なります。

融資の機能について

万が一、取引先が倒産してしまった場合には、掛金総額の10倍の範囲内で融資を受けることができます。 掛金総額の上限が800万円なので、最高で8,000万円の融資を受けることができるわけです。 これがこの共済の本来の機能ですね。この貸し付けは、無担保・無保証人でOKです。

下記のうちで、いずれか少ない方の金額を融資してもらうことができます。

  • 取引先から回収困難となった売掛金・債権等の金額
  • 掛金総額の10倍に相当する額(最高で8,000万円)

取引先が倒産していなくても、臨時に事業資金が必要となった場合は一時貸付金として融資を受けることができます。 この場合は、解約手当金の95%を上限として貸付けが受けられます。 この場合の返済期間は1年、貸付利率は令和元年5月時点で0.9%(金融情勢に応じて変動)

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