個人事業主の「国民年金基金」を分かりやすく解説!

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更新日 2024年4月09日

個人事業主の国民年金基金について

国民年金基金とは?

国民年金基金とは、個人事業主などが国民年金(基礎年金)に上乗せして納めることができる年金です。 これを納めることにより、将来受け取れる年金額を増やすことができます。

会社員などは、国民年金に上乗せして「厚生年金」を納めています。 これに対して「自営業者にも将来の備えを増やす方法を」ということで平成3年4月に創設されたのが「国民年金基金制度」です。

日本の年金制度

>> 個人事業主にとっての国民年金

みんなが平等に納める「国民年金」に上乗せできる、「第1号被保険者」のための公的な年金制度が、国民年金基金制度というわけです。(第1号被保険者 = 自営業者、農業者、学生、無職の方)

なお、これと同じように国民年金に上乗せできる「付加年金」との併用はできません。国民年金基金と付加年金、どちらにも加入することはできないということです。

全国型と職能型の違い

国民年金基金には「全国型国民年金基金」と「職能型国民年金基金」があります。国民年金基金に加入する場合、ほとんどの人は「全国型」に加入することになります。「職能型」はそのほとんどが全国型に統合され、現在は歯科医師・司法書士・弁護士の3職種のみです。

掛金の限度額は月68,000円

国民年金基金の掛金は、合計で月額68,000円が限度額です。 この中で「給付の型」と「加入口数」を選択することになります。もし「個人型確定拠出年金(iDeCo)」にも加入している場合は、その掛金と合計して68,000円以内となります。

毎月の掛金と将来の給付額は、加入する年齢と性別、選択するプランによって大きく変わります。 たとえば男女の平均寿命は違うので、性差もあります。2018年の平均寿命統計で、日本人男性は81.25歳、日本人女性は87.32歳。女性は長生きするので、毎月の保険料が割高になります。

年度と改定

国民年金基金の年度は4月〜3月です。掛金の改定は毎年ではないものの数年に一度は行われ、過去の状況からみると、おおよそ5年に1回ほどのペースで改定が行われているようです。なお、4月から翌年3月までの1年分の掛金を前納すると、0.1か月分の掛金が割引されます。

最も低い掛金でシミュレーション

最も月額の掛金が低くなる例は「男性が20歳ちょうどで、終身年金B型を1口だけ加入した場合」で、納付額は月額6,770円となります(令和6年度の加入としてシミュレーション)。20歳で加入すれば、これを40年間払うことになります。

40年間で合計約300万円を納付することになる

6,770 × 12ヶ月 × 40年 = 3,249,600円(40年間の掛金合計額)

掛金の払い込みは60歳までですが、終身年金の受け取りは65歳からです。 本例の場合、65歳以降、亡くなるまで毎年約24万円を受け取ることができます。

この場合は約13年(78歳の時)で、もとをとれる形になり、 それ以降も存命であれば「入っていて良かったナア」ということになります。 (3,249,600円 ÷ 240,000円 = 12.74年)

また、後述のようにB型以外の給付型であれば、遺族一時金の保証があります。 この保証があれば、たとえ受給の途中に亡くなったとしても、遺族へ一時金が支給されることになっています。

給付の型と選択方法をざっくりと理解する

「給付の型」と「加入口数」は自分で選択できます。 給付の型は合計で7種類あり、「終身型」のA, Bと、「確定型」のI, II, III, IV, Vに分かれています。

種類概要
終身型A, B加入者が亡くなるまで給付金をもらえる
確定型I, II, III, IV, Vあらかじめ給付金をもらえる期間が確定している

1口目だけは、A型かB型の2種類から選択

1口目だけは、終身型の「A型」か「B型」のどちらかしか選択できません。 男性が30歳ちょうどで加入し、60歳になるまでの30年間きっちり掛金を納めた場合、下表のようになります。

男性が30歳ちょうどで加入した場合 - 1口目

掛金月額将来増える年金年金がもらえる期間遺族一時金の保証期間
終身
A型
10,900円(月)約24万円(年)亡くなるまで65歳から15年間
終身
B型
9,910円(月)約24万円(年)亡くなるまで遺族一時金なし

令和6年度に加入した場合 (先述のとおり、数年おきに改定される)

2口目以降は、7種類の型から選択

「1口だけじゃ物足りないよ」という方は、月額68,000円の範囲内で2口以上加入できます。 2口目以降は、7種類の型から自由に選ぶことができます。同じ型に複数加入することもできます。 ただし、確定年金の金額が、終身年金の金額をこえる選択はできません。 「終身年金(A,B)の合計 > 確定年金(I,II,III,IV,V)の合計」の形ならOKということです。

男性が30歳ちょうどで加入した場合 - 2口目以降

掛金月額将来増える年金年金がもらえる期間遺族一時金の保証期間
終身
A型
5,450円(月)約12万円(年)65歳から死亡まで65歳から15年間
終身
B型
4,955円(月)約12万円(年)65歳から死亡まで遺族一時金なし
確定
I型
3,790円(月)約12万円(年)65歳から15年間65歳から15年間
確定
II型
2,620円(月)約12万円(年)65歳から10年間65歳から10年間
確定
III型
4,085円(月)約12万円(年)60歳から15年間60歳から15年間
確定
IV型
2,820円(月)約12万円(年)60歳から10年間60歳から10年間
確定
V型
1,465円(月)約12万円(年)60歳から5年間60歳から5年間

令和6年度に加入した場合

国民年金基金ウェブサイトの「年金額シミュレーション」で、個別の状況に応じた年金額をシミュレーションできます。

なお、1口目をとりやめて掛金をゼロとすることや、1口目の型を変更(A型⇒B型など)することはできません。 しかし、2口目以降の加入口数は、途中で増やしたり減らしたりすることができます。

「遺族一時金」の金額をざっくり理解する

終身B型以外の6つには「遺族一時金」の保証があります。加入者が年金を受け取る前、あるいは保証期間中に亡くなった場合は、遺族一時金として一定の金額が遺族へ支給されるというものです。 なお、終身B型のみでも、年金の受給前に亡くなった場合は1万円の一時金が遺族に支給されます。

加入者が亡くなった場合に支給される遺族一時金は、 国民年金基金ウェブサイトの概算表で確認できるだけで、算出方法などは発表されていません。 おおまかなイメージとしては「生きていたら受け取れるはずだった年金よりも、ちょっと少ない金額」が遺族へ支給されます。

たとえば、30歳から終身A型に1口加入していた男性が、70歳で亡くなった場合で見てみましょう。

1口目のA型は、遺族一時金の保証期間は65歳から80歳までの15年間でした。 なので、70歳で亡くなった場合は「残りの10年間で受け取れるはずだった年金よりも、ちょっと少ない金額」が、遺族一時金として遺族へ支給されます。この場合は223万円です。(「24万円 × 10年分 = 240万円」よりも、ちょっと少ない金額)

社会保険料控除として全額が所得から控除できる

国民年金基金で納めた納付額は、社会保険料控除として全額が所得控除の対象となります。これが国民年金基金に加入する大きなメリットです。

加入者には、毎年11月に「社会保険料控除証明書」が郵送されます。 個人事業主は、この証明書に記載の通り確定申告書に記入をし、 添付書類台紙に証明書を貼り付けて確定申告で提出します。

国民年金基金の仕訳について

国民年金基金の掛金は、個人事業主のプライベートな支出と考え、特に帳簿づけの必要はありません。 もちろん、国民年金基金の納付額を経費にすることはできません。

事業用の口座から振替をしている場合などで、帳簿づけの必要がある場合には、 「事業主貸」の勘定科目を利用して仕訳します。 国民年金や国民健康保険と同じ考え方です。

国民年金基金 - 複式簿記での仕訳例

日付借方貸方摘要
20XX年2月1日事業主貸 18,560普通預金 18,560国民年金基金

国民年金基金の掛金は、基本的に毎月1日に指定の金融機関から引き落とされます。 国民年金とあわせて納付する場合は、上記の引き落とし日の前月の月末に引き落とされます。

>> 社会保険料の仕訳方法について

国民年金基金のポイントまとめ

国民年金基金は、国民年金に上乗せできる公的年金です。「国民年金だけでは老後が不安」という個人事業主は、国民年金基金に加入することで、払い込みの際には社会保険料控除のメリットを受けつつ、老後に支給される年金を増やすことができます。

  • 国民年金基金は、国民年金に上乗せできる年金
  • 付加年金との併用はできない
  • 個人型確定拠出年金(iDeCo)にも加入している場合は、これらの合計限度額が68,000円(月)
  • 掛金の限度額68,000円(月)の範囲内で「給付の型」と「加入口数」を選択する
  • 1口目は「A or B」で選択、2口目以降は7種類の給付型から複数選択できる
  • 終身B型以外は、加入者が亡くなった場合の「遺族一時金」を支給される保証期間がある
  • 1口目は変更不可だが、2口目以降の加入口数は途中で増減できる
  • 1年分の掛金を前納すると、0.1か月分の掛金が割引される
  • 国民年金基金の納付額は、社会保険料控除として全額を控除できる
  • 国民年金基金の納付を記帳する必要はない
  • 記帳したい場合は「事業主貸」の勘定科目を利用する

本文で触れた通り、個人事業主が任意で追加できる公的年金には、付加年金もあります。 また、同じように全額が所得控除の対象になる私的年金として、個人型確定拠出年金(iDeCo)があります。

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