個人事業での経費の範囲は? - 白色申告・青色申告での経費

更新日 2024年7月30日

経費の範囲について

事業運営に必要な支出が経費だが、多くはグレーゾーン

事業の経費について「これは大丈夫で、これは認められない」という明確なラインは存在しません。

基本的には「事業を運営するために必要な支出」を経費にできますが、 必要経費として計上できるか否かについては、個別具体的に判断するしかありません。

業種や収支に応じても、必要経費と認められる範囲は変わってきます。 また、税務調査があった場合には、調査官の心証も判断に影響します。

収入と経費のバランス

例えば、年収2,000万円の個人事業主が1回5万円の飲食代を接待交際費として計上するのはあり得る話ですが、 年収200万円の事業主が同じことを繰り返していると不自然です。 全く同じ出費でも、事業規模に応じて経費としての信憑性がかわります。

収支のバランスを考慮して事業主が常識的に判断し、 必要であれば用途のメモや資料を残して、経費としての信憑性を増す努力をしておきましょう。

判定が微妙な出費について、事前に税務署へ行って必要経費として認められるかどうか質問をしても、 税務署の職員からは事業主にとって有利な返答はまず期待できません。

業種と経費のバランス

収支に応じて経費の信憑性が変わるように、 業種や業務内容によっても経費のバランスが変わってきます。

例えば、飲食店の水道光熱費は膨れがちですが、 デザイン業を営んでいる事業の水道光熱費が多く計上されているのは不自然ですね。

税務署員は業種別の平均的な収支のバランスが念頭にあるので、 収支内訳を見て異常値があれば指摘されるもとになります。

事業用と私用で1つのものを使っている場合は経費を按分する

家賃、電気代、携帯電話料金、自動車代など、事業用とプライベート用で1つのものを共用している場合には、 かかった費用の全てを経費にするのではなく、按分をして総額の何割かだけを経費計上します。

例えば、インターネットを仕事でもプライベートでも使っている場合、インターネット料金の一部を経費とします。 この場合は利用頻度や作業時間などをもとに、経費を按分します。

>> 按分とは?地代家賃での按分例・方法など

経費として認められなかった場合はどうなる?

税務調査が入る場合には、原則として国税庁から調査依頼の事前通知が届きます。 国税通則法改正のひとつに税務調査手続の明確化がありましたが、 「課税の公平確保の観点から、一定の場合には事前通知を行わない」とあるように、 現在でも稀に、事前通知なしで税務調査が入ることになっています。

ただし、映画「マルサの女」のような強制調査は1億円以上の脱税が見込まれるような悪質なケースだけで、個人事業主に強制調査が入ることはまずありません。 基本的には任意調査なのですが、断ることはできないと思っておいた方がよいでしょう。 実施日程については、こちらの都合に合わせて変更してもらうことが可能です。

経費として申告していたものが、後日税務調査などで認められなかった場合には、修正申告することになります。 この場合には、追加で税金を納める必要があります。

税務調査の対象になる個人事業主とは?

このように、多くの経費はグレーゾーンにあり、事業者の収入や生活水準、業務内容等を照らし合わせて個別に判断する形になります。 グレーゾーンのものは対応する調査官によって多少は解釈が変わりますし、 調査官も人間ですから心証に配慮することも忘れてはいけません。

たとえ妥当な出費でも、後から見て使途が分かりづらそうなものについては、 客観的に納得ができる書類や資料・メモ書きなどを残しておくことが重要です。

ここまで経費の基本的な考え方について述べましたが、一般的には、個人事業で税務調査の対象になるボーダーラインは売上高1,000万円と言われることがあります。

もちろん、それより売上高が少ない場合でも明らかに申告内容がおかしい場合には、調査の対象になります。 しかし、売上が芳しくない個人事業主が、細かな経費の判断についてそう神経質になる必要はないということです。

税務調査が入る確率

割合でみると税務調査の対象となる法人が全体の4%程で、個人事業主が1%程です。 個人事業主であれば、100件中1件入る程度の割合なのです(税務行政の現状と課題 「実調率」の推移 (p4) - 国税庁)。

また、個人事業を新規開業してすぐには税務調査が入りにくいとも言われています。 いったん税務調査に入れば、最高7年間はさかのぼって調査できるからです。(通常は3年分)

売上が少ない個人事業主や、開業してから間もない事業主にはすぐに税務調査が入る可能性が相当低いと言えますが、いざ税務調査が入っても対応できるよう、証拠として示せるものは保存しておきましょう。

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