個人事業主の屋号の決め方【具体例付き】ネーミングのポイントを解説

更新日 2025年5月23日

個人事業主の屋号の決め方【具体例付き】ネーミングのポイントを解説

個人事業主として事業運営を始める前に「屋号(やごう)」を決めておきましょう。屋号があれば、名刺や領収書・請求書といった各種印刷物や、ウェブサイトでの運営者情報などにそれを記載することができます。

個人事業主の屋号の決め方

個人事業主の屋号を考える際は、下記の5つのポイントを押さえておきましょう。

  1. 事業内容が伝わるようにする
  2. 読み書きしやすい言葉を選ぶ
  3. 覚えやすさを意識する
  4. 信用できるイメージをもたせる
  5. グーグルで検索してみる

ここからは、それぞれのネーミングポイントについて詳しく解説していきます。

ポイント① 事業内容が伝わるようにする

屋号から事業内容が連想しやすい名前、自社サービスの強みがイメージしやすいネーミングは、それだけで営業面で有利に働くと言えます。

法人ですが「アサヒビール」のネーミングを例にとります。まず「ビール」という言葉で事業内容が連想できます。何を売り、どのような事業を主軸としているか、名前を見ただけで一目瞭然です。

アサヒビールは、焼酎・ワイン・その他の業務用商品も豊富に取り扱っていますが、あらゆるアルコール類の中でもビール製造に特化しているということが、名前からすぐに理解できます。このようなネーミングにすれば、事業名そのものが顧客からの認知に役立ち、営業をしてくれることになります。

商品イメージと企業名を結びつけて広告を大量に打てる大企業であれば、固有名詞のみのネーミングもインパクトがあって良いのですが、個人事業であれば、一見して事業内容が分かる「固有名詞+サービス名称」の屋号ネーミングは非常に有効です。
例)トヨタ自動車,コスモ石油,ヤマダ電機,積水ハウス,森永乳業,アルプス電気

ポイント② 読み書きしやすい言葉を選ぶ

例えば、PIZZAをそのまま日本語で表すと「ピッツァ」と発音するのが近いのですが、「ドミノ・ピザ」や「ピザハット」などの大手企業は、あえて「ピザ」という言葉を選んでいます。

正確ではありませんが、大多数の日本人の感覚からすれば「ピザ」という語感の方が自然で、読み書きしやすいですね。しかし、実際にはこだわって「○○ピッツァ」などとネーミングしている団体もたくさんあるのです。

これでは呼びにくいし、領収証をお願いする時に毎回「ピザではなくピッツァでお願いします!」と言わなくてはなりません。サンドウィッチマン(グレープカンパニー)のコントを彷彿とさせます。事業運営を始めてから屋号が使われるシーンを想像して、呼びやすい名前にしましょう。

ポイント③ 覚えやすさを意識する

長すぎるネーミング、聞きなれない言葉の使用は避けたいところです。ただ、長いネーミングでも、スッキリ略せるのであればOK。例えば、アマゾンジャパンの正式名称は「Amazon.co.jp」。正式名称は少しややこしいのですが、「アマゾン」が通名になっています。

逆に、短い名前でも聞きなれない言葉は、やはり覚えにくいものです。パリの「シュルンベルジェ」は世界的な大企業です。ですが、日本人の私たちからすれば全く聞きなれない言葉なので、記憶の網になかなか引っかかりません。

さきほどの読み書き・呼び聞きの観点からも、シンプルで日本人に聞き慣れたネーミングを心がけてみましょう。

ポイント④ 信用できるイメージをもたせる

法人と比べて、個人事業主の大きなハンデのひとつは「信用」です。それでも、個人事業主がネーミングで打てる手として、屋号に「信用」や「事業の規模感」を感じられる言葉を結びつけるという方法があります。

オフィス●●、●●事務所、●●グループなど、このようなネーミングで、「信用できるイメージ、しっかりと事業運営しているイメージ」を演出することができます。

屋号に「オフィス」や「事務所」という言葉を使っても問題ありません。ただし「会社」「法人」など、会社であると誤認されるような文字を用いることはできません。また「銀行」や「労働金庫」などの文字を用いることも禁じられています。

ポイント⑤ グーグルで検索してみる

屋号の決め方のポイント

特に、インターネットで商売をする人、屋号を用いたブランドを構築予定の人は、自分で考案した屋号の候補をGoogleやyahooで検索して、ほかに同じネーミングですでに商売をしている競合がいないかをチェックしてみることも大切です。

顧客や取引先に、検索サイトから屋号を検索してきてもらいたい場合は、検索上位に入りやすい屋号にすることも重要です。ラーメン、デザイン、不動産、など、このようなありふれた普通名詞は「ビッグワード」と呼ばれ、これだけで検索上位に入ることは困難です。

屋号や店名を検索してみて上位表示させるためには、もともとの言葉を少しもじったオリジナルの言葉にするか、上述のように「固有名詞+サービス名称」などのネーミングにすることが有効です。
例)丸徳ラーメン、ナルトデザイン、立川不動産

例えば、このサイトは「個人事業主」とだけ検索すると検索結果の1位にこないことがありますが、「個人事業主メモ」と検索すると、必ず検索結果の1番上にくるはずです。

将来的に、グーグルなどの検索サイトから屋号や店名で顧客を誘導したい場合には、上位表示できそうな固有のネーミングにすることをおすすめします。

個人事業主が屋号を付けるメリット

個人事業主の屋号は、営業する上で自己を表すための名称です。株式会社などの法人でいうところの会社名にあたります。業種や事業内容によっては、屋号をつけるメリットがあります。

  1. 事業内容がすぐ相手に伝わる
  2. 屋号名義の銀行口座がつくれる
  3. 社会的な信頼がアップする

屋号を考えたら「個人事業の開業・廃業等届出書」の用紙に屋号の記入欄があるので、そこに記入します。屋号の登録・申請は、これだけでOKです。「個人事業の開業・廃業等届出書」については「開業届の出し方」を参考にしてください。

メリット① 事業内容がすぐ相手に伝わる

屋号は単なる事業の名称というだけでなく、営業ツールとしての側面もあります。どんな事業を営んでいるかが伝わる名称をつければ、営業活動がスムーズになります。

営業ツールとして活用する際の屋号例

たとえばデザイナーの場合「○○デザイン事務所の山田です」ではなく「○○Webデザイン事務所の山田です」と名乗れば、デザインのなかでもWebデザインに特化していることがすぐにわかります。

ただ、これは事業内容がフォーカスされている場合です。開業時点で事業内容が定まっていなかったり、将来的に幅広い事業展開をめざしていたりするのであれば、抽象的な屋号にしておきましょう(変更はいつでも可能)。

なお、ペンネームですでに活動していて、その名前が業界で浸透しているのであれば、そのペンネームを屋号にしてもいいでしょう。

メリット② 屋号名義の銀行口座がつくれる

屋号をつくっておけば「屋号+個人名」の名義で、銀行口座を開設できます。プライベートな口座とは別に事業用の口座があると、お金の管理もスムーズに行えます。

個人事業主でも通帳に屋号名を記載できる

屋号付きの口座なら、取引先から入金処理などを受けるときに屋号名だけを表示するよう設定することができます。個人名を伝えなくて済むので、不特定多数に口座の情報を公開する必要のある事業者は、屋号付き口座を利用していることが多いです。

屋号付き口座を開設できる主な銀行

  • 三菱UFJ銀行
  • みずほ銀行
  • 三井住友銀行
  • 楽天銀行
  • PayPay銀行

3大メガバンクはもちろんのこと、楽天銀行やPayPay銀行といった「ネット銀行」でも屋号付き口座を開設できます。口座開設に必要な書類などは銀行によって異なるので、よく確認してから申し込みましょう。

メリット③ 社会的な信頼がアップする

個人事業主は、法人と比べると社会的な信用においてハンデがあります。業界によっては法人との取引しか行っていない企業もあります。

消費者を相手としたサービスにおいても、特に個人名で活動していると事業の実態が見えづらいことなどから商品やサービスの購入を敬遠されることはあるでしょう。しかし、屋号を掲げることによって、相手にきちんとした印象を与えることができます。

信頼度アップが見込める屋号の例

  • 〇〇事務所
  • 〇〇オフィス
  • 〇〇企画
  • 〇〇商店
  • 〇〇工業
  • 〇〇グループ

上記のように、「事務所」や「オフィス」などの名称を盛り込むと良いです。お硬いイメージや誠実な印象を演出したい場合は、参考にしてください。

なお、屋号の決め方・ネーミングのポイントでも紹介していますが、「会社」や「銀行」など、会社組織や金融機関と誤認されるような名称を使うことは禁止されています。
例)株式会社、合名会社、合資会社、合同会社、法人、財団、銀行、労働金庫

【補足】屋号と商号の違い

個人事業主の「屋号」と「商号」は異なります。法人の場合、会社設立する際に商号登記をする必要がありますが、個人事業主の場合、商号の登記は任意です。

商号とは
商号とは、営業を行うにあたって自己を表示するために使用する名称。登録された商号は、同一の市町村内(同一の法務局の管轄内)で、他人が同じ事業目的で同一の商号を利用することを排除することができる。

個人事業主が開業届に記入する「屋号」には、上記のような法的保護がありません。もし名称の使用を占有したければ、商号登記という手続きが必要になります。商号登記をする場合には、登記料・収入印紙代として3万円が必要になります。

法人である場合には、商号登記が必要です。しかし、個人事業主が商号登記をする義務はありません。大多数の個人事業主はそこまでしませんので、事業を営む上で特に気にならなければ、商号登記までする必要はありません。

近場で似た名称の事業所がないかチェック

同一地区内で、同じような名称をつかっているお店がないかくらいはチェックしておきましょう。たとえば、飲食店を開業する場合などは、近くに同じ名前の店舗がないか調べるなどの確認はしておくべきです。法務局に行けば、無料で屋号調査をすることもできます。

まとめ

最後に、屋号に関しておさえておきたいポイントを簡単にまとめておきます。屋号は絶対につけないといけないものではありません。屋号なしで事業を始めることもできます。ただ、本ページで紹介したようなメリットを受けられそうなら、屋号をつけるとよいです。商号とは違って、屋号をつけるだけならお金もかかりません。

屋号のポイント

  • 任意なので、無理につける必要はない
  • 開業届に屋号を記入すれば、それだけで登録は完了する
  • 屋号を変更したくなったら、次の確定申告で新しい屋号を記入すればOK
  • 仕事によっては、屋号をつけることで営業面のメリットがある
  • 事業ごとに屋号を設定することも可能

なお、確定申告書には「屋号」の横に「雅号(がごう)」という言葉が並んでいますが、この「雅号」は画家・書家などが本名以外につける名称のことを指します。

新規開業時に屋号をつけて個人事業をスタートする場合には「開業届」に屋号の記入欄があるので、そこに自分で決めた屋号を記入しましょう。

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>> 開業届の書き方 - 個人事業を始める時に提出する書類
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