事業主貸・事業主借とは?違い・仕訳例・決算時の相殺処理について

更新日 2026年8月17日

事業主貸・事業主借とは?違い・仕訳例・決算時の相殺処理について

事業主貸・事業主借とは?

「事業主貸」と「事業主借」は、個人事業主に特有の勘定科目です。どちらも、主には事業とプライベートのお金を区別するために使います。

事業主貸
じぎょうぬしかし
事業主借
じぎょうぬしかり
事業のお金を
プライベート用に使ったときなどに使う
プライベートのお金を
事業用に使ったときなどに使う

どっちが「貸」でどっちが「借」だっけ?と混乱する場合は、下記のように覚えておくとよいです。

事業主貸と事業主借
  • 事業主貸:事業用のお金を事業主に"貸す"
  • 事業主借:事業用のお金を事業主から"借りる"

「貸・借」という言葉はお金の流れを示しているだけなので、貸し借りしたお金を戻す必要はありません。事業主貸と事業主借は、決算時に「元入金」という勘定科目に集約されます。年末時点で相殺されて、翌年は事業主貸も事業主借もゼロからスタートするということです。

「事業主貸」を使う場面・仕訳例

「事業主貸」は、事業用のお金をプライベートな出費にあてた時などに使います。

事業主貸の勘定科目を使う場面(主な例)

  • 事業用口座から生活費のためにお金をおろした
  • 事業用口座から所得税や住民税を振替納付した
  • 事業用のカードをプライベートの出費で使った

たとえば、事業用口座から生活費をおろしたとき、なにも記帳しないと「帳簿上の残高」と「実際の残高」がズレてしまいます。このようなときに、おろした金額を「事業主貸」として記帳しておく必要があるわけです。

事業主貸の仕訳例

日付借方貸方摘要
20XX年5月1日事業主貸 50,000普通預金 50,000生活費

上記は、事業用の口座から、生活費のために5万円をおろした場合の仕訳例です。現金でおろした場合だけでなく、プライベート用の口座に送金した場合でも同じように仕訳します。

ちなみに、事業用の口座から所得税や住民税を振替納付した場合も「事業主貸」で処理します。所得税や住民税の納税額は必要経費にできないので、事業主貸で「プライベートな支出」として処理するわけです。
>> 必要経費にできる税金・できない税金【まとめ一覧】

「事業主借」を使う場面・仕訳例

「事業主借」は、事業主のプライベートなお金を事業の出費にあてた時などに使います。

事業主借の勘定科目を使う場面(主な例)

  • プライベートの口座から事業用口座にお金を移した
  • 事業主のポケットマネーで事業の必要経費を支払った
  • プライベートのクレジットカードで必要経費を支払った

たとえば、プライベートの口座から事業用口座にお金を充当したとき、なにも記帳しないと「帳簿上の残高」と「実際の残高」がズレてしまいます。このようなときに、充当した金額を「事業主借」として記帳するわけです。

事業主借の仕訳例

日付借方貸方摘要
20XX年7月1日普通預金 100,000事業主借 100,000私用口座から充当

上記は、プライベートの口座から事業用口座に10万円を振り込んだときの仕訳例です。これを「事業主借」で仕訳しておかないと、税務調査で「この10万円は未申告の売上じゃないですか?」などと疑われてしまうかもしれません。

事業主貸と事業主借は決算時に相殺する?

個人事業主は、毎年の決算で「元入金」を計算する必要があります(単式簿記の場合は不要)。元入金とは、簡単にいうと「事業にどれだけの財産があるか」を表す金額です。この元入金を計算する過程で、事業主貸と事業主借を相殺することになります。

元入金の計算方法
翌年の元入金 = 当年の元入金 + 当年の所得金額 +(事業主借 − 事業主貸)

※ 当年の所得は、青色申告特別控除前の金額で考える

その年に利益が出たり、事業主が個人のお金を事業に入れたりすると、事業の財産は増えます。逆に、事業のお金を生活費などに使うと、事業の財産は減ります。こうした1年間の増減を翌年の元入金に反映させるため、上記のような計算をするわけです。

この処理によって、事業主貸と事業主借は元入金に集約されるので、翌年はどちらも0円からスタートします。ちょっとややこしい会計処理ですが、会計ソフトを使っていれば大抵は自動でやってくれるので、深く考える必要はありません。

>> 個人事業主の元入金とは?マイナスになるのはなぜ?

【補足】家事按分の仕訳では事業主貸・事業主借を使う

支出の一部だけを必要経費に計上し、残りをプライベートな出費として扱うことを「家事按分」といいます。家事按分の仕訳では、事業・プライベートのどちらのお金で支払ったかによって、「事業主貸」と「事業主借」を使い分けます。

たとえば、10万円の家賃を「事業3:プライベート7」の割合で按分しているとします(自宅で仕事をしている個人事業主を想定しています)。このとき、家賃を事業用口座から払っているなら、家賃の30%にあたる3万円を「地代家賃」の科目で経費計上し、残りの7万円は「事業主貸」でプライベートな支出として処理します。

【仕訳例】家賃を事業用口座から払ったとき

日付 借方 貸方 摘要
20XX年4月30日 地代家賃 30,000 普通預金 100,000 自宅兼事務所の家賃
事業主貸 70,000

なお、上記は家賃を「事業用口座」から支払った場合の仕訳例です。同じ家賃を「プライベートの口座」から払った場合は、下記のように仕訳します。

【仕訳例】家賃をプライベート口座から払ったとき

日付 借方 貸方 摘要
20XX年4月30日 地代家賃 30,000 事業主借 30,000 自宅兼事務所の家賃(事業分30%)

必要経費に当たる3万円を、事業主が立て替えたものとして「事業主借」で処理します。残りの7万円については、プライベートな支出をプライベートの口座から払っている状態なので、事業の帳簿には記帳しなくてOKです。

事業主貸・事業主借に関するQ&A

事業主貸と事業主借は返済する必要がある?
事業主貸と事業主借は、どちらも返済する必要はありません。名前に「貸・借」とついていますが、事業主と事業の間で貸付金や借入金が発生しているわけではないためです。それぞれの残高は、決算時に「翌年の元入金」に算入されてチャラになります。
事業主貸と事業主借は収入や経費にカウントする?
事業主貸と事業主借は、収入にも必要経費にもカウントしません。当然ですが、事業用口座から生活費を引き出しても「必要経費」にはならず、個人のお金を事業用口座へ入れても「売上」にはなりません。あくまで、事業と事業主の間でお金が移動したことを記録するための勘定科目です。
事業主貸と事業主借は年の途中で相殺してもいい?
年の途中で事業主貸と事業主借を相殺する必要はありません。決算時に「翌年の元入金」を算出するうえで、事業主貸と事業主借の差額を計算しますが、それ以外のタイミングで相殺するような会計処理は不要です。
事業主貸が多くても問題ない?
事業主貸が多くても、それが理由で税金が増えたり罰則が生じたりすることはありません。事業主貸が多いということは、単純に「事業からプライベートにまわしている金額が多い」ということを表しています。事業の資金繰りに問題がなければ、そのままでも大丈夫です。
翌年の元入金がマイナスになっても問題ない?
事業が赤字の年や、事業主貸が多い年は、翌年の元入金がマイナスになる場合もあります。ビジネスとしてはちょっと不健全な場合もありますが、元入金がマイナスだからといって、税金が増えたり罰則が生じたりするわけではありません。

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