個人事業主・従業員・専従者 - 給与の仕訳方法まとめ
更新日 2024年7月16日
個人事業主の取り分・生活費について
個人事業では、1年間の収入から必要経費を差し引いて残った「所得」が個人事業主の取り分となります。したがって「個人事業主への給料」という考え方はしません。
- 個人事業主の取り分
- 収入 − 必要経費 = 所得(個人事業主の年収)
(個人事業が専業の場合)
ですから、個人事業主自身へ「給料」を支払ったり、これを経費として帳簿づけすることはありません。
事業用口座からプライベートの出費をしたら?
もし事業用の銀行口座から個人事業主の生活費をおろしたり、事業主のプライベートな出費をした場合は、 「事業主貸」という科目を使って記帳します。 この科目は個人事業用の会計ソフトであれば、必ず標準で用意されています。
この「事業主貸」は個人事業に特有の科目で、経費の勘定科目ではありません。 単に「事業のお金をプライベートなこと(生活費など)にまわしたよ」ということを意味する科目です。 例えば、事業用口座から事業主の生活費20万円を引き落とした場合、複式簿記では以下のように帳簿づけします。
日付 | 借方 | 貸方 | 摘要 |
---|---|---|---|
20XX年5月10日 | 事業主貸 200,000 | 預金 200,000 | 生活費 |
個人事業において「事業主の給料」という考え方はしません。
とはいえ「事業用の口座からプライベートな出費をした」ということを帳簿上で示すため、
「事業主貸」という勘定科目を使って、上記のような仕訳をするわけです。
>> 事業主貸・事業主借についてもっと詳しく
個人事業の場合には、個人用口座と事業用口座を同じにしたり、事業用の口座から個人事業主のプライベートな出費をすることがあります。 このように、事業には関係のない個人事業主の私的な出費をするときには、「事業主貸」という科目を用いて処理します。
プライベートのお金を事業用に使ったら?
事業用のお金を、事業主の生活費などにあてるのが「事業主貸」でした。 反対に、個人事業主の生活費やプライベートなお金を事業に充てるときには、 「事業主借」という勘定科目を用います。
例えば、事業主個人のポケットマネー5万円を事業用口座に振り込んだ場合、 複式簿記では以下のように仕訳します。
日付 | 借方 | 貸方 | 摘要 |
---|---|---|---|
20XX年6月20日 | 預金 50,000 | 事業主借 50,000 | 事業資金の補充 |
個人事業用の会計ソフトを使って帳簿づけしている場合、 この事業主借や事業主貸は、年をまたぐとき(12月31日→1月1日)に自動的に「元入金」へと集約されます。 元入金とは、会社でいうところの資本金のようなものです。
もし会計ソフトを使っていない場合には、年を更新する際に元入金の金額をみずから算出する必要があります。
- 翌期の元入金の算出について
- 今期の元入金 + 所得 + 事業主借 − 事業主貸 = 翌期の元入金
(ここでいう所得は、青色申告特別控除前の所得)
>> 元入金の詳細はこちら
従業員への給与は「給料賃金」で経費計上
個人事業主の取り分や生活費は「事業主貸」の科目で処理するのでした。 一方、従業員を雇っている場合、従業員への給料は「給料賃金」の科目で経費計上できます。
日付 | 借方 | 貸方 | 摘要 |
---|---|---|---|
20XX年5月25日 | 給料賃金 250,000 | 普通預金 233,000 | 山田さん給与 |
預り金 6,000 | 所得税 | ||
預り金 10,000 | 住民税 | ||
預り金 1,000 | 雇用保険料 |
上記の仕訳は「給料賃金として25万円を経費計上した。事業口座からの実際の出金は233,000円。残りの17,000円は、事業主が預かる」ということを表します。事業主は、従業員の給料から税金を差し引いておき、本人の代わりに納める必要があります(源泉徴収)。
なお、従業員を雇って給与の支払いをするには、事前に届出を行います。 給与の支払開始から1ヶ月以内に、税務署へ「給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出」を提出しましょう。
専従者への給与について
個人事業の場合、従業員への給料と、事業を手伝ってくれる家族や親族への給料は、別に考える必要があります。 この家族従業員のことを「専従者」と呼びます。 専従者への給料は、白色申告と青色申告で処理の仕方が異なります。
白色申告の場合は、専従者がいると「専従者控除」が適用できます。
この控除額は、独自の計算式で算出します。
>> 白色申告の専従者控除 - 計算例や条件など
青色申告の場合は、専従者への給料を「専従者給与」として経費計上できます(事前申請が必要)。
こちらの場合は、支払った給料を全額経費にすることができます。
>> 青色事業専従者としての条件など
まとめ
「個人事業主の取り分」「従業員への給料」「専従者への給料」、これらの帳簿づけ方法をまとめると、以下のようになります。
事業主本人の取り分 | 「事業主貸」の科目で処理する(経費ではない) |
---|---|
従業員への給料 | 「給料賃金」の科目で経費計上できる 事前申請が必要 |
専従者への給料 | 白色申告の場合 「事業主貸」の科目で処理する(経費ではない) 申告の際、白色事業専従者控除として一定額まで控除できる 事前申請は不要 |
青色申告の場合 「専従者給与」の科目で経費計上できる 事前申請が必要 |
個人事業主本人の取り分は、収入から必要経費を差し引いて残った「所得」です。 年の途中で事業用の口座からおろした事業主の生活費などは、経費にはできず、「事業主貸」という個人事業に特有の科目を用いて処理します。
従業員への給料は「給料賃金」の科目で、経費計上できます。「給料賃金」や「給与」といった科目を用い、経費として記帳しましょう。
白色申告の場合、白色専従者への給与は経費にできません。経費にはできませんが、白色事業専従者控除として、一定額まで控除できます。専従者への給与は、帳簿上では「事業主貸」として処理しましょう。
青色申告の場合は、青色専従者への給与が「専従者給与」という科目で経費計上できます。専従者への給料が全額経費にできるのは、青色申告のメリットのひとつです。
>> 事業主貸・事業主借をおさらい
>> 個人事業の必要経費【一覧表】
>> 個人事業用の会計ソフト一覧