元入金 - 計算例やマイナスになる場合について

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更新日 2024年1月04日

元入金の仕訳や計算について

元入金(モトイレキン)とは?

個人事業の「元入金」とは、法人でいう資本金のようなものです。 開業するにあたって事業主が用意した開業資金・準備金を、まず「元入金」として帳簿づけします。 資本金との大きな違いは、基本的に毎年金額が変わるという点です。

資産
(現金、預金、売掛金、固定資産など)
負債
(買掛金、未払金など)
資本
元入金、事業主借など)

貸借対照表の位置でいうと、右下に資本があります。 個人事業における資本とは、元入金や事業主借のことを指します。 なお、法人会計で元入金の勘定科目はありません。

開業時の仕訳方法

開業時には、事業を運営するために準備していたお金を、元入金の勘定科目を用いて記帳します。 例えば、事業主が用意した100万円を事業用口座にいれて事業をスタートする場合、下記のように仕訳します。

日付借方貸方摘要
20XX年5月10日預金 1,000,000元入金 1,000,000開業資金

これで、元入金によって100万円の預金で事業をスタートするということになります。 ひとまず事業用口座は用意せず、100万円の現金をもとにスタートするということであれば、下記のように記帳すればよいです。 預金か現金かの違いだけです。

日付借方貸方摘要
20XX年5月10日現金 1,000,000元入金 1,000,000開業資金

この後、期中(会計期間の途中)に、元入金の勘定科目を使って記帳をすることはありません。 これ以降は、年(会計年度)が変わるときにだけ、元入金を計算することになります。

元入金の計算方法

元入金の金額は、期首(1月1日)と期末(12月31日)では変わりません。 これは、年をまたぐときにだけ(12月31日→1月1日)に更新される金額です。

開業して2年目以降であれば、例えば2023年1月1日と2023年12月31日の元入金の金額は、同じ金額です。 年をまたぐ時にだけ変更する金額ですから、2023年12月31日と2024年1月1日の金額は違うということです(もちろん偶然ぴったりになることもあるでしょうが、普通は違います)。

翌期の元入金の算出について
今期の元入金 + 所得 + 事業主借 − 事業主貸 = 翌期の元入金
(ここでいう所得は、青色申告特別控除前の所得)

この計算により、事業主貸や事業主借は、年をまたぐときに元入金へと集約されます。
(>> 事業主貸・事業主借とは

個人事業用の会計ソフトを使っていれば、年をまたぐときの繰越処理は自動で行われます。 自分で元入金の計算をして帳簿づけする必要はありません。 上記の計算はソフトが行ってくれて、自動で翌期首(1月1日)の元入金が算出されます。

期中には事業主のポケットマネーから事業にお金を移動しても、元入金の勘定科目は使いません。その時には「事業主借」の勘定科目を使います。会計ソフトを使っている場合、元入金の勘定科目を使って自ら帳簿づけをするのは、新規開業時だけということです。

元入金って、マイナスになってもいいの?

元入金はマイナスになっても問題ありません。 事業がうまくいっていない時や、事業主の生活費がかさんでいる場合にマイナスになることはあります。

元入金がマイナスということは、 赤字であったり、利益の多くを事業主の生活費に使いこんでしまったということです。

1年間を終えて所得が多くなった場合には、基本的に翌期首(1月1日)の元入金は増えることになります。 しかし、「事業主貸」が多い場合には、元入金の金額は少なくなります。 新しい年を迎えるたびに、元入金の金額が多くなっていくのが理想的な状態です。

元入金の仕訳例と計算例

例えば、新規開業した時に事業主の全財産150万円を事業用の銀行口座にいれて、 個人事業を1月にスタートしたとしましょう。この場合は下記のように記帳します。

元入金 - 開業時の仕訳例

日付借方貸方摘要
20XX年1月10日預金 1,500,000元入金 1,500,000開業資金

その後、事業主は生活費のために毎月20万円を事業用口座から引き落とすとします。 そして、その年の年間所得(利益)は400万円になったとしましょう。

この場合、事業のためのお金として最初に用意したのが150万円(元入金)
事業主の生活費として20万円 × 12ヶ月分 = 240万円(事業主貸)
売上 − 経費 = 400万円(年間所得)
これらを先ほどの式(翌期の元入金の算出について)に当てはめてみます。

翌期の元入金の算出について
今期の元入金 + 所得 + 事業主借 − 事業主貸 = 翌期の元入金
(ここでいう所得は、青色申告特別控除前の所得)

150万円 + 400万円 + 0 − 240万円 = 310万円
この場合、翌年1月1日の元入金は310万円でスタートするということです。

これは順調な例ですね。1年間事業を運営して事業主の生活が維持でき、 なおかつ事業資本である元入金が事業開始時と比べると160万円増えたわけです。

ただし、事業主貸の分だけ元入金は減少しますので、 「元入金の金額 = 儲け」という訳ではありません。 事業が好調でも、同時に事業主個人の生活が派手な場合は、翌期の元入金は少なくなるわけです。

元入金と事業主借について

そういえば開業資金を「事業主借」で処理してしまっていた、という場合でも問題ありません。 年をまたぐときに会計ソフトが自動で繰り越し処理をしてくれて、翌期の元入金へと反映されます。

先ほどの例で言えば、最初に用意した150万円が「今期の元入金」であれ「事業主借」であれ、 翌期の元入金の金額に違いはないわけです。いま一度、計算式を確認してみましょう。

翌期の元入金の算出について
今期の元入金 + 所得 + 事業主借 − 事業主貸 = 翌期の元入金
(ここでいう所得は、青色申告特別控除前の所得)

開業資金を元入金として計上した場合 → 150万円 + 400万円 + 0 − 240万円 = 310万円
開業資金を事業主借として計上した場合 → 0 + 150万円 + 400万円 − 240万円 = 310万円

どちらにしても翌期の元入金は310万円になるので問題ありません。 本来であれば開業当初の資金は「元入金」の勘定科目で処理しますが、 「事業主借」にしてしまったとしても、気にするほどのミスではないということです。

>> 事業主貸・事業主借をおさらいしておこう
>> 個人事業の簿記・帳簿づけについて
>> 個人事業の会計ソフト一覧