個人事業主の開業準備【5ステップ】独立起業までにやること

更新日 2025年5月23日

個人事業主の開業準備まとめ【5ステップ】独立起業までにやること

STEP① 社会保険の手続をする(脱サラの場合)

会社員と個人事業主では、加入する社会保険が異なります。脱サラしたら「国民年金」と「国民健康保険」の手続きをしましょう。この手続きは、退職の翌日から14日以内に行います。

加入する公的年金保険・公的医療保険の違い

会社員 個人事業主
年金保険 厚生年金 + 国民年金(第2号被保険者) 国民年金(第1号被保険者)
医療保険 健康保険 国民健康保険

手続きは市区町村の役所でまとめて行えます。退職を証明する書類(離職票や健康保険の資格喪失証明書など)が必要になるので、退職時に受け取っておきましょう。なお「厚生年金」や「健康保険」の脱退手続きは、会社が代わりに済ませてくれます。

国民年金の手続きについて

20~60歳の個人事業主は、基本的に「第1号被保険者」として国民年金に加入します。ほとんどの会社員は「第2号被保険者」として加入している状態なので、この切り替え手続きが必要です。

ちなみに、配偶者(会社員)に養ってもらうなら、保険料の納付が不要な「第3号被保険者」として加入できる場合もあります。ただ「年収130万円以下」などの要件を満たさないと該当しません。
>> 国民年金 第1号・第2号・第3号の違い

国民健康保険の手続きについて

脱サラしたら、都道府県が運営する「国民健康保険」に加入します。業種によっては、その業種に特化した「国民健康保険組合」を選ぶこともできます。これらは、民間の医療保険(がん保険など)とは異なり、加入が必須の「公的医療保険」です。

なお、最大2年間にわたって、会社の健康保険に継続加入できる制度もあります(任意継続)。とくに家族を養っている人は、任意継続のほうが保険料を抑えられる場合があるので、必要に応じて会社に確認しておきましょう。
>> 個人事業主の社会保険について詳しく

STEP② 個人事業主の「屋号」を決める

法人でいう会社名のように、個人事業主は「屋号(ヤゴウ)」をつけることができます。屋号をつける場合、その名称でこれから商売することになるので、まずは屋号を決めてしまいましょう。請求書や領収書などの各種書類にも、この屋号を記入できます。

個人事業主法人(株式会社など)
名称屋号会社名
具体例おしゃれ工房
ひとりワッショイ
株式会社 おしゃれ工房
ひとりワッショイ合同会社
必要性必ずしも屋号をつける必要はない会社設立の際に会社名を登記する必要あり

個人事業主の屋号は、名称がそのまま反映されます。法人のように「株式会社」などの表記はつきません。たとえば株式会社の場合「株式会社NTTドコモ」や「ソフトバンク株式会社」のように、前か後ろに「株式会社」をつける必要があります。

また法人の場合、会社設立の際に必ず社名を登記することになりますが、屋号にそのような義務はありません。なので、もし屋号を決めるのが面倒な場合や、フリーランスとして個人で動く場合は、屋号を決めずにそのまま個人名で仕事をしても問題ありません。

ちなみに、あとから屋号を変更したくなったり、新たに屋号を設定したくなった場合には、税務署への届出により簡単に変更することができます。
>> 屋号の決め方 - ネーミングで留意すべき5つのポイント

STEP③ 白色申告か青色申告を選択する

個人事業主の確定申告を大別すると、白色申告と青色申告の2種類があります。何も申請しなければ自動的に白色申告の扱いになります。青色申告をするには、事前に税務署への申請が必要です。定められた期限内に「青色申告承認申請書」を提出します。

個人事業主の確定申告 - 白色申告と青色申告

白色申告青色申告
申請申請の必要なし事前申請の必要あり
特徴帳簿づけや申告が簡単帳簿づけや申告が難しい
特典特典なし節税につながる特典あり

白色申告と青色申告の違いを詳しく

青色申告は、白色申告と比べると帳簿づけや申告の要件が厳しくなりますが、節税につながる特典を受けることができます。

開業届を税務署に提出するのと同時に「青色申告承認申請書」も提出できるので、まずは白色申告にするか青色申告にするかを検討しておきましょう。
>> 白色申告と青色申告の違い

STEP④ 税務署へ開業届などを提出する

屋号と申告方法が決まったら「開業届」を税務署へ提出しに行きましょう。基本的には、自宅から最寄りの税務署が管轄の税務署です。以下のページで所轄の税務署を調べられます。
>> 国税局の所在地及び管轄区域 - 国税庁

国税庁のホームページから開業届をダウンロード・印刷して持参することもできますが、開業届は税務署にも用意してあるので、向こうへ行ってから記入するのでも構いません。事前に開業届の書き方に目を通してから行くとスムーズです。
>> 開業届の書き方

税務署へ開業届などを提出する

青色申告を選択したい方は税務署で開業届の用紙をもらう際に、「青色申告をしたいので青色申告の申請書もお願いします」と言えば、職員の方が青色申告申請書を用意してくれます。こちらも事前に書き方に目を通してからいくと良いでしょう。
>> 青色申告承認申請書の書き方

税務署へ開業届を出せば、個人事業の開業手続きに関しては終了です。開業届自体はA4用紙1枚なので(控えも含めると2枚)、あっけなく手続きが完了するはずです。

STEP⑤ 必要に応じて許認可を受ける

商売をするにあたって許認可が必要な業種と、必要ない業種があります。許認可が必要な業種であれば、実際に営業を始める前に許認可を受ける必要があります。

開業届や青色申告申請書の受付は、税務署で行っています。一方、許認可については業種によって受付窓口が大きく異なります。

例えば、飲食店や食料品等販売、クリーニングや美容院などの開業であれば、許認可の窓口は「保健所」です。一方、バーやリサイクルショップ、ゲームセンターなどは「警察署」が許認可の窓口です。

>> 開業にあたって許認可が必要な主な業種一覧と窓口

【おまけ】会計ソフトも用意しておこう

個人事業主の経理は法人と比べると簡単なので、自分自身で帳簿づけをし、自分で確定申告する人も多いです。

紙の帳簿を用意して売上や経費を書き込んでいく方法でもよいのですが、手書きではとても大変なので、個人事業主用の会計ソフトを用意しましょう。法人用の会計ソフトとは別に、個人事業主の経理に特化した安価なソフトが販売されています。

市販の会計ソフトを使えば、日々の帳簿づけが簡単になり、確定申告で提出するための書類もほとんど自動作成されます。申告方法に応じて会計ソフトを選んでおきましょう。
>> 白色申告の会計ソフト
>> 青色申告の会計ソフト

以上で、個人事業主の開業準備は終了です。あとは個人事業を運営するにあたっての年間スケジュールをざっくりとおさえておきましょう。

個人事業主の年間スケジュールをおさえよう

個人事業開業5ステップ

個人事業の会計期間は原則1月1日〜12月31日で、これにもとづいて確定申告します。一方、会社の場合は決算月を自由に決定することができます。

個人事業主法人(株式会社など)
会計期間1月1日〜12月31日自由に決められる
(4月1日〜3月31日など)
確定申告原則として翌年2月16日〜3月15日決算日から2ヶ月以内に行う

個人事業主であれば、毎年12月が決算月になるということです。なので1月を期首、12月を期末として売上や経費を会計ソフトに記録していき、年明けに結果をまとめて、確定申告のための書類を準備し始める形になります。ちなみに、2024年分(令和6年分)の確定申告は、原則として「2025年2月17日〜3月17日」に行う必要がありました(土日と重なる関係で例年と日付がズレています)。

新規開業の年は、開業した日から12月31日までの営業記録でOKです。個人事業主の会計ソフトにコツコツと売上や経費を入力していけば、確定申告で提出するための書類は大部分が自動作成されていきます。

それを自宅やコンビニのプリンターで印刷する、もしくは確定申告書類に書き写すなどして、確定申告書類を2月16日~3月15日の間に税務署へ提出します(その年の曜日の関係で多少日にちが異なる)。これが確定申告です。

>> 個人事業の年間スケジュール - 確定申告期間や税金の納付時期について
>> 開業日までの支出は「開業費」で記帳する
>> 個人事業の開業に関する情報まとめ - 個人事業主の起業準備