発生主義と現金主義の違い - 経費計上のタイミング

更新日 2024年7月16日

発生主義と現金主義の違い

発生主義とは?現金主義とは?

発生主義とは「お金が動く(入金や出金がある)日付」には関係なく、 「収入や支出の原因になる経済的事実が発生した日付」で、収益や費用を計上する方法のことです。 逆に、現金主義とは「お金が動く(入金や出金がある)日付」で、収益や費用を計上する方法です。

発生主義 現金主義
経済的事実が発生した日付で
収益や費用を計上する
実際にお金が動いた日付で
収益や費用を計上する

例えば、4月18日に80,000円のパソコンをクレジットカード決済で購入したとします。 そして、実際に事業用口座からお金が引き落とされるのが、5月20日であるとします。

この場合、発生主義であれば4月18日の日付でまず帳簿づけします。 もうこの時点で、費用を計上することになるわけです。 そして、実際にお金が引き落とされる5月20日の日付で、お金の動きも帳簿づけします。 つまりこの場合、合計2回帳簿づけをすることになります。

発生主義の帳簿付け

一方、同じ取引を現金主義で記帳する場合には、口座からお金が引き落とされた5月20日だけ帳簿づけすればOKです。 こちらの場合、費用を計上する日付は5月20日です。現金主義は簡単ですね。お小遣い帳と同じ感覚です。

現金主義の帳簿付け

発生主義による仕訳例

さきほどの取引を複式簿記で表すと、以下のようになります。 取引の内容を借方・貸方に分けることを「仕訳」と言います。

まず、取引が発生した日付で、以下のように帳簿づけします。 消耗品費を計上するが、まだ実際にお金は引き落とされていない状態を「未払金(ミハライキン)」という勘定科目をつかって表します。

日付借方貸方摘要
20XX年4月18日消耗品費 80,000未払金 80,000パソコン

複式簿記では取引で生じる2つの面を表します。この仕訳では「消耗品費という費用が80,000円発生したこと」と「まだ払っていないお金が80,000円発生したこと」を示しています。

その後、実際にお金が引き落とされた日付で、以下の仕訳を追加します。 これは、未払いだったお金が実際に銀行預金から引き落とされたことを表します。 未払金を反対側につけることで、先ほどの未払金が相殺されます(消込)。

日付借方貸方摘要
20XX年5月20日未払金 80,000普通預金 80,000パソコン

発生主義の場合は、取引が発生した時点と、お金の動きがあった時点で、 上記のように2回帳簿づけをするのが原則です。

ただ、実際にお店へ行ってその場で現金購入する場合などは、 取引の発生日と現金の支払い日が一緒のタイミングになるので、 発生主義でも2回帳簿づけする必要はありません。

現金主義による仕訳例

現金主義の場合、取引のタイミングは関係ありません。 実際にお金の動き(収入や支出)があった時だけ、帳簿づけします。

日付借方貸方摘要
20XX年5月20日消耗品費 80,000普通預金 80,000パソコン

同じ内容の取引でも、現金主義の場合はこれだけでOKです。 仕入れや、他の費用を支払った時でも同じように計上します。

白色申告でも青色申告でも、基本は発生主義

白色申告でも青色申告でも、基本的には「発生主義」で必要経費を帳簿づけする必要があります。 青色申告で55万円控除・65万円控除を受けるためには、もちろん発生主義で帳簿づけをする必要があります。
>> 売上はどのタイミングで計上する?実現主義と計上基準の種類

現金主義による記帳が認められるのは、青色申告で要件を満たした場合のみです。

白色申告青色申告
10万円控除
青色申告
10万円控除(現金式)
青色申告
55万円・65万円控除
発生主義発生主義現金主義発生主義
単式簿記単式簿記単式簿記複式簿記

>> 3種類の青色申告を比較- 簡易簿記・現金式簡易簿記・複式簿記
>> 単式簿記と複式簿記の違い

期中現金主義・期末発生主義

先ほどの例を見て「発生主義は面倒ダナ」と思った人も多いのではないでしょうか。 じつは、全ての取引を発生主義で帳簿づけしなくても大丈夫です。

個人事業の会計期間は、原則1月1日~12月31日です。 先ほどの例でいうと、経費を4月18日に計上しても、5月20日に計上しても、 どちらでもその年に経費が計上されることには変わりないわけです。

ということで、「期中(つまり年末年始の辺りをのぞいた期間)は現金主義で、 計上時点がその年の所得計算に影響する分だけ、発生主義で記帳しよう」という便利な記帳方法があります。 これは「期中現金主義・期末発生主義」などと呼ばれます。

この方法では、先ほどの例のような期中の取引は、現金主義の考え方で帳簿づけします。 しかし、例えば12月15日のカード取引は、翌月末日(つまり翌年の)引き落としになったりするので、 そのような期をまたぐ取引だけ、きっちり発生主義にもとづいて帳簿づけします。

期中現金主義・期末発生主義をさらにざっくり説明
個人事業の場合、だいたい1月分~10月分の取引は現金主義による記帳でOK。 クレジットカード払いだと「翌月引き落とし」や「翌々月引き落とし」というものが多いので、 11月あたりの取引からしっかりとチェックしよう。

また、1月・2月に銀行口座から引き落としされる金額には、前年11月分や12月分のカード取引によるものが含まれているので、こちらも発生主義の考え方にもとづいて入念にチェック。

白色申告はもちろん、青色申告で55万円控除・65万円控除を受ける場合も、 期をまたぐ取引だけ発生主義で計上できていれば問題ありません。

現金主義による所得計算の特例

「にしても発生主義はメンドクセー!どうしても現金主義で帳簿づけしたい!」という人には、 「現金主義で記帳してええよ」という特例が用意されています。 下記3つの要件を全て満たして許可を得れば、現金主義で帳簿づけをすることができます。 ただし、この場合は青色申告55万円控除・65万円控除が受けられません。10万円控除になります。

  • 青色申告であること
  • 小規模事業者であること(前々年の合計所得が300万円以下)
  • 期限内に届出を出していること

青色申告であること

白色申告では、現金主義による帳簿づけが認められていません。 現金主義で帳簿づけをするには、青色申告であることが要件のひとつです。

小規模事業者であること

小規模事業者とは、前々年分の所得が300万円以下である事業者のことです。 (収入 − 経費 = 所得) この場合の所得とは、不動産所得事業所得の合計所得です。 また、事業専従者給与(専従者控除)の額を必要経費に含めず、算出した金額です。

事前に届出を出していること

現金主義による所得計算の特例を受けることの届出書」を事前に税務署へ提出しておく必要があります。 A4サイズで、計2ページの申請書です。原則として、適用を受けようとする年の3月15日までに提出してください。 (その年の1月16日以後に新たに開業した場合には、開業した日から2ヶ月以内)

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