白色申告と青色申告の違い - 申告方法の徹底比較!
更新日 2022年9月14日

個人事業主が行う確定申告の方式は、白色申告と青色申告の2つに大別できます。どちらかの方法で税務署へ申告することになります。
白色申告と青色申告の比較
白色申告は1種類です。一方、青色申告を控除額で分けると、10万円・55万円・65万円の3種類です。その控除額に応じて、簿記や確定申告書類の要件が異なります。
白色申告と青色申告の比較表(主な違い)
白色申告 | 青色申告 10万円控除 |
青色申告 55万円控除 |
青色申告 65万円控除 |
|
---|---|---|---|---|
事前申請 | なし | 必要 | 必要 | 必要 |
簿記の種類 | 単式簿記 | 単式簿記 | 複式簿記 | 複式簿記 |
確定申告書類 | 収支内訳書 確定申告書 |
青色申告決算書* 確定申告書 |
青色申告決算書 確定申告書 |
青色申告決算書 確定申告書 |
電子申告 or 電子帳簿保存 |
不要 | 不要 | 不要 | 必要 |
特別控除額 | なし | 10万円 | 55万円 | 65万円 |
*4ページ目の貸借対照表は記入しなくてよい
事前申請
個人事業を開業してから、特に申請をしていなければ自動的に白色申告の扱いになります。 青色申告するには、事前に税務署へ申請書をだしておく必要があります。 >> 青色申告の申請期限
簿記の種類
白色申告と青色申告10万円控除なら、単式簿記(簡易な簿記)でOKです。
一方、青色申告で55万円・65万円の特別控除を受けるには、複式簿記(正規の簿記)による帳簿づけが必要です。
>> 単式簿記と複式簿記の違い
確定申告書類
白色申告の決算書としては「収支内訳書」を提出します。青色申告では「青色申告決算書」を提出します。
青色申告決算書は全4ページですが、10万円控除では最後のページの「貸借対照表」を記入する必要はありません。
確定申告書については、どの場合でも同じ書類を用います。
>> 個人事業の確定申告で提出する書類
電子申告 or 電子帳簿保存
青色申告65万円控除を受けるには「電子申告か電子帳簿保存」を行う必要があります。電子帳簿保存は要件が複雑で厳しく、個人事業主にはおすすめできません。65万円の控除を狙うなら、自宅等のパソコンからe-Taxで電子申告をしましょう。
特別控除額
白色申告には特典がありません。青色申告は、白色申告よりも手間をかけて会計業務を行う必要がある分、青色申告特別控除をはじめとした特典が用意されています。特別控除を適用してもらうことで、納める税金を減らすことができます。
申告方法別のメリット・デメリット
白色申告のメリットを一言でいうと「手間が少なくラクチン」ということになります。その代わりに、青色申告者に用意されている節税メリットを受けることができません。
白色申告のメリット・デメリット
白色申告のメリット | 白色申告のデメリット |
---|---|
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|
青色申告は、白色申告よりも手間がかかる分、節税につながる特典が用意されています。 こちらは「詳細まできっちり申告する分、節税できる」ということです。
青色申告のメリット・デメリット
青色申告のメリット | 青色申告のデメリット |
---|---|
- 赤字が繰り越せる(3年間) - 専従者への給与が経費にできる |
|
「節税するほどの所得もない。複式簿記による帳簿づけが面倒。あまり簿記に詳しくない。」という場合には白色申告。 「節税したい。ちょっと頑張って帳簿づけをしてみよう。専従者(家族従業員)への給与をしっかり経費にしたい。」などという場合には青色申告です。
申告方法の選択・変更について
先述のとおり、白色申告するのに特別な事前申請は不要です。一方、青色申告するには、定められた期限内に税務署へ申請書を提出する必要があります。この申請は一度だけ出せばよく、毎年申請を行う必要はありません。
白色申告 | 青色申告 |
---|---|
事前申請の必要なし | 税務署への事前申請が必要 |
白色申告から青色申告への切り替え
毎年白色申告をしていた個人事業主が、青色申告へ変更するためには「所得税の青色申告承認申請書」を税務署へ提出します。 >> 青色申告承認申請書の書き方
青色申告から白色申告への切り替え
青色申告から白色申告へ変更することもできます。この場合は「所得税の青色申告の取りやめ届出書」という届出書を税務署へ提出することになっています。
所得が高い人ほど青色申告を選択する
利益が多いほど青色申告による節税メリットが大きくなります。 そのため、所得が高い人ほど青色申告を選択する傾向にあります(収入 - 必要経費 = 所得)。

データ:申告所得税(2018年分)・2-2 所得階級別人員 - 東京国税局
このグラフは東京国税局(東京都・神奈川県・千葉県・山梨県)のデータに基づいて、筆者が作成したものです。管轄外の自治体データは、上図に含まれていません。あくまで「大体こういう傾向がありますよ」という話です。
白色申告と青色申告の所得税額を比較
個人事業主が会計業務の手間と引き換えに青色申告を選択するのは、節税が目的です。 仮に同じ金額の収入・必要経費だったとして、白色申告と青色申告(65万円控除)の場合の所得税額を比較してみましょう。
- 所得税の計算式
- 収入 − 必要経費 − 各種控除 = 課税所得金額
課税所得金額 × 税率 − 控除額 = 所得税額
(>> 所得税の計算方法に関する詳細)
所得税の速算表
課税所得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
195万円以下 | 5% | 0円 |
195万円を超え 330万円以下 | 10% | 97,500円 |
330万円を超え 695万円以下 | 20% | 427,500円 |
695万円を超え 900万円以下 | 23% | 636,000円 |
900万円を超え 1,800万円以下 | 33% | 1,536,000円 |
1,800万円を超え 4,000万円以下 | 40% | 2,796,000円 |
4,000万円超 | 45% | 4,796,000円 |
(平成27年分以降)
収入700万円 必要経費200万円 各種控除120万円(基礎控除48万円+その他控除72万円)
この場合で、先ほどの計算式に当てはめて所得税額を算出します。
白色申告の場合
700万 - 200万円 - 120万円 = 380万円
380万円 × 20% - 427,500円 = 332,500円(所得税額)
青色申告65万円控除の場合
700万 - 200万円- 65万円 - 120万円 = 315万円
315万円 × 10% - 97,500円 = 217,500円(所得税額)
この例では、白色申告の場合に納める所得税額は332,500円、 青色申告の場合に納める所得税額は217,500円となりました。 両者の差額は115,000円です。
332,500 - 217,500 = 115,000
つまり本例では、青色申告(65万円控除)であれば、所得税が115,000円節税できるということです。 このように、一定の所得が見込める個人事業主は、節税のために青色申告を選択します。
なお、平成25年から令和19年までは上記の所得税に加えて、 復興特別所得税(所得税の2.1%)も合わせて納めることになっています。 これは東日本大震災の復興財源を確保するための税金で、所得がある人は全員納付することになるものです。 今回は例示を簡略化するために省いています。(復興特別所得税を含めた計算方法の詳細はこちら)
【まとめ】白色申告と青色申告の違い
白色申告と青色申告の違いをかいつまんで言うと「白色申告は簡単だが節税メリットがない。青色申告は面倒だが節税メリットがある。」ということになります。
- 白色申告は1種類、青色申告は控除額で分けると3種類
- 3種類の青色申告特別控除額は「10万円・55万円・65万円」
- 青色申告の主なメリットは青色申告特別控除、赤字の繰り越しなど
- 所得が高い人ほど、節税メリットが大きくなるので青色申告を選ぶ
- 税務署へ申請することで、白色申告と青色申告の切り替えができる
ちなみに、昔は確定申告書類のカラーに応じて「白色申告・青色申告」と呼び分けていましたが、現在は用紙の色に違いはありません。
>> 白色申告するまでにやること - 簡単な帳簿づけ・領収証等の保存
>> 青色申告するまでにやること - 複式簿記・領収証等の保存
>> 複式簿記の知識なしで65万円控除を狙うには?