白色申告と青色申告の違いを徹底比較!個人事業主の確定申告

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更新日 2023年10月26日

白色申告と青色申告の違い

個人事業主やフリーランス向けに、白色申告と青色申告の違いをわかりやすく解説します。それぞれのメリット・デメリットを比較して、自分に合った申告方法を選びましょう。記事の後半では、白色と青色で「納税額にどれくらい差が出るか?」についても試算しています。

白色申告と青色申告の比較

個人事業主の確定申告方式は「白色申告」と「青色申告」に大別できます。さらに、青色申告は「青色申告特別控除」の金額に応じて3種類に分けられます。青色申告特別控除とは、青色申告者だけが受けられる節税特典です。

白色申告と青色申告の違い【比較表】

白色申告 青色申告
10万円控除
青色申告
55万円控除
青色申告
65万円控除
事前申請 なし 必要 必要 必要
簿記の種類 単式簿記 単式簿記 複式簿記 複式簿記
確定申告の
提出書類
収支内訳書
確定申告書
青色申告決算書*
確定申告書
青色申告決算書
確定申告書
青色申告決算書
確定申告書
電子申告
or
電子帳簿保存
不要 不要 不要 必要
特別控除額 なし 10万円 55万円 65万円

*4ページ目の貸借対照表は記入しなくてよい

それぞれの項目について、以下で詳しく解説します。

事前申請

個人事業を開業してから、特に申請をしていなければ自動的に白色申告になります。青色申告をするには、事前に税務署へ「青色申告承認申請書」を提出しておく必要があります。
>> 青色申告承認申請書の提出期限はいつまで?

簿記の種類

帳簿付けの方式には、大きく「単式簿記」と「複式簿記」の2種類があります。白色申告なら、簡単なほうの「単式簿記」でOKです。一方、青色申告で55万円・65万円の特別控除を受けるには、ちょっと複雑な「複式簿記」による帳簿づけが必要です。
>> 単式簿記と複式簿記の違いをくわしく!

確定申告の提出書類

白色申告者は、毎年の確定申告で「収支内訳書」と「確定申告書」を提出します。一方、青色申告者は「青色申告決算書」と「確定申告書」を提出します。なお、青色申告で10万円控除を狙う場合は、青色申告決算書の記入項目が少し減ります(貸借対照表の作成が不要になる)。ちなみに、確定申告書はどの場合でも同じものを用います。
>> 個人事業主が確定申告で提出する書類

電子申告 or 電子帳簿保存

青色申告で65万円控除を受けるには、電子申告か電子帳簿保存を行う必要があります。電子帳簿保存は要件が複雑で厳しいので、個人事業主にはおすすめできません。65万円の控除を狙うなら、パソコンやスマホから電子申告(e-Tax)をしましょう。

特別控除額

白色申告には節税特典がありません。青色申告は、白色申告よりも手間をかけて会計業務を行う必要がある分、青色申告特別控除をはじめとした特典が用意されています。特別控除を適用してもらうことで、納める税金を減らすことができます。

白色申告と青色申告のメリット・デメリット

白色申告のメリットは、一言でいうと「手間が少なくラクチン」ということです。その代わり、青色申告者に用意されている節税特典を受けることができません。

白色申告のメリット・デメリット

白色申告のメリット白色申告のデメリット
  • 事前申請の必要なし
  • 帳簿づけが簡単
  • 確定申告の提出書類がやや少なくなる
  • 青色申告に適用される特典なし

青色申告は、白色申告よりも手間がかかる分、節税につながる特典が用意されています。 こちらは「詳細まできっちり申告する分、節税できる」ということです。

青色申告のメリット・デメリット

青色申告のメリット青色申告のデメリット
  • 青色申告者への特典あり
- 青色申告特別控除(最高65万円)
- 赤字が繰り越せる(3年間)
- 専従者への給与が経費にできる
  • 事前申請の必要あり
  • 帳簿づけが面倒
  • 確定申告の提出書類がやや多くなる

>> 青色申告のメリット・デメリット詳細

「節税するほどの所得もない。複式簿記による帳簿づけが面倒。あまり簿記に詳しくない。」という場合には白色申告。 「節税したい。ちょっと頑張って帳簿づけをしてみよう。専従者(家族従業員)への給与をしっかり経費にしたい。」などという場合には青色申告です。

白色申告と青色申告の選択・変更について

先述のとおり、白色申告をするのに特別な事前申請は不要です。一方、青色申告をするには、定められた期限内に税務署へ「青色申告承認申請書」を提出する必要があります。この申請は一度だけ出せばよく、毎年提出する必要はありません。

白色申告青色申告
事前申請の必要なし税務署への事前申請が必要

白色申告から青色申告への切り替え

白色申告をしていた個人事業主が、青色申告へ変更するためには「所得税の青色申告承認申請書」を税務署へ提出します。 >> 青色申告承認申請書の書き方

青色申告から白色申告への切り替え

青色申告から白色申告へ変更することもできます。この場合は「所得税の青色申告の取りやめ届出書」という届出書を税務署へ提出することになっています。

所得が高い人ほど青色申告を選択する

利益が多いほど青色申告による節税メリットが大きくなります。 そのため、所得が高い人ほど青色申告を選択する傾向にあります(収入 - 必要経費 = 所得)。

所得別にみる白色申告者と青色申告者の割合

データ:申告所得税(2018年分)・2-2 所得階級別人員 - 東京国税局

このグラフは東京国税局(東京都・神奈川県・千葉県・山梨県)のデータに基づいて、筆者が作成したものです。管轄外の自治体データは、上図に含まれていません。あくまで「大体こういう傾向がありますよ」という話です。

白色申告と青色申告の所得税額を比較

個人事業主が会計業務の手間と引き換えに青色申告を選択するのは、節税が目的です。 仮に同じ金額の収入・必要経費だったとして、白色申告と青色申告(65万円控除)の場合の所得税額を比較してみましょう。

所得税の計算式
収入 − 必要経費 − 各種控除 = 課税所得金額
課税所得金額 × 税率 − 控除額 = 所得税額
(>> 所得税の計算方法に関する詳細

所得税の速算表

課税所得金額税率控除額
195万円以下5%0円
195万円を超え 330万円以下10%97,500円
330万円を超え 695万円以下20%427,500円
695万円を超え 900万円以下23%636,000円
900万円を超え 1,800万円以下33%1,536,000円
1,800万円を超え 4,000万円以下40%2,796,000円
4,000万円超45%4,796,000円

(平成27年分以降)

収入700万円 必要経費200万円 各種控除120万円(基礎控除48万円+その他控除72万円)
この場合で、先ほどの計算式に当てはめて所得税額を算出します。

白色申告の場合

700万 - 200万円 - 120万円 = 380万円
380万円 × 20% - 427,500円 = 332,500円(所得税額)

青色申告65万円控除の場合

700万 - 200万円- 65万円 - 120万円 = 315万円
315万円 × 10% - 97,500円 = 217,500円(所得税額)

この例では、白色申告の場合に納める所得税額は332,500円、 青色申告の場合に納める所得税額は217,500円となりました。 両者の差額は115,000円です。
332,500 - 217,500 = 115,000

つまり本例では、青色申告(65万円控除)であれば、所得税が115,000円節税できるということです。 このように、一定の所得が見込める個人事業主は、節税のために青色申告を選択します。

なお、平成25年から令和19年までは上記の所得税に加えて、 復興特別所得税(所得税の2.1%)も合わせて納めることになっています。 これは東日本大震災の復興財源を確保するための税金で、所得がある人は全員納付することになるものです。 今回は例示を簡略化するために省いています。(復興特別所得税を含めた計算方法の詳細はこちら

>> 白色申告と青色申告の納税額の違いをもっと詳しく

【まとめ】白色申告と青色申告の違い

白色申告と青色申告の違いをかいつまんで言うと「白色申告は簡単だが節税メリットがない。青色申告は面倒だが節税メリットがある。」ということになります。

  • 白色申告は1種類、青色申告は控除額で分けると3種類
  • 3種類の青色申告特別控除額は「10万円・55万円・65万円」
  • 青色申告の主なメリットは青色申告特別控除、赤字の繰り越しなど
  • 所得が高い人ほど、節税メリットが大きくなるので青色申告を選ぶ
  • 税務署へ申請することで、白色申告と青色申告の切り替えができる

ちなみに、昔は確定申告書類のカラーに応じて「白色申告・青色申告」と呼び分けていましたが、現在は用紙の色に違いはありません。

>> 白色申告するまでにやること - 簡単な帳簿づけ・領収証等の保存
>> 青色申告するまでにやること - 複式簿記・領収証等の保存
>> 複式簿記の知識なしで65万円控除を狙うには?