事業専従者とは?専従者の要件や確定申告での扱いなど

更新日 2024年7月16日

専従者とは

個人事業主は、生計をともにする親族に対して給料を払っても、原則的にはそれを経費計上することができません(所得税法第56条)。しかし、親族が「事業専従者」としての要件をみたせば、彼らへの給料を経費扱いすることが可能になります。

「事業専従者(じぎょうせんじゅうしゃ)」とは?

個人事業主であるあなたの仕事を手伝ってくれる家族・親族が「事業専従者」として認められるには、下記の要件をすべて満たす必要があります。

事業専従者として認められるための要件

  • その年の半分を超える期間、専ら従事している
  • 個人事業主と生計を一にする親族である
  • その年の12月31日時点で、満15才以上である

青色事業専従者給与と事業専従者控除 - 国税庁

大まかに言えば、一緒に暮らしている15才以上の親族が、年間6ヶ月を超えてあなたの事業に専念していれば、その家族は専従者として認められるということです。ただし、たとえばその親族が他でアルバイトをしており、その勤務のほうがメインになっている場合は「専ら従事している」という要件から外れてしまいます。

「その年の半分を超える期間」‐ 白色申告と青色申告の違い

個人事業主が白色申告者である場合、「6ヶ月」を超えて事業に専念している親族でなければ専従者として認められません。一方、青色申告者の場合は「従事可能と認められる期間の半分」を超えて専念している家族であれば、6ヶ月以下でも専従者として認められます。

専従者になると配偶者控除や扶養控除を受けられない

親族が専従者として給与を得たら、その親族については「配偶者控除」や「扶養控除」を受けられなくなってしまいます。大方のケースで専従者になったほうが得になりますが、給与をほとんど支給していない場合は損になることもあります。

>> 専従者控除・専従者給与と配偶者控除・扶養控除

「専ら従事」とは?

「もっぱら従事している」と言えるのは、一日の大半をあなたの事業に費やしている場合です。事業に費やす時間が少ないときは、専ら従事している期間には含まれません。したがって、以下のような人は基本的に専従者として認められません。

  • 学校に通っている人
  • 他に職業をもっている人
  • 老衰や障害により働ける状態でない人

ただ、働き方の実態によっては、例外的に専従者として認められる場合もあります。

学校に通っている人

学校に通っている親族は、基本的に専従者として認められません。ただし、事業の時間帯と学校の時間帯がうまくズレていれば、認められる場合もあります。たとえば昼間はあなたの事業に従事し、夜間に授業を受ける学生であれば専従者になれます。

他に職業をもっている人

他にアルバイトなどを行っている親族でも、あなたの事業のほうが明らかにメインである場合は「専ら従事している」と認められる可能性が高いです。アルバイトやパートが短時間勤務の場合や、個人事業に従事する妨げにならないと認められれば、専従者として扱えるということです。

老衰や障害により働ける状態でない人

老衰や心身の障害が原因で、あなたの事業に従事する能力が損なわれている人は専従者として認められません。怪我や病気によって一時的に働けない期間も同様です。もちろん、回復して能力が戻ったときは、再び専従者として扱うことができます。

「生計を一にする親族」とは

「生計を一にする」というのは、同じ財源で生活しているという意味です。個人事業主と同居していれば、ほとんどの場合でこれに当てはまります。別居していても、単身赴任や学業のための下宿など、同じ財源で生活している人は生計を一にしていることになります。

「親族」というのは、親戚を含めた家族のことです。正確には「配偶者・6親等以内の血族・3親等以内の姻族」を指します。血族は自分と血の繋がりがある人、姻族は自分や血族が結婚したことで親戚になった人のことです。

親族の具体例

夫、妻、息子、娘、父、母、孫息子、孫娘、祖父、祖母など

専従者について考える上では、親族の範囲を気にすべきケースは少ないはずです。むしろ重要なのは、生計を一にしているかどうかです。

たとえ雇ったのが親族であっても、生計を一にしていなければ通常の従業員と同じです。当然、支給した給料は「給料賃金」として必要経費に計上できます。一方、生計を一にするほどの関係であれば、大抵は親族に当てはまります(ただし事実婚は除く)。

専従者控除と専従者給与のちがい ‐ 白色申告者と青色申告者

専従者がいれば、白色申告者と青色申告者、いずれの事業主もそれぞれの方法で節税できます。白色申告者の場合は「専従者控除」を受けられ、収入から一定額が差し引かれます。青色申告者の場合、専従者への給料を「専従者給与」として経費計上できます。

専従者控除(白色申告者)専従者給与(青色申告者)
事前申請不要期限までに申請
節税方法一定額を事業主の収入から控除専従者への給与を経費計上

専従者給与が経費として認められるには、事前に「青色事業専従者給与に関する届出書」を税務署に提出しておく必要があります。提出期限は、原則として専従者給与を経費計上しようとする年の3月15日です。つまり、確定申告書を提出する前年ということです。

なお、白色申告者が専従者給与として経費計上したり、青色申告が専従者控除を受けたりすることはできません。

専従者のポイントまとめ

専従者として認められるために最も気をつけるべきは、専ら従事している期間です。特別な場合を除き、基本的には6ヶ月を超えている必要があります。青色申告者に限り、「その年に従事可能な期間の半分」を超えていればOKです。

専従者の要件をおさらい

  • その年の半分を超える期間「専ら従事」している
  • 個人事業主と「生計を一にする親族」である
  • その年の12月31日時点で「満15才以上」である

上記の要件をすべて満たした親族は、専従者として認められます。基本的に、学生や他に職業を持つ人は、専ら従事しているとは認められません。ただ、個人事業に費やす時間などが十分に多ければ、例外的に認められる場合もあります。

専従者の重要ポイント

  • 親族があなたの個人事業に専念していれば「専ら従事」に当てはまる
  • 同居していれば「生計を一にする」に当てはまる
  • 別居していても同じ財源で生活していれば「生計を一にする」に当てはまる
  • 白色申告者の親族が専従者なら「専従者控除」を受けられる
  • 青色申告者が専従者に支給した給料は「専従者給与」として経費にできる
  • 専従者は配偶者控除扶養控除の対象にならない

白色申告と青色申告とで、税務上の扱いが異なります。詳しくは「専従者控除」と「専従者給与」の記事を参考にしてください。

>> 専従者控除・専従者給与と配偶者控除・扶養控除
>> 白色申告の「専従者控除」について
>> 青色申告の「専従者給与」について