労災保険と雇用保険 - 個人事業の労働保険
更新日 2024年4月09日
労働保険とは? - 労災保険と雇用保険
個人事業でも、従業員を雇用すれば「労働保険」に加入します。 労働保険とは「労災保険」と「雇用保険」の総称です。 労働者(アルバイトやパートスタッフを含む)を一人でも雇えば、業種や事業規模を問わず、加入する必要があります。
労働保険 | |
---|---|
労災保険 | 雇用保険 |
通勤中や業務中のケガなどに備える保険 | 失業してしまった場合などに備える保険 |
労働保険は、労働者(従業員)のための保険です。 原則として、雇用者である事業主本人が、労働保険に加入することはできません。
一元適用事業と二元適用事業
労働保険(労災保険と雇用保険)には「一元適用事業」と「二元適用事業」があります。 労災保険と雇用保険をセットで申告・納付する事業を「一元適用事業」と呼びます。 そうではなく、労災保険と雇用保険を区別する必要がある事業を「二元適用事業」と呼びます。
一元適用事業 | 二元適用事業 |
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右記以外の事業 | 農林漁業や建設業など |
労災保険と雇用保険をセットで申告・納付する | 労災保険と雇用保険を別々で申告・納付する |
ほとんどの事業は、一元適用事業です(二元適用事業に当てはまらないのが、一元適用事業)。 労働保険の手続きは、いずれも保険関係が成立した日の翌日から10日以内に行うことになっています。
一元適用事業・二元適用事業、いずれの場合も、所轄の「労働基準監督署」と「公共事業安定所(通称 ハローワーク)」の両方に行って手続きを行います。
労働保険 手続きの順番
一元適用事業 | 二元適用事業 |
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1労働基準監督署 2ハローワーク |
・労働基準監督署 ・ハローワーク |
必ずこの順番でまわる | どちらが先でもよい |
労災保険
労働保険には「労災保険」と「雇用保険」があるのでした。 労災保険とは、従業員が業務中や通勤中に、ケガや死亡事故などがあった場合に備える保険です。 正式名称は「労働者災害補償保険」で、一般的には「労災保険」と呼ばれています。
労災保険には、必ず加入する必要があります。 アルバイトやパートと行った雇用形態を問わず、また数時間ほどの労働でもこちらは加入しなければなりません。 また、労災保険の保険料は、雇用側の個人事業主が全額を負担することになっています。 従業員が労災保険の保険料を負担する必要はありません。
労災保険の保険料率は、業種によって大きく異なります。 例えば、金属鉱業では8.8%と高い料率ですが、金融業や通信業などでは0.25%と低い料率です。 このように、事業の労災リスクに応じて、保険料率が定められています。
2024年度(令和6年度)の労災保険料率 - 各業種の料率例
事業の種類 | 労災保険料率 |
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金属鉱業、石灰鉱業など | 8.8% |
林業 | 5.2% |
食料品製造業 | 0.55% |
交通運輸事業 | 0.4% |
小売業、飲食業など | 0.3% |
通信業、出版業など | 0.25% |
金融業、不動産業など | 0.25% |
令和6年からは、一部の業種で保険料率が改定されています。 厚生労働省の資料では、保険料率の単位が分かりにくく表示されているので注意しましょう。
- 就業時や通勤時のケガや死亡事故に備えるのが「労災保険」
- ちょっとした雇用でも労災保険には加入しなければならない
- 労災保険料は、雇用側が全額を負担する
- 保険料率は業種によって大きく異なる
- 労災リスクの高い業種の保険料率は高く、金属鉱業では8.8%
雇用保険
雇用保険とは、労働者が病気や事故など、何らかのやむを得ない事情で失業してしまった場合に、 再就職するまでの一定期間、お金を受け取ることができる保険のことです。 一般的に「失業保険」と呼ばれているのは、雇用保険に含まれる基本手当のことを指します。
雇用保険の主な適用基準は「1週間の労働時間が20時間以上」かつ
「31日以上雇用の継続見込み」があるということ。このような従業員が1人以上いる場合に加入が必要となります。
正社員はもちろん、アルバイトやパートスタッフだけでも対象になります。
先に触れた「労災保険」は雇用側が全額負担でした。しかしこの雇用保険は、労働側と雇用側でそれぞれ一定割合の負担をします。 従業員からすれば、雇用保険料が給料から天引きされる形になります。
2024年度(令和6年度)の雇用保険料率
労働者 | 雇用者 | 合計 | |
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一般の事業 | 0.6% | 0.95% | 1.55% |
農林水業・清酒製造の事業 | 0.7% | 1.05% | 1.75% |
建設の事業 | 0.7% | 1.15% | 1.85% |
- 失業してしまった場合などに備えるのが「雇用保険」
- ちょっとした雇用なら、雇用保険に入らなくてよい場合もある
- 雇用保険料は、労働者と雇用者でそれぞれ一定割合を負担する
- 労働者の負担分は給与の支払い時に天引きする
労働保険料の計算方法
労働保険の保険料は、年度更新期間に概算で申告・納付することになっています。 原則として毎年6月1日〜7月10日が年度更新期間で、この期間に予定額を一括納付するのが基本です。
概算の保険料が総額40万円以上の場合は、納付を3回に分けて行うことができます。 (業務内容上、労災保険か雇用保険のどちらか一方のみの場合は、20万円以上)
年間給与の総額に、労働保険料率(労災保険料率+雇用保険料率)をかけて労働保険料を算出できます。 労災保険の料率と雇用保険の料率は、上述の通りです。
- 労働保険料の計算式
- 年間給与 × (労災保険料率+雇用保険料率) = 労働保険料
小売業で、従業員の年間給与が360万円(月給25万円×12ヶ月、夏季賞与30万円、冬季賞与30万円)の場合で計算してみましょう。労災保険料率は「0.3%」、雇用保険料率は「1.55%」とします。(料率はあくまで例です)
0.003(労災保険料率) + 0.0155(雇用保険料率) = 0.0185(労働保険料率)
360万円 × 0.0185 = 66,600円
この場合、66,600円を労働保険料として納付します。 さて、「労災保険料」は雇用側が全額負担するのでした。 一方、「雇用保険料」は雇用側と労働側が、それぞれ一定割合ずつ負担します。 雇用保険料率「1.55%」のうち、労働者負担を「0.6%」、雇用側負担を「0.95%」とすると、従業員側の負担分は下記のとおりです。
360万円 × 0.006 = 21,600円
66,600円のうち、この21,600円が従業員側の負担分です。
従業員側の負担分は、実際には給与支払いの都度、月給や賞与から少しずつ差し引くことになります。 (月給25万円 × 0.006 = 1,500円 賞与30万円 × 0.006 = 1,800円)
>> 個人事業で従業員を雇う時の手続きまとめ
>> 従業員の社会保険 - 健康保険と厚生年金
>> 個人事業主が従業員へ給与を払う時の源泉徴収について