個人事業で従業員を雇う時の手続きまとめ

個人事業で従業員を雇う時の手続き

初めて従業員を雇う個人事業主に向けて、必要な手続きの流れを説明します。作業は大きく分けて4ステップ。雇用を決定した後から始めても間に合います。ちなみに、家族を事業専従者(家族従業員)として雇う場合は、必要な手続きが異なります。

個人事業で従業員を雇う流れ

個人事業で初めて従業員を雇う際には、適切に雇用契約を結んだ上で、労働保険の手続きや、税務署への届け出が必要です。また、給与を支払う前に「源泉徴収」の準備もしておきましょう。以下のような4ステップで、作業を進めていきます。

個人事業で従業員を雇う時の手続きと必要書類

労働保険の加入手続きと税務署への届け出は、どちらを先に行っても問題ありません。ただし、労働保険の手続きは原則的に「雇用の翌日から10日以内」に行う必要があります。

なお、この記事では家族以外を従業員として雇う際の流れを説明します。事業専従者(家族従業員)の場合は、手続きなどの内容が異なります。

5人以上雇う場合は社会保険にも加入する

事業所の従業員数が5人以上になったら、原則として事業所全体で厚生年金と健康保険(健康保険組合)に加入しなくてはなりません。従業員数が4人以下なら、ひとまず気にしなくてOKです。事業主本人と事業専従者は人数にカウントしません。
>>従業員の社会保険について詳しくはこちら

ステップ① 労働条件の通知

事業主は、従業員と雇用契約を結ぶ際、契約の内容を適切に通知する義務があります。特に重要な項目については、書面で相互確認をしなくてはなりません。書式に決まりはありませんが、厚生労働省が公開している「労働条件通知書」を使えば漏れがないので安心です。

労働条件通知書

労働条件通知書 - 厚生労働省

なお、雇用契約に用いた書類をどこかへ提出する必要はありません。ただし、その従業員の退職から3年後までは保管しておく義務があります。

従業員が10人以下なら「就業規則」は不要

「就業規則」とは、いわば「職場独自のルールブック」のようなもの。10人以上の従業員を雇う場合は、労働基準監督署へ提出しなくてはなりません。とはいえ、トラブルを防止する効果もあるので、従業員が9人以下でも作成しておくと良いです。

ステップ② 労働保険の手続き

労働保険とは「雇用保険」と「労災保険」の総称です。基本的には、全ての従業員を両方の保険へ加入させなくてはなりません。初めて従業員を雇う際は、地域の労働基準監督署やハローワークに、以下4つの必要書類を提出します(一元適用事業の場合)。

提出先提出期限
保険関係成立届労働基準監督署雇用の翌日から10日以内
概算保険料申告書労働基準監督署
(銀行や労働局でもOK)
雇用の翌日から50日以内
雇用保険適用事業所設置届ハローワーク雇用の翌日から10日以内
雇用保険被保険者資格取得届雇用日の翌月10日まで

労働保険の成立手続 - 厚生労働省

「保険関係成立届」と「雇用保険適用事業所設置届」は、初めて従業員を雇う時にだけ提出するものです。「概算保険料申告書」と「雇用保険被保険者資格取得届」は、新しく従業員を雇うたびに提出します。

ちなみに、建設業や農林漁業は「二元適用事業」と呼ばれ、手続きの方法が異なります。二元適用事業の場合は、雇用保険と労災保険の「保険関係成立届」と「概算保険料申告書」を別々に作成し、ハローワークと労働基準監督署へそれぞれ提出しなくてはなりません。

労働保険の対象にならない場合

基本的にはすべての従業員が労働保険に加入しますが、対象外となるケースもあります。たとえば、1週間の労働時間が20時間未満、もしくは雇用期間が1ヶ月に満たない従業員などは雇用保険に加入できません。また一部の農林水産業では、雇用保険・労災保険ともに任意での加入となります。 >>労働保険について詳しくはこちら

ステップ③ 税務署への届け出

初めて従業員を雇う際は、税務署に「ウチはこれから従業員に給与を払いますよ」という届け出が必要です。この際に提出するのが「給与支払事務所等の開設届出書」。初めて従業員を雇った日から1ヶ月以内に、地域の税務署へ提出しましょう。

給与支払事務所等の開設届

給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書 - 国税庁

ちなみに、開業と同時に従業員を雇う場合は、開業届にその旨を記載しておけばOKです。その場合は、「給与支払事務所等の開設届出書」を提出する必要はありません。
>>開業届の書き方について詳しくはこちら

ステップ④ 源泉徴収の準備

事業主は、従業員の給与から税金を天引きして、従業員の代わりに税務署へ納付しなくてはなりません。これを「源泉徴収」と呼びます。従業員を雇ったら、正確な源泉徴収を行うために「給与所得者の扶養控除等申告書」を記入してもらいましょう。

給与所得者の扶養控除等申告書

給与所得者の扶養控除等(異動)申告書 - 国税庁

「給与所得者の扶養控除等申告書」は、毎年「その年の最初の給与を受ける前日」までに従業員から受け取り、保管しておきます。税務署などから提示を求められる場合を除き、どこかへ提出する必要はありません。

源泉徴収の手間を減らす申請

従業員の給与から源泉徴収をした税金は、原則として毎月納付しなくてはなりません。しかし「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」を提出すれば、年2回でまとめて納付できるようになります。必須ではありませんが、提出すれば納付の手間を減らすことができます。
>>源泉徴収について詳しくはこちら

まとめ - 手続きの必要書類一覧

個人事業で初めて従業員を雇う際は、以下のような流れで作業を進めます。労働保険の手続きと税務署への届け出はどちらを先に行ってもOKですが、労働保険は原則として「雇用の翌日から10日以内」の手続きが必要です。

個人事業で従業員を雇う時の事業主が行う4ステップ

上記の4ステップに従って作成する書類は以下のとおりです。提出が必要ない書類でも、保管期間が定められているので気をつけましょう。

必要書類提出期限
雇用契約労働条件通知書提出は基本的に不要
(従業員の退職から3年間保管)
労働保険の手続き保険関係成立届雇用日の翌日から10日以内
概算保険料申告書雇用日の翌日から50日以内
雇用保険適用事業所設置届雇用日の翌日から10日以内
雇用保険被保険者資格取得届雇用日の翌月10日まで
税務署への届出給与支払事務所等の開設届出書初めての雇用から1ヶ月以内
源泉徴収の準備給与所得者の扶養控除等申告書提出は基本的に不要
(翌年1月10日の翌日から7年間保管)

※労働保険の「一元適用事業」の場合

「保険関係成立届」「雇用保険適用事業所設置届」「給与支払事務所等の開設届出書」の3つは、初めて従業員を雇う時だけ提出します。その他の書類は、新たに従業員を雇うたびに作成が必要です。

ちなみに「法定三帳簿」を用いて、従業員の労務管理を適切に行うのも事業主の義務です。従業員を雇う際は、そちらも確認しておきましょう。
>>法定三帳簿について

なお、従業員を5人以上雇う場合は、原則として事業所単位で社会保険に加入しなくてはなりません。従業員が4人以下の場合でも、任意で加入ができます。必要に応じて、こちらも確認しておきましょう。
>>従業員の社会保険について