個人事業主の所得税 - 計算方法・税率・所得控除など
更新日 2024年9月06日
個人事業主にとって最も重要な税金が、所得税です。 収入から必要経費などを差し引いて、所得を算出します。個人事業が専業であれば、所得税はこの所得に課されます。
- 所得税の納付時期 - 3月15日までに納める
- 所得税の納付方法 - 5つの納付方法
- 所得税の計算方法
- 所得税の具体的な計算例
- 2037年までは復興特別所得税も合わせて納付する
- 所得税の仕訳・帳簿づけ例
- 個人事業主の所得税に関するまとめ
所得税の納付時期 - 3月15日までに納める
所得税は、確定申告期限日までに納付するのが原則です。確定申告期間は原則2月16日〜3月15日なので、3月15日までに納税しましょう。 期限日が土日祝日と重なる年は、翌平日に期限日がずれます。
2025年の納付期限日
2025年(令和7年)の納付期限日は3月17日(月)です。例年、銀行口座から振替納税をする場合には、4月中旬頃の振替になります。
所得税を納付するタイミングが最も遅くなるのは、この振替納税です。
振替納税に関する詳細については、以下のページをご覧ください。
>> 所得税と消費税の納付方法について
所得税の納付方法 - 5つの納付方法
確定申告書を作成するプロセスで、所得税を算出することになります。 納めるべき金額がわかったら、以下いずれかの方法で納税します。(計算方法は後述)
納付方法 | 納付の概要 |
---|---|
窓口納付 | 税務署や銀行で、納付書を添えて納付する 納付書は税務署や銀行に置いてある |
コンビニ納付 (QRコード) | 専用の納付書を用いてコンビニで納付する 納税額が30万円以下の場合のみ |
スマホアプリ納付 | 国税スマートフォン決済専用サイトから、スマホ決済アプリで納める PayPay・d払い・au PAYなどが利用可能 |
カード納付 | 国税 クレジットカードお支払サイトから、クレジットカード払いする 手数料が高いのが難点。1万円ごとに税込83円の手数料がかかる。 |
電子納税 | ネットバンキングで電子納税する 数種類の納付方法がある |
振替納税 | 指定の銀行口座から振替納税する 事前申請が必要。通常4月中旬の指定日に振替される |
コンビニ納付(QRコード)
まず自宅でQRコードを作成し、そのQRコードをコンビニへ持参します。コンビニに備えつけの端末を操作してQRコードを読み取ると、専用の納付書が印刷できます。 この納付書をコンビニのレジへ持っていき納付します。 自宅でQRコードを作成する方法 - 国税庁
カード納付
クレジットカードによる納付では、1万円ごとに税込83円の決済手数料がかかります。納付税額が多いほど、決済手数料も増えます。たとえば、10万円の所得税をカード払いすると、税込836円の決済手数料がかかります。カードのポイントが貯まるとしても、そうお得とは言えません。
所得税の計算方法
個人事業主の所得税は、以下の計算式で算出します。 課税所得金額とは「課税の対象になる所得金額」を指します。 そして、この課税所得金額に対応した税率をかけて、控除額と税額控除額を差し引いた額が所得税額になります。
- 所得税の計算式
- 収入 − 必要経費 − 各種控除 = 課税所得金額
課税所得金額 × 税率 − 控除額 − 税額控除額 = 所得税額
各種控除には、所得控除や青色申告特別控除、白色申告の事業専従者控除が当てはまります。課税所得金額がわかれば、あとは下表にその金額をあてはめることで、計算式に当てはめるべき「税率」と「控除額」がわかります。
所得税の速算表
課税所得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
195万円以下 | 5% | 0円 |
195万円を超え 330万円以下 | 10% | 97,500円 |
330万円を超え 695万円以下 | 20% | 427,500円 |
695万円を超え 900万円以下 | 23% | 636,000円 |
900万円を超え 1,800万円以下 | 33% | 1,536,000円 |
1,800万円を超え 4,000万円以下 | 40% | 2,796,000円 |
4,000万円超 | 45% | 4,796,000円 |
(平成27年分以降)
住宅借入金等特別控除(いわゆる住宅ローン控除)などの「税額控除」がある場合は、 さらに税額控除額も差し引いて、所得税額を算出します。
主な税額控除
- 住宅を購入した場合などの、いわゆる住宅ローン控除
- 株などで配当を得た場合などの、配当控除
所得税の具体的な計算例
たとえば、下記のケースで所得税の計算方法をみていきましょう。
収入600万円・必要経費200万円
基礎控除48万円・その他の控除37万円・青色申告特別控除65万円
該当する税額控除(住宅ローン控除など)無し
これを所得税の計算式に当てはめて、所得税額を算出してみます。
- 所得税の計算式
- 収入 − 必要経費 − 各種控除 = 課税所得金額
課税所得金額 × 税率 − 控除額 − 税額控除額 = 所得税額
600万円 − 200万円 − 48万円 − 37万円 − 65万円 = 250万円(課税所得金額)
250万円 × 10% = 25万円
25万円 − 97,500円(控除額)= 152,500円(所得税額)
この例の場合、所得税の金額が15万2,500円です。 後述の通り、この所得税に復興特別所得税を加算して税額を算出します。
課税所得金額に応じて、下表のとおり税率と控除額が決まります。 上の例では、計算をして課税所得金額が250万円(195万円を超え 330万円以下)になりました。 下表に当てはめると、税率10%・控除額97,500円ということがわかります。
今回の例では太字部分を参照
課税所得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
195万円以下 | 5% | 0円 |
195万円を超え 330万円以下 | 10% | 97,500円 |
330万円を超え 695万円以下 | 20% | 427,500円 |
695万円を超え 900万円以下 | 23% | 636,000円 |
900万円を超え 1,800万円以下 | 33% | 1,536,000円 |
1,800万円を超え 4,000万円以下 | 40% | 2,796,000円 |
4,000万円超 | 45% | 4,796,000円 |
(平成27年分以降)
たとえば、課税所得が320万円から340万円に上がると税率が10%増えるわけですが、 控除額も増えるので、税率の境界ラインで実質的な負担が大きく変わるということはありません。
2037年までは復興特別所得税も合わせて納付する
2013年から2037年までの各年分の確定申告においては、所得税に加えて「復興特別所得税(原則としてその年分の基準所得税額の2.1%)」をあわせて納付することになっています。 この復興特別所得税は、東日本大震災の復興財源を確保するための税金です。
先ほどの例の場合、 「基準所得税額」となる152,500円に2.1%をかけて復興特別所得税を算出します。 152,500 × 0.021 = 3,202.5円(1円未満の端数が出る場合は、端数を切り捨てる。)
この場合、3,202円が復興特別所得税額ということです。 所得税に加えて、この復興特別所得税もあわせて納税します。
つまり、152,500円 + 3,202円 = 155,702円
155,702円が「所得税+復興特別所得税」の税額となります。
ここから、あらかじめ取引先の企業などから源泉徴収された金額や、予定納税として事前に納めた所得税などを差し引いて、実際に納付する金額(あるいは還付される金額)を算出します。
あらかじめ源泉徴収された金額や、予定納税として納付した金額などがない場合は、
「155,700円」が、実際に納める税金の金額ということになります。
(>> 確定金額の100円未満は切り捨て)
所得税の仕訳・帳簿づけ例
所得税は、事業主個人に課せられる税金なので、税金を納めても帳簿づけする必要はありません。 事業主個人にかかる税金は、「租税公課」として経費計上することはできません。
事業用の銀行口座から所得税を振替納付をした場合などで、納付した所得税を帳簿づけする際には「事業主貸」で処理しておきましょう。
事業用の銀行口座から所得税を振替納付した場合の仕訳例
日付 | 借方 | 貸方 | 摘要 |
---|---|---|---|
20XX年4月21日 | 事業主貸 100,000 | 預金 100,000 | 所得税納付 |
所得税は事業主個人の私的な支出ということで、帳簿につけたければ上記のように「事業主貸」という勘定科目で仕訳しておけばOKです。 一方、個人事業税など、事業に課せられる税金は「租税公課」の勘定科目で経費として仕訳します。
>> 租税公課?事業主貸? 個人事業主が納付する税金の仕訳について
個人事業主の所得税に関するまとめ
所得税は、ほとんどの個人事業主にとって最も大きな税金となります。個人事業主にとって主要な4つの税金、所得税・消費税・住民税・個人事業税の中でも、最も重要度が高い税金と言えます。
個人事業主の所得税に関するポイントまとめ
- 所得税の納付期限日は確定申告の期限日と同じで、基本は3月15日
- 振替納付を事前申請しておけば、4月中旬頃に振替される
- 納付方法には、窓口納付やクレカ納付、振替納税など、様々な方法がある
- ざっくり言うと、収入から経費などを差し引いた「利益」に税率をかけて算出する
- 税率は5%~45%で、「利益」が多いほど税率が高くなる
- 所得税は事業主個人にかかる税金なので、納付しても帳簿につける必要はない
- もし所得税の納付を記帳したければ「事業主貸」の勘定科目で仕訳すればOK
事業主が自分で確定申告をする場合、確定申告書を記入欄を埋めていく過程で、自らの所得税額を計算することになります。 個人事業用の会計ソフトを使えば、この計算はソフトが自動で行ってくれるので、確定申告に慣れていない方には、会計ソフトの利用をおすすめします。
>> 個人事業用の会計ソフト一覧
>> 個人事業主の税金まとめ - 主な税金の納付時期や計算方法など
>> 納付した税金の仕訳方法について