消費税の簡易課税制度とは?条件・デメリット・本則課税との違いなど
更新日 2026年9月08日

簡易課税制度とは、事業区分ごとの「みなし仕入率」を使って、消費税の納付額を計算する制度です。利用条件やメリット・デメリット、必要な届出について解説します。
消費税の簡易課税制度とは?
お客さんから受け取った消費税は、全額を税務署に納めるわけではありません。1年間に受け取った消費税から「仕入税額控除」を差し引いて納めます。簡易課税制度を利用する場合は、この「仕入税額控除」の考え方が通常(本則課税)と異なります。
仕入税額控除の考え方
| 本則課税 | 1年間に払った消費税の合計 = 仕入税額控除 |
|---|---|
| 簡易課税制度 | 1年間に受け取った消費税の合計 × みなし仕入率 = 仕入税額控除 |
※ あくまで基本的な考え方です
要するに、簡易課税制度では下記のように消費税の納付額を計算するわけです。
- 簡易課税制度の計算方法【納付する消費税額】
- 1年間に受け取った消費税 -(1年間に受け取った消費税 × みなし仕入率)= 納付する消費税額
簡易課税制度で使われる「みなし仕入率」は、事業区分によって異なります。
みなし仕入率の事業区分【一覧】
| 主な事業 | みなし仕入率 | |
|---|---|---|
| 第1種 | 卸売業 | 90% |
| 第2種 | 小売業、農家や漁業者による食品の販売など | 80% |
| 第3種 | 製造業、建設業、農業、漁業など | 70% |
| 第4種 | 飲食店業など | 60% |
| 第5種 | サービス業、運輸通信業、金融業など | 50% |
| 第6種 | 不動産業 | 40% |
たとえば、1年間に受け取った消費税が100万円のとき、みなし仕入率が60%だったら、仕入れや経費にかかった消費税は「60万円」とみなします。この場合は、差額の40万円を納付することになります。
簡易課税制度を利用できる条件
個人事業主が簡易課税制度を利用するには、次の2つの条件を満たす必要があります。
- 前々年の課税売上高が5,000万円以下である
- 所定の届出書を期限までに提出している
条件① 前々年の課税売上高が5,000万円以下
個人事業主の場合、簡易課税制度を利用できるのは、前々年の課税売上高が5,000万円以下の人だけです。課税売上とは、簡単に言うと「消費税がかかる取引の売上」のことです。住宅の貸付けなどを除けば、たいていの売上は「課税売上」に含まれます。
条件② 所定の届出書を提出している
簡易課税制度を利用するには、税務署に「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出する必要があります。基本的に、年末までに提出すれば、その翌年分から簡易課税制度を利用できます。たとえば、2026年のうちに提出すれば、2027年分の消費税申告から利用できるわけです。
簡易課税制度のメリット
- 消費税の計算にかかる手間を減らせる
- 本則課税より納付税額が少なくなる場合がある
メリット① 消費税の計算が簡単になる
本則課税では、仕入れや経費にかかった消費税を集計する必要があります。一方、簡易課税では、売上にかかる消費税とみなし仕入率だけで納付額を計算できるので、消費税申告にかかる負担を少し軽減できます。
メリット② 節税できる場合がある
「実際に支払った消費税」よりも「みなし仕入率から計算した仕入控除税額」が多ければ、本則課税より納付税額が少なくなります。たとえば、仕入れや経費が少ないITフリーランスなどは、簡易課税のほうが有利になる場合が多いです。
簡易課税制度のデメリット
- 原則として2年間はやめられない
- 納付額が高くなる場合もある
- 消費税の還付を受けられない
- 複数区分の売上があると記帳が面倒
デメリット① 原則として2年間はやめられない
簡易課税制度は、原則として2年間は利用し続ける必要があります。後述するようなデメリットが生じる場合でも、すぐに本則課税に変えることはできないので注意しましょう。
デメリット② 納付額が高くなる場合もある
先述のメリットとは反対に、「みなし仕入率から計算した仕入控除税額」よりも「実際に支払った消費税」が多い場合は、本則課税より納付税額が高くなります。仕入れや経費で多額の消費税を払っている場合は、本則課税のほうが節税できる可能性もあるわけです。
デメリット③ 消費税の還付を受けられない
本則課税では「支払った消費税」が「受け取った消費税」を上回ると、差額を還付してもらえます。しかし、簡易課税制度では実際に支払った消費税額が計算に反映されないので、同様の還付を受けられません。高額な設備投資などを予定している場合は要注意です。
デメリット④ 複数区分の売上があると記帳が面倒
複数の事業区分に該当する売上がある場合は、売上を区分ごとに分けて記帳する必要があります。取引のたびに区分を判断しなければならないため、帳簿付けが少し複雑になります。たとえば、美容院でシャンプーを販売している場合などが該当します(施術と商品の売上は区分が異なる)。
本則課税・簡易課税・2割特例の違い
消費税の納付額には、主に次の3つの計算方法があります。
| 対象者 | 納付税額の求め方 | |
|---|---|---|
| 本則課税 | すべての課税事業者 | 売上にかかる消費税 - 仕入れや経費にかかる消費税 |
| 簡易課税 | 前々年の売上が 5千万円以下の事業者など | 売上にかかる消費税 -(売上にかかる消費税 × みなし仕入率) |
| 2割特例 | インボイス登録で 課税事業者になった人 | 売上にかかる消費税 × 20% |
「2割特例」は、インボイス制度の導入に伴って設けられた経過措置です。簡単に言うと、インボイス制度に対応するために課税事業者になった、という人が利用できます。(ちなみに、2027年分からは「3割特例」に変わります)
「簡易課税」と「2割特例」を両方とも利用できる場合は、申告時に有利な方法を選択できます。第3種~第6種事業は2割特例のほうが納付額を抑えられます。
簡易課税制度選択届出書の提出期限
| 開業した年から利用する場合 | 開業2年目以降から利用する場合 |
|---|---|
| 開業した年の12月31日まで | 利用したい年分の 前年の12月31日まで |
たとえば、2026年に開業して、最初から簡易課税を利用したい場合は、2026年12月31日までに届出書を提出すればOKです。この場合、2027年に行う「2026年分」の消費税申告から簡易課税制度を利用できます。
一方、開業2年目以降は期限が早いので注意しましょう。たとえば、2028年に行う「2027年分」の消費税申告で簡易課税を利用したい場合は、2026年12月31日までに届出書を出す必要があります。
2割特例から簡易課税へ移行する場合には提出期限の特例があります。たとえば、2026年分に2割特例を利用し、2027年分から簡易課税へ移行する場合は、2027年分の消費税申告期限までに届出書を出せば、2027年分から簡易課税を利用できます。
簡易課税制度の届出書は、次のいずれかの方法で提出できます。
消費税簡易課税制度選択届出書の提出方法
- e-Taxで提出する
- 管轄の税務署へ郵送する
- 管轄の税務署の窓口へ提出する
届出書の様式は国税庁のWebサイトからダウンロードできます。なお、提出時に手数料などはかかりません。
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