納付する消費税の計算方法 - 「課税売上割合」とは?

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更新日 2020年5月28日

消費税の計算方法

消費税計算の選択肢

消費税の課税事業者には、まず「簡易課税制度」を適用するかどうかの選択肢があります。これを適用すると消費税の計算がカンタンになります。

消費税計算の選択肢

適用しない場合には、基本的に「受け取った消費税 − 支払った消費税 = 納付する消費税」という計算になります。(>> 個人事業の消費税に関する基本についてはこちら

まずは「簡易課税制度」を適用するかどうか

消費税の課税事業者には、まず「簡易課税制度」を選択するかどうか、という選択肢が第一にあります。 簡易課税制度とは、中小事業者のための簡単な納税方法です。以下2つの要件を両方満たせば、簡易課税制度を適用できます。 一度選択すると最低2年間は適用する必要があります。

  • 前々年の課税売上高が5,000万円以下
  • 課税期間の開始日の前日までに「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出

簡易課税制度は、消費税の計算がカンタンになるというメリットがあります。 しかし「みなし仕入率」によって「この業種ならこのぐらいダヨネ」という大雑把な計算になるので、 実際の納税額は事業者によって有利になる場合もあれば、不利になる場合もあります。
>> 簡易課税制度のメリットとデメリットについて

簡易課税制度での最も基本的な計算式
預かった消費税 - (預かった消費税 × みなし仕入率)= 納付する消費税

簡易課税制度では、仕入れや経費で消費税をいくら払ったかは考慮しません。 業種に応じて、以下の「みなし仕入率」を当てはめて計算します。 複数の業種を運営している場合には、計算が少し複雑になります。 >> 簡易課税制度の計算方法について

業種みなし仕入れ率
第一種事業(卸売業)90%
第二種事業(小売業)80%
第三種事業(製造業等)70%
第四種事業(その他の事業)60%
第五種事業(サービス業等)50%
第六種事業(不動産業)50%

「課税売上割合」とは?

簡易課税制度を選択しない場合には、「受け取った消費税」から「支払った消費税」を差し引いて計算する方法になります。 つまり、売上の消費税から仕入れなどの消費税を差し引いて、納めるわけです。これが通常の方法で「原則課税方式」と呼びます。 この方式のなかでも「課税売上割合」に応じて、選択できる計算方法が異なります。

消費税計算の選択肢

「課税売上割合」とは、売上全体のなかで「消費税が課税された売上」の割合を表すものです。 非課税取引の売上が少なければ、課税売上割合は高くなります。非課税取引とは、課税対象になじまない取引のことを指します。 >> 非課税となる取引 - 国税庁

課税売上割合のもとめ方を簡単に表すと「課税売上/総売上」ですが、分解すると下記のように表わせます。

課税売上割合の計算方法

厳密にいうと「免税取引」も課税取引なのですが、納税しなくてよい(0%課税の)取引です。 少し細かな要件もあるので、気になる方は国税庁の記述も参考にして下さい。>> 課税売上割合の計算方法 - 国税庁

課税売上割合を計算式で表すと
(課税売上+免税売上)÷(課税売上+免税売上+非課税売上)= 課税売上割合
※ 課税売上 = 税抜きの金額

ご覧のとおり、「不課税売上」はこの計算式に登場しません。 つまり、売上を「課税・免税・非課税・不課税」のどの取引として区分するかによって、この課税売上割合の値が変わります。 ですので、一概に課税されない取引とはいっても、「免税・非課税・不課税」の取引もきちんと区別しておくことが重要と言えます。 >> 課税・免税・非課税・不課税の違い

課税売上割合が95%以上の場合

「課税売上割合」が95%以上の場合は、課税仕入の全額を控除できます。 仕入れや経費として支払った消費税を、全額差し引くことができるわけです。

この場合は単純に「受け取った消費税 − 支払った消費税 = 納付する消費税」と言い換えることもできます。

課税売上割合が95%以上の場合の計算
課税売上の消費税 − 課税仕入れ等の消費税(全額OK) = 納付する消費税

ちなみに、この場合「課税売上高が5億円以下であること」という要件もあります。 「課税売上割合」が95%未満の場合には、2種類の選択肢があります。「個別対応方式」と「一括比例配分方式」です。

  • 課税売上割合が95%以上 → 課税仕入れの全額を控除できる
  • 課税売上割合が95%未満 → 個別対応方式 or 一括比例配分方式

課税売上割合が95%未満の場合

「個別対応方式」と「一括比例配分方式」では、仕入れなどに関わる消費税額(仕入れ控除税額)の計算方法が異なります。 順番に見ていきましょう。

個別対応方式

この方式で計算するには、 仕入れに関わる消費税額を以下の3つに分類できることが前提です。

  • A「課税売上をあげるためだけの仕入れ」にかかる消費税
  • B「非課税売上をあげるためだけの仕入れ」にかかる消費税
  • C「課税売上と非課税売上をあげるために共通する仕入れ」にかかる消費税

大体の場合においてこちらが税制上有利になります。 しかし、上記のような分類ができているという前提があり、なおかつ計算が面倒になるというデメリットがあります。

個別対応方式での消費税計算式
A + (C × 課税売上割合) = 仕入れ控除税額
預かった消費税額 − 仕入れ控除税額 = 納付する消費税額

一括比例配分方式

上の「A・B・C」のように区分できない場合、 または、区分できるが「こっちがイイ!」という場合は一括比例配分方式を採用します。 この場合、仕入控除税額は以下のように算出します。

一括比例配分方式での消費税計算式
課税仕入れ等にかかわる消費税 × 課税売上割合 = 仕入れ控除税額
預かった消費税額 − 仕入れ控除税額 = 納付する消費税額

こちらの方がシンプルです。ただし、一括比例配分方式を一度選択すると最低2年間は継続しないといけません。

>> 課税・免税・非課税・不課税の違い
>> 簡易課税制度のメリット・デメリットなど
>> 必要経費の消費税区分一覧