租税公課とは?個人事業の確定申告で扱う「租税公課」

更新日 2024年7月31日

租税公課とは

個人事業主の確定申告書類に記載のある必要経費の科目「租税公課」についてまとめました。読み方は「そぜいこうか」です。 まずは、広い意味での「租税公課」から理解していきましょう。

租税公課とは?

租税公課とは、簡単に言えば「税金や公の負担金のこと」を指します。これが広い意味での租税公課です。 言葉の意味を詳しくみると「租税公課」は下記のように分別できます。

  • 租税 → 国税や地方税として納める税金
  • 公課 → 租税以外の賦課金(ふかきん)や罰金などで課せられる公の金銭負担

これらをあわせて「租税公課」と呼びます。「賦課金(ふかきん)」とは、税金などのように、割り当てられて負担するお金のことです。

個人事業における「租税公課」

個人事業においては、納付した税金のなかでも必要経費として扱えるものを「租税公課」という勘定科目で記帳します。白色申告なら「収支内訳書」、青色申告なら「青色申告決算書」に「租税公課」という経費の項目があります。

個人事業で「租税公課」として経費にできる税金と仕訳例

租税公課として経費にできる税金の例

  • 個人事業税
  • 固定資産税
  • 不動産取得税
  • 自動車税
  • 登録免許税
  • 印紙税
  • 商工会議所や同業者組合などの会費や組合費

上記の税金は「租税公課」として、経費に計上できます。 固定資産税や自動車税・不動産取得税などは、事業用途のものに限ります。 事業用と個人用で併用しているものにかかる税金は、その利用割合で按分するのを忘れないようにしましょう。

複式簿記での仕訳例

1. 個人事業税10万円を現金で納付した場合

日付借方貸方摘要
20XX年8月20日租税公課 100,000現金 100,000個人事業税

2. 自動車税45,000円を事業用口座から支払った場合
この自動車は仕事で60%・プライベートで40%使っているとする。
45,000 × 0.6 = 27,000円 45,000円 × 0.4 = 18,000円

日付借方貸方摘要
20XX年5月31日租税公課 27,000預金 45,000自動車税
家事按分40%
事業主貸 18,000

上記は複合仕訳での記帳例です。 会計ソフトの仕様などで複合仕訳ができない場合、下記のように2つに分けて仕訳しても構いません。

日付借方貸方摘要
20XX年5月31日租税公課 45,000預金 45,000自動車税
事業主貸 18,000租税公課 18,000自動車税 家事按分40%

どちらにしても、自動車税として納めた金額のうち、60%にあたる27,000円を経費に計上し、 残り40%にあたる18,000円はプライベートな出費として処理したことになります。

個人事業で「租税公課」として経費にできない税金と仕訳例

租税公課として経費にできない税金の例

  • 所得税
  • 住民税
  • 相続税
  • 国税の延滞税・加算税など
  • 地方税の延滞金・加算金など
  • 交通違反での罰金など

上に挙げた所得税・住民税などは、 事業主個人にかかる税金であり、租税公課として経費計上することはできません。 また罰金や延滞税など、罰則的な意味合いの税金も経費計上できません。

租税公課として経費計上できない税金について記帳する場合は、 「事業主貸」の勘定科目で処理すればOKです。 こうすれば、単にプライベートな支出があったということになり、経費にはカウントされません。

複式簿記での仕訳例

所得税10万円を事業用の口座から振替納付した場合

日付借方貸方摘要
20XX年4月21日事業主貸 100,000預金 100,000所得税

個人事業主が税金を納付した際の仕訳・勘定科目については、下記ページに情報をまとめています。 >> 個人事業主が納付する税金の仕訳・勘定科目について

印紙税の消費税区分について

租税公課の科目で記帳する際の消費税区分は「不課税」です。 ただし、郵便局で印紙を買う場合でも、買った時点では「非課税」となります。また、金券ショップなどで収入印紙や証紙を買う場合には「課税」です。

印紙などを郵便局で購入した場合印紙などを金券ショップで購入した場合
消費税区分は「非課税」消費税区分は「課税」

ちなみに、コンビニで収入印紙を買う場合は、郵便局で購入する場合と同様「非課税」となります。 消費税が非課税となるのは「郵便局、郵便切手類販売所又は印紙売りさばき所」から印紙などを買った場合で、コンビニはこれに該当するからです。金券ショップは該当しません。

ここで、印紙を買った場合の「非課税」「不課税」について理解を深めておきましょう。 厳密に言うと、収入印紙を郵便局から購入した時点では「非課税」取引です。 「日本郵便株式会社などが行う郵便切手類の譲渡、印紙の売渡し場所における印紙の譲渡及び地方公共団体などが行う証紙の譲渡」 は、非課税となる取引に規定されているからです。
>> 非課税となる取引 - 国税庁

印紙税というのは、貼り付けて消印を押した時点でようやく納付したことになります。 印紙を購入しただけでは納税したことになりません。 なので、買った収入印紙を領収書にペタッと貼り付ける行為をもって、印紙税を納付したことになります。 税金の納付は「不課税」なので、貼り付けた時点ではじめて「不課税」になるのです。

複式簿記での仕訳例

「郵便局で200円の収入印紙を現金購入した。後日、その印紙を領収書に貼り付けて使用した。」 これを厳密に表すと以下のようになります。

借方貸方
購入した時点 →租税公課(非課税) 200現金 200
貼り付けた時点 →租税公課(不課税) 200租税公課(非課税) 200

ややこしいな、と感じると思います。 事実上はこのような経緯を経て収入印紙は「非課税」から「不課税」となるのですが、 実務では収入印紙を買った時点で消費税区分を「不課税」にしておいて構いません↓

借方貸方
購入した時点 →租税公課(不課税) 200現金 200

消費税は経理方式によって仕訳の仕方が異なる

事業で納付する「消費税」は租税公課として処理できるのでしょうか? 消費税については「税込経理方式」をとるか「税抜経理方式」をとるかによって、仕訳が異なります。

税込経理方式税抜経理方式
売上高や仕入高に消費税を含めて記帳する方法売上高や仕入高に消費税を含めずに記帳する方法
「租税公課」で経費計上する「未払消費税」で処理する

個人事業主の場合、そもそも消費税を納めなくてもよい免税事業者も多くいます。(開業してから2年間は免税、あるいは前々年の課税売上高が1,000万円以下でも免税。 ただし、前年の上半期だけで課税売上高1,000万を超え、なおかつ、この期間の給与等の支払い金額も1,000万円を超えた場合には、課税事業者となる。)

免税事業者の場合は、税務署へ消費税を納めなくてよいので、ここで述べたことを気にする必要はありません。(免税事業者は税込経理方式を採用します。会計ソフトのデフォルトは、そうなっているはずです。)

消費税を納付する場合の仕訳については、下記のトピックを参考にして下さい。
>> 消費税の仕訳について

租税公課として経費にはできないが、控除対象となる税金もある

国民健康保険国民年金も事業主個人にかかる税金であり、租税公課として経費にはできません。 これらを帳簿づけする場合も、所得税や住民税の処理と同じように「事業主貸」の科目で仕訳しておきます。

ただ、国民健康保険や国民年金として納めた保険料は、必要経費にできない代わりに、社会保険料控除の対象になります(所得税と住民税は、控除対象になりません)。 確定申告で提出する書類に社会保険料控除の欄があるので、そこに1年間で支払った総額を記入します。社会保険料は、支払った全額が控除対象になります。

所得税の計算式
収入 − 必要経費 − 各種控除 = 課税所得金額
課税所得金額 × 税率 − 控除額 − 税額控除額 = 所得税額

赤色で示している「各種控除」の部分に、社会保険料控除が入ります。 課税所得はこのように算出されるので、控除額が多いほど節税になります。
>> 所得控除一覧はこちら

>> 個人事業で使う必要経費の種類一覧
>> 個人事業主が納付する税金の仕訳方法
>> 個人事業主の節税方法まとめ