家事按分とは?按分の基準や仕訳方法について
更新日 2024年7月29日
- 個人事業での経費の按分について
- 按分の基準は、客観的かつ合理的に説明できる必要あり
- 地代家賃でみる按分の方法
- 地代家賃の仕訳例① - 家賃を家事按分する場合の記帳方法
- 地代家賃の仕訳例② - まとめて家事按分する場合の記帳方法
- 按分のポイントまとめ
個人事業での経費の按分について
按分とは、基準とする割合で数量を分けることです。個人事業主が帳簿付けで行う按分は、「事業に必要な支出と、事業とは関係ない個人的な支出」の分割という意味で用いられます。 支出のうちの何割を事業用(経費)とし、何割を家庭用とするかの分割を行うことが「按分」です。 これを「按分(あんぶん)」もしくは「家事按分(かじあんぶん)」といいます。
例えば、個人事業主の多くは自宅と事務所を兼ねています。 オフィスと自宅が法人のように分かれておらず、自宅のスペースでそのまま仕事をするスタイルですね。
この場合「自宅兼事務所で発生する水道光熱費・通信費・家賃などは経費にできるの?」という疑問が出てきます。 このような時に按分を用いて、経費計上する部分と経費にしない部分を区別します。
按分の基準は、客観的かつ合理的に説明できる必要あり
例えば、自宅兼事務所の家賃が10万円の場合。 このような場合、1日に占める仕事時間や作業スペースの専有面積などをもとに、 事業用と個人用に家賃の支出を按分します。
事業用と個人用の比率を「事業用3:個人用7」とすれば、 家賃10万円のうち3万円を「地代家賃」として経費にします。 7万円分は事業主の生活のための分なので、経費にできません。 7万円は個人的な出費として「事業主貸」の勘定科目で仕訳します。
按分の基準は、客観的かつ合理的に説明できる必要があります。 按分に正式なルールはありませんが、税務調査官に按分の根拠を尋ねられた時に、 納得してもらえるような合理的な理由を用意しておく必要があります。 後に税務調査が入った場合に備えて、客観的に第三者が納得できる按分の基準を用意しておきましょう。
地代家賃でみる按分の方法
例えば仕事部屋、あるいは仕事スペースの床面積が、 自宅全体の床面積のうちの何割を占めるのか、あらかじめ計算しておきます。 可能であれば、間取り図などを使って面積の割合を算出しておきましょう。
仕事スペースが30%、生活スペースが70%の場合は、 家賃の30%を「地代家賃」として経費計上します。残りの70%は「事業主貸」として計上します。
専有面積があいまいな場合は、時間をもとに按分します。 たとえば、ひと月辺りの営業時間や作業時間などを基準にします。 なるべく明確な根拠をもとに按分の割合を定めておきましょう。
通信費や水道光熱費に関しても、同じように客観的かつ合理的で、 誰でも納得できるような基準をもって按分します。
地代家賃の仕訳例 - 家賃を家事按分する場合の記帳方法
先ほどの例でみてみましょう。 家賃が10万円で、仕事スペースとして30%、生活スペースが70%の場合。 家賃を毎月事業用の口座から振替している場合は、以下のように仕訳します。
日付 | 借方 | 貸方 | 摘要 |
---|---|---|---|
20XX年7月25日 | 地代家賃 30,000 | 普通預金 100,000 | 自宅兼事務所の家賃 |
事業主貸 70,000 |
これは複合仕訳の場合の仕訳方法ですが、 会計ソフトの仕様上、単一仕訳しかできない場合もあります。 諸口を用いて単一仕訳をすると以下のようになります。
日付 | 借方 | 貸方 | 摘要 |
---|---|---|---|
20XX年7月25日 | 諸口 100,000 | 普通預金 100,000 | 自宅兼事務所の家賃 |
地代家賃 30,000 | 諸口 30,000 | 家賃(経費分) | |
事業主貸 70,000 | 諸口 70,000 | 家賃(私用分) |
この仕訳でも、同じように「預金口座から10万円を支出」「地代家賃として3万円を計上」「事業主貸として7万円を計上」ということを表すことができます。
地代家賃の仕訳例 - まとめて家事按分する場合の記帳方法
ひとまず1年分を全て地代家賃として経費につけておいて、 年末にプライベート分をまとめて家事按分する方法でも構いません。 この方法がラクなので一番おすすめです。 その場合は、毎月の家賃を以下のようにまず全て地代家賃として仕訳していきます。
日付 | 借方 | 貸方 | 摘要 |
---|---|---|---|
20XX年7月25日 | 地代家賃 100,000 | 普通預金 100,000 | 自宅兼事務所の家賃 |
この方法で、12ヶ月分を毎月仕訳します。
100,000 × 12ヶ月分 = 1,200,000(1年分の合計家賃)
そして、年末の日付で1年分をまとめて按分します。
今回の例では、70%が事業主の生活分なので、70%を「事業主貸」に振り替える仕訳をします。
1,200,000 × 70% = 840,000(事業主貸に計上する金額)
日付 | 借方 | 貸方 | 摘要 |
---|---|---|---|
20XX年12月31日 | 事業主貸 840,000 | 地代家賃 840,000 | 家賃の按分 事業主貸 70% |
これで1年間で支払った家賃の合計金額120万円のうち、 36万円が地代家賃として経費に計上され、84万円が事業主貸として計上されることになります。 事業主貸に計上された金額は、経費としてはカウントされません。 >> 事業主貸・事業主借とは?
本例では、まず地代家賃として毎月の家賃を計上する方法を紹介しましたが、 逆に毎月の家賃を事業主貸として帳簿づけしていき、年末に地代家賃へ振替仕訳する方法でも構いません。
水道光熱費や通信費など、毎月支払いがあり、なおかつ按分の必要がある場合には同じように按分しましょう。
按分のポイントまとめ
最後に、個人事業主の帳簿付けで行う「按分」に関するポイントをまとめておきます。読み方は「あんぶん」です。家事按分は「かじあんぶん」と読みます。
- 按分とは、基準とする割合で数量を分けること
- 個人事業主の帳簿付けでは事業分とプライベート分を分ける際に使う
- 適切な按分により、出費の一部を経費計上することができる
- 按分の根拠は、客観的かつ合理的な説明がつくこと
- 地代家賃の場合、たとえば仕事スペースと生活スペースの床面積で按分する
- ひとつひとつの仕訳で、按分するのが基本
- 年末にまとめて家事按分する方法でもOK
個人事業主が仕事用とプライベート用の両方で使っているものの出費を按分し、一部を経費にします。たとえば、SOHO(自宅兼事務所)の家賃、その水道光熱費、携帯電話の料金などで出費を按分します。
>> 個人事業主が扱う必要経費【一覧表】
>> 個人事業での経費の範囲は? - 白色申告・青色申告での経費
>> 水道光熱費を按分する場合