10万円未満のパソコンは消耗品費にできる?減価償却?
更新日 2024年7月31日
本記事では、必要経費の勘定科目「消耗品費(しょうもうひんひ)」についてまとめています。この科目は帳簿付けで使用頻度が多いはずなので、しっかりおさえておきましょう。
個人事業での消耗品費とは?
消耗品費とは、おおまかに言うと、仕事で使う少額な消耗品を購入した際に使う勘定科目です。 消耗品費の消費税区分は、基本的に「課税」です。
- 消耗品費とは?
- 消耗品費とは、消耗品を購入した際の費用。 ここでいう「消耗品」とは、使っているうちに消耗したり価値が減るもので、10万円未満、もしくは使用可能な期間が1年未満のものを指す。
詳しい定義は上記の通りですが、これを理解するには具体例を見たほうが早いです。 たとえば、仕事で使うために以下のようなものを購入した場合に、消耗品費として経費計上します。 ただし上記の通り、金額は10万円未満のものに限定されます。
文房具、インク、テープ、電球、名刺、伝票、印鑑、手袋、名刺入れ、電卓、ガソリン、デスク、スマートフォン、パソコン、USBメモリ、ハードディスクなど
事業で使うソフトウェアのライセンス料のようなものでも、10万円未満であれば消耗品費として計上できます。
混同されやすい科目に「雑費」がありますが、 雑費はどの経費にも当てはまらない場合に、しょうがなく使う科目です。 なので、消耗品費として計上できそうなものは消耗品費として記帳しましょう。 雑費は不明確な経費なので、金額が多いと税務署から目をつけられるもとになります。
消耗品費の重要な基準は10万円
先に挙げたような消耗品で、取得価額10万円未満のもの、もしくは使用可能期間が1年未満のものは、消耗品費として計上できます。
例えば、8万円のパソコンを買った場合で考えてみましょう。パソコンというと「消耗品」という感じはしないのではないでしょうか? しかし、取得価額が10万円未満なので、この場合は消耗品費として経費計上することができます。
逆に、10万円以上のものを買った場合は、減価償却資産として扱うのが原則です。 この場合は、そのものの「法定耐用年数」に応じて、複数年にわたって徐々に経費計上することになります。
- 法定耐用年数って何?
- 物品や建物について、それぞれ「これぐらいはもつでしょ」と法律で耐用年数が定められており、これを「法定耐用年数」と呼ぶ。 例えば、カメラの法定耐用年数は5年と定められているので、高額な一眼レフカメラを買った場合、原則的には5年にわたって減価償却することになる
10万円以上の物を購入した場合
上述の通り10万円以上のものは、消耗品ではなく減価償却資産として扱い、減価償却という処理をするのが原則です。 例えば、15万円のパソコンを買った場合には、3つの処理方法があります。下記のどの方法でも構いません。
- 一括償却資産とする
- 少額減価償却資産の特例を適用する(青色申告者のみ)
- 減価償却資産とする
1 一括償却資産とする
取得価額が10万円以上~20万円未満の減価償却資産は、 法定耐用年数などに関わらず3年間で均等償却ができる「一括償却資産」として処理できます。
この場合は、15万円のパソコンを買った日にちに関わらず、 1年目5万円、2年目5万円、3年目5万円と、5万円ずつ3年間にわたって経費にします。 一括償却資産は、固定資産税の対象外になるというメリットがあります。
2 少額減価償却資産の特例を適用する(青色申告者のみ)
青色申告の場合は「30万円未満のものであれば一括でその年の経費にすることも可能」という特例が用意されています。これを「少額減価償却資産の特例」と呼びます。これなら購入した年に一括で経費計上できます。
ただし、この特例の限度額は合計300万円なので注意しましょう。
>> 少額減価償却資産の特例について
3 減価償却資産とする
これは通常の減価償却です。 パソコンの法定耐用年数は4年なので、この場合、購入日の月から起算し、4年にわたって少しずつ経費計上することになります。 >> 減価償却や法定耐用年数の詳細
償却期間 | 固定資産税 | 条件 | |
---|---|---|---|
一括償却資産 | 3年 | 対象外 | ・10万円〜20万円 |
少額減価償却資産の特例 | 一括 | 対象 | ・30万円未満 ・青色申告者 |
減価償却資産 | 耐用年数による | 対象 | - |
「〜」は「以上〜未満」
「一括償却資産」とする場合のみ、固定資産税の対象外になります。 ただし、こういった償却資産の固定資産税は、課税標準額が150万円未満の場合には課税されません(免税点)。 この点もおさえておきましょう。 たとえば、数十万円のパソコンを1台持っているぐらいでは、どの方法で処理してもそもそも固定資産税はかかりません。
取得価額別のまとめ
10万円未満か、耐用年数1年未満のものは消耗品費で仕訳します。 10万円~20万円のものは、3つの処理の方法があります。 20万円~30万円のものは、2通りの方法があり、30万円以上のものは通常通り減価償却します。 まとめると、以下のようになります。
取得価額 | 選べる処理の方法 |
---|---|
30万円以上 | 減価償却資産 |
20万円 ~ 30万円 | 少額減価償却資産の特例 or 減価償却資産 |
10万円 ~ 20万円 | 一括償却資産 or 少額減価償却資産の特例 or 減価償却資産 |
10万円未満 | 消耗品費 |
「〜」は「以上〜未満」
繰り返しになりますが「少額減価償却資産の特例」は青色申告者のみ適用可能です。
取得価額は1セットで判断する
商品の取得価額は、1個もしくは1セットで判断します。セットで機能するものは取得価額を1セットの合計で考えなければなりません。 国税庁 - 少額の減価償却資産になるかどうかの判定の例示
- 取得価額って何?
- 物品や建物などを購入した際に、その手数料や消費税なども含めた金額のこと
例えば、パソコンを購入した際に、ディスプレイ8万円、ハード・ソフトウェア5万円、キーボード等が2万円だった場合、 合計15万円となるので、消耗品費とすることができません。 取得価額は1セットで考えなければならないので、 1つ1つが10万円以下でも個別に消耗品費として計上することは認められません。
この場合は、15万円のパソコンセットを減価償却資産として、先述の選択肢から1つ選んで計上することになります。
>> 個人事業で使う必要経費の種類一覧へ
>> 減価償却費とは?個人事業での計算方法や耐用年数の一覧など
>> 減価償却費の仕訳方法