個人事業主が加入できる「個人型確定拠出年金 (iDeCo)」

更新日 2024年7月13日

個人型確定拠出年金(iDeCo)について

確定拠出年金とは?

確定拠出年金とは、公的年金に加えて給付を受けられる私的年金のひとつです。 国民年金基金のように、国民年金の上乗せとなる私的年金で、日本版401k・DCとも呼ばれます。この制度は2001年10月にスタートしました。

確定拠出年金には「個人型」と「企業型」の2種類があり、個人事業主が加入できるのは「個人型」です。 2016年9月16日には愛称が決定し、この個人型確定拠出年金のことを「iDeCo(イデコ)」と呼ぶようになりました。 iDeCoの実施主体は、国民年金基金連合会です。

「個人型」と「企業型」の違い

個人型確定拠出年金 (iDeCo)企業型確定拠出年金
自分の意志で任意加入する会社によっては退職金制度として用意している
個人事業主、会社員、公務員、専業主婦などが加入できる会社員が加入できる

2017年1月からはiDeCoの対象者が大幅に拡大され、今まで加入できなかった会社員・公務員・第3号被保険者(専業主婦など)も加入できるようになりました。つまり、個人型確定拠出年金であれば、20歳以上60歳未満の方ならほとんど誰でも加入できるということです。(20歳未満であっても、厚生年金被保険者であれば加入できます。)

掛金月額の設定について

個人事業主が加入する場合、掛金は月額5,000円〜月額68,000円の範囲内で、1,000円単位で自由に設定できます。年額にすると60,000円〜816,000円です。掛金額の変更は、1年に1回だけ可能です。

その他に「国民年金基金」や「付加保険」に加入している場合は、それらと「合算して月額68,000円」が限度となります。(国民年金は、この合算に関係ありません。)

掛金月額の設定

このように、iDeCoと付加年金、iDeCoと国民年金基金の併用はそれぞれ可能です。 しかし、付加年金と国民年金基金を併用はできません。(国民年金基金の1口目の給付に、付加年金相当が含まれているので)

投資信託などから自分で投資商品を選んで運用する

iDeCoでは、投資信託などから自分で投資商品を選んで運用します。将来の受け取り額は、自分が選んだ商品次第で変わってきます。

いくつかの金融商品を組み合わせることができ、運用商品の配分は1%単位で設定できます。途中で運用商品を変えること(スイッチング)も可能です。

確定拠出年金のメリット・デメリット

確定拠出年金の主なメリット・デメリット

メリットデメリット
  • 掛金が全額控除され、節税になる
  • 運用益は非課税
  • 受給時に退職所得控除や公的年金等控除の対象になる
  • 60歳まで掛金を引き出せない(支払い停止は可能。)
  • 投資リスクは自分で負う
  • 少額の管理コストがかかる

確定拠出年金のメリット

掛金が全額控除され、節税になる

確定拠出年金の掛金は「小規模企業共済等掛金控除」として全額を控除できます。節税しながら将来の備えを作られるというのが、一番のメリットといえます。

運用益は非課税

運用で得られた利息・配当金・売却益等は全て非課税で、そのまま次の運用資金として活用できます。

受給時に退職所得控除や公的年金等控除の対象になる

一時金で受け取る場合には、退職所得控除の対象となります。年金で受け取る場合には、公的年金等控除の対象となります。

確定拠出年金のデメリット

60歳まで掛金を引き出せない(支払い停止は可能。)

確定拠出年金は、60歳までは途中解約ができず、掛金を引き出すことができません。これが最も大きなデメリットです。(ただし、死亡や高度障害等の場合には、引き出し可能に。)60歳時点で確定拠出年金制度への加入期間が10年に満たない場合は、受給開始年齢が段階的に引き上げられます。(50歳までに加入すれば、60歳から受け取り可能です。)

投資リスクは自分で負う

iDeCoでは運用商品を自分で選択する必要があります。投資先を自分で選んで、元本割れするリスクも負うことになります。(元本が保証されている商品もあります。)

管理コストがかかる

少額ですが、加入時や運用期間中などに手数料がかかります。加入時には、国民年金基金連合会へ税込2,829円の「加入時手数料」を支払います。その後、運用中に最低限かかる手数料としては、下記のものがあります。

継続的に発生するコスト

支払先金額
国民年金基金連合会月額105円(年額1260円)
事務委託先金融機関
(信託銀行)
月額66円(年額792円)
運営管理金融機関運営機関によって異なる
SBI証券のように無料の運営機関もあり)

個人型確定拠出年金(iDeCo)の仕訳方法

iDeCoの支払いは、本人の銀行口座から振替で行います。 国民年金の第2号被保険者(会社員・公務員等)は、給与からの天引きも可能です。 毎月の掛金口座振替は、26日(休業日の場合は翌営業日)です。

iDeCoも国民年金や国民健康保険、国民年金基金などと同じく、 事業主本人の個人的な支出と考えますので、支払額を帳簿づけする必要はありません。

もし、個人事業で使っている事業用の銀行口座などから振替にしている場合で、 やむをえず帳簿づけが必要な場合には「事業主貸」の勘定科目を利用して仕訳しましょう。

iDeCoの記帳例

日付借方貸方摘要
20XX年5月26日事業主貸 10,000普通預金 10,000iDeCo

この仕訳は、個人事業の事業用口座からiDeCoの振替があったことを表します。 事業とは無関係の個人口座からiDeCoの振替を行う場合は、帳簿づけする必要すらありません。

個人型確定拠出年金(iDeCo)まとめ


個人事業主にとっての個人型確定拠出年金(iDeCo)は、国民年金に上乗せできる私的年金のひとつです。将来の備えを充実させたい方が、任意で加入することができます。国民年金基金や付加年金との併用も可能ですが、その場合はそれらと合計した掛金額を月額68,000円以内におさめる必要があります。

iDeCoの掛金は月5,000円〜月68,000円の範囲内で、1,000円単位で自由に設定できます。 この範囲内で、iDeCoの対象になっている投資信託などから自分で投資商品を選んで運用することになります。

iDeCoは、拠出時、運用中、給付時のすべての期間で税制上の優遇があります。 その反面、60歳までは途中解約ができず、掛金を引き出すことができないなどのデメリットがあります。 ともすれば元本割れする投資リスクを自分で負うことにもなります。

個人事業主は、iDeCoのために納付した掛金額を帳簿づけする必要はありません。 やむをえず記帳する場合には「事業主貸」の勘定科目を利用して仕訳しましょう。 国民健康保険国民年金の保険料を納付する時と同じ考え方です。

iDeCoの掛金は「小規模企業共済等掛金控除」として、確定申告で全額を控除できます。控除を受けるには、個人事業主が申告時に提出する確定申告書Bに必要事項を記入します。具体的には「確定申告書の書き方」の「3. 所得から差し引かれる金額(所得控除)」をご参照ください。

個人事業主にとってのiDeCo

  • 個人型確定拠出年金(iDeCo)は国民年金に上乗せできる私的年金のひとつ
  • 掛金は月5,000円〜月68,000円の範囲内で、1,000円単位で自由に設定できる
  • iDeCoでは、投資信託などから自分で投資商品を選んで運用する
  • 税制上で優遇されるメリットがあるが、60歳まで掛金を引き出せない等のデメリットも
  • 個人事業の帳簿づけにおいて、iDeCoの納付額を記帳する必要はない
  • 帳簿づけするのであれば「事業主貸」の科目で記帳すればOK
  • iDeCoの掛金は「小規模企業共済等掛金控除」として全額控除できる
  • 控除を受けるには、確定申告書に必要事項を記入すればOK

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