山林所得とは?税金の計算方法・課税方法など
更新日 2024年7月10日
山林所得とは?
山林所得とは、山林を伐採して譲渡したり、木が生えているまま譲渡することにより生まれる所得のことです。 山林の所有期間や運営規模によって、どの所得に区分されるかが決まります。山林を取得してから5年以内に譲渡した場合は、事業所得か雑所得になります。
事業的規模である | 事業的規模でない | |
---|---|---|
所有5年超 | 山林所得 | 山林所得 |
所有5年以内 | 事業所得 | 雑所得 |
「事業的規模」を判断するひとつの目安は、50ヘクタール以上の山林保有
山林を山ごと譲渡する場合、その「土地」部分については、譲渡所得の扱いになります。
山林所得の計算方法
山林所得は、他の所得と合算せずに税金を計算する「申告分離課税」の対象です。ただ、山林所得が赤字の場合、他の所得と「損益通算」することができます。 山林所得を計算する際、基本的には以下の計算式を用います。
- 山林所得の計算方法
- 総収入額 – 必要経費 – 特別控除 = 山林所得
総収入額
総収入額は、山林を伐採、あるいは立木のままで譲渡して得たすべての売上金額を指します。
必要経費
山林所得の必要経費となるのは、売却した山林の取得費や管理費などを含め、取得から売却までにかかった費用です。 下記のような費用が経費計上できます。
- 取得費 (植林費など)
- 育成費 (下刈費など)
- 管理費 (維持管理費など)
- 譲渡費用 (伐採費、搬出費、仲介手数料など)
特別控除
山林所得の特別控除は、山林所得がある全ての人が適用できます。 最高で50万円までの控除が受けられます。 例えば、総収入額から必要経費を引いた残りが50万円以上あれば、50万円の控除、 必要経費を引いた残りが30万円であれば、30万円の控除が適用されます。
その他、森林計画特別控除などの特例が用意されています。
山林所得にかかる税金
山林所得は前述の通り「申告分離課税」の対象です。他の所得とは合算せず、独自の計算式で税額を算出します。 これは「分離5分5乗課税方式」と呼ばれていて、「超過累進税率方式」よりも優遇された計算方法です。
- 山林所得にかかる税金の計算方法
- (課税山林所得金額 × 1/5 × 所得税率) × 5 = 山林所得の税額
上記のとおり、山林所得の全額で所得税率が決まるのではなく、山林所得の1/5に対して所得税率が決まります。 >> 所得税の税率について
例えば、山林所得が500万円だった場合
500万円 × 1/5 = 1,000,000円
100万円の所得税率は、5%なので、1,000,000円 × 5% = 50,000円
50,000円 × 5 = 250,000円が税額となります。
仮に、山林所得500万円を超過累進税率で計算してみると、
500万円の所得税率は20%なので、
500万円 × 20% = 1,000,000円
500万円の控除額が427,500円なので、
1,000,000円 – 427,500円 = 572,500円が税額となります。
このように「分離5分5乗課税方式」によって、かなり税金の負担が軽減される形になっています。
まとめ
先述のとおり、山林の所有期間や運営規模に応じて、所得の区分が異なります。 山林所得には、特別控除や独自の計算方法があり、他の所得よりも税金面で優遇されています。
- 山林の所有期間が5年超なら「山林所得」
- 山林の所有期間が5年以内なら「事業所得」か「雑所得」
- 山ごと譲渡する場合、土地については「譲渡所得」
- 山林所得は「申告分離課税」の対象
- 他の所得とは合算せず、区別して税額を算出する
- 山林所得がもし赤字になったら他の所得と「損益通算」できる
山林所得にかかる税金の基本的な計算プロセスをまとめると、下記の通りです。
- 山林所得の税額計算
- 総収入金額 – 必要経費 – 特別控除額(最高50万円) = 山林所得の金額
(課税山林所得金額 × 1/5 × 税率) × 5 = 山林所得の税額
この計算式は、それぞれ国税庁が公示しているもので、文言もそのままです。 「課税山林所得」とは、課税対象になる山林所得のことです。大抵の場合「山林所得」=「課税山林所得」とみてよいでしょう。
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