所得税の損益通算を分かりやすく - 損益通算できる所得とできない所得

更新日 2020年6月06日

所得税の損益通算

所得税の損益通算とは、一定の所得に損失(赤字)が生じ、他の所得に利益(黒字)がある場合、 順序に従って利益と損失を合算できる制度のことを指します。

損益通算できる所得とできない所得

所得税法上では、所得が10種類に分類されています。下記が10種類の所得です。 この中で、損失が出た場合に、損益通算できる所得とできない所得があります。

  • 利子所得
  • 配当所得
  • 不動産所得
  • 事業所得
  • 給与所得
  • 退職所得
  • 山林所得
  • 譲渡所得
  • 一時所得
  • 雑所得

例えば、不動産所得で赤字であれば、他の所得が黒字の場合に損益通算ができます。 しかし、かりに配当所得の計算上で損失がでても、他の所得と損益通算することができません。

赤字になったら差し引ける所得赤字になっても差し引けない所得
  • 不動産所得
  • 事業所得
  • 譲渡所得
  • 山林所得
  • 利子所得
  • 配当所得
  • 給与所得
  • 退職所得
  • 一時所得
  • 雑所得

利子所得と退職所得は、所得金額の計算上で赤字になることはありません。 つまり、そもそも損失が出ない所得なので、この2つは損益通算のしようがない所得とも言えます。

損益通算できる所得の例外

赤字になったら差し引ける所得(損益通算できる所得)であっても、山林所得以外は、例外となる事項があるので注意しましょう。 下記のものは、赤字が出ても損益通算できません。

損益通算できる所得例外となる事項
不動産所得土地・建物などの取得にかかる借入金の利子
事業所得株式などにかかわる事業所得の損失
譲渡所得マイホーム以外の土地・建物・株式など、申告分離課税の譲渡所得

損益通算を行うにあたっての注意点

  • 趣味や娯楽、保養などの目的で保有する資産の譲渡に関しての損失は、他の所得から差し引くことはできない(ゴルフ会員権、別荘などの不動産、30万円をこえる貴金属、骨とう品など)
  • 申告分離課税の「株式等に係る譲渡所得等」の損失がある場合、「株式等に係る譲渡所得等」以外の所得との損益通算はできない
  • 申告分離課税の「先物取引に係る雑所得等」で生じた損失がある場合は、「先物取引に係る雑所得等」以外の所得との損益通算はできない
  • 譲渡所得で、居住用資産以外の土地建物の譲渡で損失が生じた場合、「土地建物等の譲渡所得」以外の所得との損益通算はできない

「経常所得」と「非経常所得」の区別

損益通算をする上では、「経常所得」と「非経常所得」という概念も知っておくと理解が進みます。

  • 経常所得 → 定期的に収入が得られる所得
  • 非経常所得 → 定期的ではなく、一時的に得られる所得

「経常所得」と「非経常所得」、これらのどちらにも含まれない所得の分類は、下表のとおりです。

経常所得利子所得, 配当所得, 不動産所得, 事業所得, 給与所得, 雑所得
非経常所得一時所得, 譲渡所得
その他山林所得, 退職所得

そして、経常所得・非経常所得・その他所得を、赤字になったら差し引ける所得と、赤字でも差し引けない所得に分類したのが、下表です。

赤字になったら差し引ける所得赤字になっても差し引けない所得
経常所得不動産所得, 事業所得利子所得, 配当所得, 給与所得, 雑所得
非経常所得譲渡所得一時所得
その他山林所得退職所得

損益通算の順番 - 4つの段階に分けて計算する

損益通算の計算は、大きく分けると4段階で行います。

  1. 経常所得内での損益通算
  2. 非経常所得内での損益通算
  3. 経常所得額と非経常所得額の通算
  4. 山林所得と退職所得から差し引き

1. 経常所得内での損益通算

まず、経常所得内での損益通算を行います。 経常所得は、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、雑所得の6つでした。 (下表で「経常所得」の行を参照)

赤字になったら差し引ける所得赤字になっても差し引けない所得
経常所得不動産所得, 事業所得利子所得, 配当所得, 給与所得, 雑所得
非経常所得譲渡所得一時所得
その他山林所得退職所得

この中で、赤字になった場合に差し引くことができるのは、不動産所得と事業所得だけですね。 つまり、不動産所得と事業所得に損失があった場合には、 他4つの経常所得の利益から、不動産所得と事業所得の損失を差し引くことができます。 (例外となる事項を除く)

まずは経常所得内での損益通算
(利子所得 + 配当所得 + 給与所得 + 雑所得) − (不動産所得 + 事業所得)

例えば、利子所得、配当所得、給与所得、雑所得の合計が800万円だったとします。 この800万円から、不動産所得の損失150万円と事業所得の損失200万円を差し引くことで、 経常所得内の所得合計額は、450万円になります。

2. 非経常所得内での損益通算

次に、非経常所得内での損益通算を行います。 この場合、赤字になったら差し引ける所得は、譲渡所得だけですね。 そして、対象になるのは一時所得だけです。(上記の表で「非経常所得」の行を参照)

非経常所得内での損益通算
一時所得 − 譲渡所得

ここでは、一時所得から、譲渡所得の損失を差し引くことになります。 例えば、一時所得がなく、譲渡所得の損失が200万円だった場合は、 マイナス200万円が、非経常所得内の所得合計額になります。

3. 経常所得額と非経常所得額の通算

経常所得額と非経常所得額のどちらかに、なお損失があった場合、 この2つのグルーブで損益通算をすることができます。

経常所得と非経常所得の損益通算
経常所得 − 非経常所得 or 非経常所得 − 経常所得

先ほどの例でいうと、経常所得内での通算が450万円、 非経常所得内での通算がマイナス200万円だったので、2つを通算すると、プラス250万円になります。

4. 山林所得と退職所得から差し引き

2つのグループを通算しても、なお損失がある場合には、 山林所得の黒字から差し引くことができます。 それでもなお損失がある場合は、損失分を退職所得から差し引くことができます。

まずは山林所得。次に退職所得。
山林所得 − 赤字分
これでも、なおマイナスになる場合は↓
退職所得 − 赤字分

損益通算の特例について

マイホーム譲渡の特例

通常、土地や建物などの資産の譲渡所得は、損益通算することができません。ただし、自分の住んでいる家屋や敷地(所有期間5年超)の譲渡や、新たに借入金による買い替えを行った場合は、特例が認められています。一定の要件を満たせば、これらのマイホームの譲渡損失について損益通算を行うことができます。 マイホームの特例 - 国税庁

上場株式などの「譲渡所得」と「配当所得」の損益通算の特例

「上場株式の譲渡損失」と「上場株式の配当所得」との間で、損益通算が認められています。ただし、損益通算できるのは、「配当所得」について「申告分離課税」を選択している場合に限られます。また一定の要件を満たしている必要があります。上場株式の譲渡損失 - 国税庁

損益通算のまとめ

経常所得・非経常所得・その他の所得を、赤字になったら差し引ける所得と赤字になっても差し引けない所得に分けると、下表のようになります。(ただし冒頭で記載の通り、赤字になったら差し引ける所得といっても、例外事項があるので注意しましょう。)

赤字になったら差し引ける所得赤字になっても差し引けない所得
経常所得不動産所得, 事業所得利子所得, 配当所得, 給与所得, 雑所得
非経常所得譲渡所得一時所得
その他山林所得退職所得

損益通算の計算には、定められた順番があるので、それに基づいて計算を進めていきます。 計算の上でマイナスの所得がなければ、単純に合計すればOKです。

順番計算式
① 経常所得内での損益通算(利子所得 + 配当所得 + 給与所得 + 雑所得) − (不動産所得 + 事業所得)
② 非経常所得内での損益通算一時所得 − 譲渡所得
③ 経常所得額と非経常所得額の通算経常所得 − 非経常所得 or 非経常所得 − 経常所得
④ 山林所得と退職所得から差し引き山林所得 − 赤字分
これでも、なおマイナスになる場合は、退職所得 − 赤字分

青色申告の場合は、損益通算を行ってもなお赤字になる場合、3年間の繰越控除ができます。 赤字を3年繰り越せるわけです。会社員の人も不動産所得などで損失が出た場合には、給与所得との通算が可能です。

>> 総合課税と分離課税の違い - 申告分離課税と源泉分離課税
>> 青色申告のメリット・デメリット
>> 10種類の所得を分かりやすく解説