譲渡所得とは?課税方法や計算式について
更新日 2020年6月28日

譲渡所得とは? - 総合課税と分離課税
譲渡所得とは、一定の資産の譲渡によって生まれる所得のことを指します。譲渡所得の対象となる資産には、土地・建物・株式・宝石・船舶・著作権などがあります。ここでいう譲渡とは、有償無償を問わず、特定の財産や権利を譲り渡すことです。 譲渡所得の課税対象となる資産の主なものは、以下の通りです。
課税対象になる資産 - 総合課税と分離課税
総合課税の対象 | 分離課税の対象 |
---|---|
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|
*金地金(キンジガネ)とは、金塊のこと
譲渡所得には、総合課税のものと分離課税のものがあります。 総合課税とは、各所得を合算した金額に課税される方式です。分離課税とは、他の所得と合算せずに分離して課税される方式です。
課税対象にならない譲渡所得、譲渡所得以外の所得
資産の譲渡による所得でも、たとえば下記のような所得については課税されません。
課税対象にならない譲渡所得の例
- 生活用動産の譲渡による所得
家具、通勤用の自動車、衣服など、生活に必要な動産を譲渡したときの所得。 ただし、宝石や古美術品などで1個または1組が、30万円を超えるものの譲渡による所得は、課税の対象になる - 資産が競売などにかけられたことによる所得
破産や滞納により、住宅ローンなどの支払いができなくなった資産を、強制的に競売などで譲渡した場合の所得 - 国や地方公共団体に対して財産を寄付した場合や、国などに重要文化財を譲渡した場合の所得
また、同じように資産の譲渡によって生じる所得でも、下記のようなものは譲渡所得以外の所得として扱われます。
譲渡所得以外の所得として課税されるものの例
- 山林を伐採して譲渡した場合の所得 → 山林所得 or 事業所得 or 雑所得
- 商品や原材料などの棚卸資産を譲渡することによる所得 → 事業所得 or 雑所得
(棚卸資産とは、販売する目的で一時的に保有している商品・原材料などの総称)
譲渡所得の計算方法(総合課税の譲渡所得)
土地や建物、株式などを売った場合を除いて、資産を売ったときの譲渡所得は総合課税の対象となります。 総合課税の譲渡所得は、ゴルフ会員権や美術品、宝石などの他、著作権や特許権などを譲渡した場合に生じる所得が当てはまります。
- 譲渡所得の計算式(総合課税の譲渡所得)
- 譲渡価額 – (取得費 + 譲渡費用) − 50万円 = 譲渡所得の金額
項目 | 内容 |
---|---|
譲渡価額 | 譲渡した際の販売金額 |
取得費 | その資産を買った時の購入代金。購入手数料や設備費、改良費なども含まれる。 使用期間により減価する資産の場合は、減価償却費に相当する額を控除した金額 |
譲渡費用 | その資産を売るために直接かかった費用 |
50万円 | 譲渡所得の特別控除の金額。これは、その年の長期の譲渡益と短期の譲渡益の合計額に対して50万円。 その年に短期と長期の譲渡益があるときは、先に短期の譲渡益から特別控除の50万円を差し引く。 譲渡益が50万円以下の場合は、その金額までしか控除できない |
短期譲渡所得と長期譲渡所得
総合課税による譲渡所得は、保有期間によって課税の対象となる割合が異なります。 保有期間とは、取得してから譲渡するまでの期間をいいます。
- 保有期間が5年以内の場合 (短期譲渡所得) → 譲渡所得の全額が課税対象
- 保有期間が5年超の場合 (長期譲渡所得) → 譲渡所得の1/2が課税対象
ただし、以下の項目については、保有期間が5年以下であっても長期譲渡所得となります。
- 自分が研究して取得した特許権や実用新案など
- 自分で著作した著作権
- 自分が発見した鉱山などの採掘権
- 自分の育成による育成者権
譲渡所得の計算方法(分離課税の譲渡所得)
土地や建物を売ったときの譲渡所得に対する税金は、分離課税の対象です。 他の所得とは合算せず、独自に税額を計算することになります。分離課税の譲渡所得の計算式は、以下の通りです。
- 譲渡所得の計算式(分離課税の譲渡所得)
- 譲渡価額 – (取得費 + 譲渡費用) − 特別控除 = 譲渡所得の金額
項目 | 内容 |
---|---|
譲渡価額 | 土地や建物を売って受け取る金額 |
取得費 | 土地や建物の購入費をはじめ、建築費用やリフォーム代、設備費などが含まれる。 購入代金や建築費の合計から、所有期間中の減価償却費に相当する金額は差し引く。 取得費が不明の場合には、売った金額の5%を概算取得費として計上することができる |
譲渡費用 | 譲渡する際に支払った販売手数料や収入印紙代など。 土地を売るために建物を取り壊したときの取り壊し費用や、建物の損失額などもこれに含まれ |
特別控除 | 例えば、マイホームを売った場合の3,000万円の特別控除など、各種の特例がある |
特別控除について
土地や建物を譲渡した場合の特別控除は以下の通りです。 ただし、以下の特別控除は、一定の要件を満たす場合にのみ適用されます。
適用内容 | 控除額 |
---|---|
公共事業などのために土地を売った場合 | 5,000万円 |
マイホームを譲渡した場合 | 3,000万円 |
特定土地区画整理事業などのために土地を売った場合 | 2,000万円 |
特定住宅造成事業などのために土地を売った場合 | 1,500万円 |
平成21年、22年に取得した土地の売却 | 1,000万円 |
農地保有の合理化などのために土地を売った場合 | 800万円 |
短期譲渡所得と長期譲渡所得
その資産の保有期間によって、所得税や住民税の税率が異なります。 一般の土地、建物などの譲渡の場合は、以下の通りです。
保有期間 | 所得税 | 住民税 |
---|---|---|
5年以内 (短期譲渡所得) | 短期譲渡所得額×30% | 短期譲渡所得額×9% |
5年超 (長期譲渡所得) | 長期譲渡所得額×15% | 長期譲渡所得額×5% |
例えば、8年間保有していた土地を譲渡する場合、
譲渡価格が4,500万円、取得費が3,800万円、譲渡費用が150万円だとしたら、
長期譲渡所得は、
4,500万円 – (3,800万円 + 150万円) = 550万円
長期譲渡所得の場合の税率は15%なので、
550万円 × 15% = 825,000円(所得税)
825,000円 × 2.1% = 17,325円(復興特別所得税)
550万円 × 5% = 275,000円(住民税)
税金合計額 1,117,325円
となります。
同じ土地で保有期間が3年だった場合には、
短期譲渡所得となるため、
550万円 × 30% = 1,650,000(所得税)
1,650,000円 × 2.1% = 34,650円(復興特別所得税)
550万円 × 9% = 495,000円(住民税)
税金合計額 2,179,650円
です。
このように保有期間によって、支払う税金にもかなりの違いが出てきます。
まとめ
譲渡所得は、一定の資産を譲渡することによって生じる所得です。 譲渡所得の課税方法は、総合課税か分離課税の2つに大別できます。
総合課税の譲渡所得には、ゴルフ会員権や古美術品、宝飾品などの他に、著作権などの知的財産権なども含まれます。 ただし、家具や衣服などの生活用動産の譲渡による所得は、譲渡所得として課税対象にはなりません。
申告分離課税の譲渡所得は、主に土地や建物などの不動産譲渡や、株式譲渡による所得が当てはまります。 土地や建物の譲渡については特別控除もあり、一定の要件を満たせばこれが適用されます。 また、保有年数によって税率が変わってくるので、譲渡する時期などを考慮すれば上手く税金をおさえることもできます。