一時所得とは?計算方法や課税方法について
更新日 2024年7月09日
本記事では、所得税法上の10種類の所得のうち「一時所得」について説明しています。
一時所得とは?
一時所得とは、以下2つの性質を持たない、一時的な所得のことをいいます。具体的にいうと、後述のように「競馬で的中した場合の払戻金」「生命保険の加入によって病気やケガの際に受け取れる、入院一時金」などが、一時所得に該当します。
一時所得は下記両方の性質をもたない
- 継続的な営利行為から生じた所得
- 業務や資産譲渡の対価としての所得
下記のように「思いがけず得るお金」や「保険契約に基づく一時金」などが、一時所得とされています。
一時所得の具体例
- 法人から贈与された金品 (業務に関して受けるものを除く)
- 遺失物を拾って届けたり、埋蔵金を発見した時に受け取る報労金
- 懸賞や福引に当たった時の賞金
- 競馬や競輪での的中による払い戻し金
- 生命保険契約に基づく一時金(入院一時金、解約返戻金など)
- 損害保険契約に基づく一時金(傷害一時金、入院一時金など)
- 死亡後3年を超えて支給が確定した退職金
後述のとおり、一時所得では最高50万円の特別控除があるので、懸賞やギャンブルでも大勝ちしていなければ確定申告を考える必要はありません。
非課税になる一時所得の具体例
- 宝くじの当選金
- ノーベル賞の賞金
- 心身や資産の損害により支払われる損害賠償金や損害保険金
- 選挙活動に関わる法人からの贈与で、一定の条件を満たしたもの
一時所得の計算方法
総収入金額から「収入を得るために支出した金額」と「特別控除額(最高50万円)」を差し引いた金額が、一時所得の金額となります。一時所得の計算式は、以下の通りです。
- 一時所得の計算式
- 総収入金額 – 収入を得るために支出した金額 – 特別控除額(最高50万円) = 一時所得の金額
収入を得るために支出した金額とは?
例えば、生命保険が満期になったときに受け取る一時金の場合は、 それまで月々支払っていた保険料が「収入を得るために支出した金額」となります。
競馬に当たった場合は、当たったレースの馬券購入費のみが「収入を得るために支出した金額」とされます。 それまでに購入したハズレ馬券の購入費は「収入を得るために支出した金額」には含まれません。
一時所得の「特別控除額」とは?
一時所得の特別控除額は、最高50万円です。「総収入金額」から「収入を得るために支出した金額」を差し引いた後の金額が50万円未満の場合は、その金額が特別控除額となります。
例えば、生命保険の解約時に解約返戻金200万円を受け取り、累計の支払い保険料が180万円だった場合、 受け取り額200万円から、経費である180万円を差し引くと、残額は20万円になります。 この場合、20万円が特別控除額として控除され、一時所得は生じません。
一時所得は内部通算できるが、損益通算はできない
一時所得が複数ある場合、「収益のある一時所得」から「損失のでた一時所得」を差し引くことができます。このように、一時所得で互いに行う損益通算を「内部通算」といいます。一時所得は、特別控除を差し引く前の段階で、内部通算ができます。
例えば、生命保険に2つ加入していた場合を見てみましょう。
- 生命保険① 受け取った満期保険金が800万円、掛金合計額が650万円 → 150万円のプラス
- 生命保険② 解約返戻金が300万円、掛金合計額が350万円 → 50万円のマイナス
上記の生命保険①と生命保険②を、内部通算できます。
総収入額 800万円 + 300万円 = 1,100万円
収入を得るために支出した金額 650万円 + 350万円 = 1,000万円
1,100万円 – 1,000万円 = 100万円
100万円が一時所得額となり、この金額から特別控除額50万円を差し引くことができます。
損失額の方が収益を上回った場合、一時所得はマイナスになります。ただし、一時所得は他の所得との損益通算はできません。一時所得がマイナスになったとしても「0」とみなされます。
一時所得は総合課税の対象 - 一部は源泉分離課税
一時所得にかかる税金
一時所得は、総合課税の対象です。 一時所得の金額の1/2に相当する金額を、事業所得などの他の所得金額と合計します。 こうして総所得金額をもとめた後、納める税額を計算することになります。
- 他の所得と合計することになる一時所得の金額について
- 一時所得の金額 × 1/2 = 他の所得と合計することになる一時所得の金額
確定申告ができない一時所得
以下のものについては、源泉分離課税のため、確定申告はできません。 源泉分離課税とは、あらかじめ税金が源泉徴収されていて、受け取る時点ですでに納税が完了しているものをさします。
- 懸賞付き預貯金などの懸賞金
- 一時払いの養老保険や一時払いの損害保険などで、一定の要件を満たすものの差益
>> 分離課税について
一時所得と雑所得の違い
一時所得と間違えやすい所得が「雑所得」です。 以下の表で、その違いをざっくりとおさえておきましょう。
一時所得 | 雑所得 | |
---|---|---|
概要 | 以下の性質をもたない一時的な所得
|
10種類の所得の内、他の9種類のどれにも分類できない所得 |
例 |
|
|
計算式 | 総収入 – 収入を得るために支出した金額 – 特別控除額(最高50万円) = 一時所得 | 公的年金の場合 収入金額 – 公的年金等控除額 = 雑所得 公的年金以外の場合 収入金額 – 必要経費 = 雑所得 |
課税方法 | 総合課税 or 源泉分離課税 | 総合課税 or 源泉分離課税 or 申告分離課税 |
例えば、「作家が受け取る原稿料や印税」「講師が受け取る講演料」などは、雑所得に当てはまりません。 こういった場合は、事業所得に当てはまります。あくまでも、そういった仕事を生業にしていない方が、臨時的に受け取る謝礼などを雑所得と呼びます。
>> 雑所得とは? - 雑所得の定義や当てはまる所得の具体例など
>> 総合課税と分離課税の違い
>> 所得税法上における10種類の所得について