収入・売上・必要経費・事業所得・所得控除とは?

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更新日 2020年5月28日

収入・所得・売上・所得控除などの違い

本ページでは、普段なにげなく見聞きしている「収入」や「売上」といった言葉の意味を整理しています。 主に個人事業主向けの解説です。給与所得者(会社員など)の所得については、記事内のリンク先情報を参照して下さい。

収入・売上・必要経費・事業所得・所得控除

収入・売上・必要経費・事業所得・所得控除について、まずは、それぞれの言葉の意味を簡単に見ておきましょう

収入得たお金(対価性のない無償の経済的利益を含む)
売上商品の販売やサービスなどの対価に応じて受け取る代金
必要経費事業を行うために必要な費用
事業所得収入から必要経費を差し引いたもの
所得控除税負担を公平にするために、個人の様々な事情を考慮して差し引かれるもの。
所得税を計算するときに、所得から差し引くことができる

「所得」は、全部で10種類あります。なかでも、個人事業の収入から必要経費を差し引いたものが「事業所得」です。 会社員やアルバイトスタッフが、会社からの給料によって得るのは「給与所得」です。

「収入」と「売上」の違い

一般的には「収入」と「売上」が同じ意味合いで語られています。 ネット上でも「売上とは収入のことデス!」と書かれている事がほとんどです。 この2つの違いをそこまで気にする必要はありません。

厳密に言うと、収入は、売上を含み、対価性のない無償の経済的利益などを含む概念です。 それに対して売上は、商品の販売やサービスなどの対価として受け取る利益を指します。 つまり、収入の方が売上よりも包括的な概念なのです。 ゆえに、所得税などの計算では「売上」ではなく「収入」という言葉が使われます。

しかし、事業を運営していて得るお金はほとんどが「売上」なので、 多くの場で「収入 ≒ 売上」という説明になってしまっています。 あるいは、両者の違いを特に意識せず語られています。

「対価性のない無償の経済的利益」とは?
例えば、国から補助金をうけとった場合。 この場合は受け取った金額を「雑収入」と呼ばれる、収入の一部として計上する。 国からもらう補助金が「売上」ではないということは、理解しやすいはず。

つまり、正しくは「収入 ≧ 売上」ということです。

「必要経費」とは?

「必要経費」とは、事業を運営するために必要な費用のことです。 仕入れ費用などの売上原価だけでなく、広告宣伝費や接待交際費など、収入を得るために使った費用の総称が「必要経費」です。 所得税を計算する上での「必要経費」は、所得税法で定義されており、単に「経費」という言葉とは区別されています。

【引用】
 事業所得、不動産所得及び雑所得の金額を計算する上で、必要経費に算入できる金額は、次の金額です。
(1) 総収入金額に対応する売上原価その他その総収入金額を得るために直接要した費用の額
(2) その年に生じた販売費、一般管理費その他業務上の費用の額

やさしい必要経費の知識 - 国税庁

先述の通り、収入を得るために直接必要なものには仕入れ費用(売上の原価)があります。 収入に直結しない間接的な費用は様々で、旅費交通費・給料賃金・地代家賃などがあります。 これら直接的な費用、間接的な費用の両方を含めたものが「必要経費」というわけです。

「事業所得」とは?

個人事業で得る所得、つまり「事業所得」とは、収入から必要経費を差し引いたものです。 会社員の場合は、収入から「給与所得控除」を差し引いたものが所得(給与所得)となります。

収入 − 必要経費 = 所得(事業所得)

所得税を計算する時には、この所得から「所得控除」を差し引きます。 所得控除とは、個人の実情に応じて税金の負担を軽減してあげる仕組みのことです。 (なお、青色申告特別控除白色申告の専従者控除は、所得控除ではありませんが、これらも差し引くことができます。)

例えば、事故にあって年間の医療費が高額になった場合は医療費控除、 子供を養っている人には扶養控除など、 納税者の生活状況に応じて様々な所得控除が用意されています。 >> 所得控除の一覧

先ほどの「所得」から所得控除を差し引いたものが「課税所得」になります。 課税所得とは、課税の対象となる所得のことを指します。

所得 − 所得控除 = 課税所得

この「課税所得」に応じて定められた税率をかけ、控除額を差し引いた金額が実際に納める所得税になります。 もし税額控除(住宅ローン控除など)がある場合には、それも差し引いて所得税額をもとめます。

課税所得 × 税率 − 控除額 − 税額控除 = 所得税額

所得税の計算方法をおさらい

先ほどの流れで説明した所得税の計算方法をおさらいすると、以下のようになります。

所得税の計算方法
収入 − 必要経費 = 所得
所得 − 所得控除 = 課税所得
課税所得 × 税率 − 控除額 − 税額控除 = 所得税額

国税庁が、所得税を素早くもとめるための「速算表(ソクサンヒョウ)」を公示しており、 課税所得が分かれば、あとは数字を当てはめて計算するだけで所得税額が簡単にもとめられます。

所得税の速算表(平成27年分以降)

課税所得金額税率控除額
195万円以下5%0円
195万円を超え 330万円以下10%97,500円
330万円を超え 695万円以下20%427,500円
695万円を超え 900万円以下23%636,000円
900万円を超え 1,800万円以下33%1,536,000円
1,800万円を超え 4,000万円以下40%2,796,000円
4,000万円超45%4,796,000円

例えば、課税所得300万円の人は税率10%、控除額97,500円
課税所得1,000万円の人は税率33%、控除額1,536,000円となります。

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