寡婦控除とは?2020年分からの新要件や控除額について

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更新日 2023年9月01日

寡婦控除(改正後)について

一般的に「夫と離婚や死別をして、再婚していない女性」を寡婦(かふ)と呼びます。一定の要件を満たす寡婦は、控除額27万円の「寡婦控除」を受けられます。寡婦控除は2020年分の確定申告から改正されており、本記事では改正後の要件等について説明します。
>> 改正前の寡婦控除について

寡婦控除とは - 控除額27万円

夫と離婚 or 死別をした女性は、下記の要件をすべて満たせば、控除額27万円の「寡婦控除」を受けられます。「離婚の場合」と「死別の場合」で要件が異なるところに注意しましょう。

寡婦控除の要件

夫と離婚した場合夫と死別した場合*
① 離婚後、再婚をしていない
② 合計所得金額が500万円以下
③ 子供を養っていない
④ 扶養親族がいる
① 死別後、再婚をしていない
② 合計所得金額が500万円以下
③ 子供を養っていない

*夫が生死不明の場合も同様

国税庁は、寡婦控除の対象者を以下のように説明しています。

引用
寡婦とは、原則としてその年の12月31日の現況で、いわゆる「ひとり親」に該当せず、次のいずれかに当てはまる人です。…(中略)…
(1) 夫と離婚した後婚姻をしておらず、扶養親族がいる人で、合計所得金額が500万円以下の人
(2) 夫と死別した後婚姻をしていない人又は夫の生死が明らかでない一定の人で、合計所得金額が500万円以下の人
寡婦控除の対象となる人の範囲 - 国税庁

「ひとり親に該当せず」という前提も含めて考えると、前述した①~④の要件にまとめられるわけです。以降では、個々の要件について詳しく説明していきます。

要件① 再婚をしていない

離婚・死別に関わらず、再婚をしている場合は寡婦控除の対象になりません。再婚しているかどうかは、控除を適用する年の12月31日時点の状況で判断します。

2023年分の確定申告(2024年に行う確定申告)で寡婦控除を適用するなら、2023年12月31日の時点で独身でないとNGということです。

再婚の有無は12月31日時点の状況で判断(寡婦控除)

たとえば、2024年1月1日以降に再婚をしても、2023年分の確定申告では寡婦控除の対象に含まれます。実際に確定申告を行う時点では、再婚していても問題ないわけです。

なお、離婚や死別のタイミングについては、とくに規定がありません。離婚や死別をしたのが「10年前」でも「つい最近」でも、12月31日の時点で再婚をしていなければ、ひとまずこの要件はクリアできます。

要件② 合計所得金額が500万円以下

「合計所得金額」とは、簡単に言うと「10種類の所得をすべてひっくるめた金額」のことを指します。ほとんどの人は、そもそも1種類の所得(給与所得事業所得など)しか得ていないので、単純にその所得が500万円を超えていないかチェックすればOKです。

ただ、複数の所得を得ている人は要注意です。具体的には、下図のように考える必要があります。

合計所得金額は損益通算後の金額

損益通算とは、一定のルールに従って「赤字の所得」と「黒字の所得」を相殺する処理のことです。事業所得や不動産所得が赤字の場合は、この処理を行ったうえで、残った金額が500万円を超えないか確認することになります。

なお「長期譲渡所得」と「一時所得」を2分の1にするのは、税額を計算する際のルールです。深く考えず、ひとまずこの通りに計算しましょう。

要件③ 子供を養っていない

寡婦控除は、あくまで「子供を養っていない寡婦」のための制度です。他の要件を満たしていても、子供を養っていると寡婦控除の対象からは外れます。(その場合は、控除額35万円の「ひとり親控除」の対象になる)

注意すべきポイントは、「子供がいるかどうか」ではなく「子供を養っているかどうか」が要件になっている点です。

寡婦控除とひとり親控除(子供を養っているか)

ここで言う「子供を養っている」とは、下記の両方に該当する状態を指します。

  • 子供と生計を一にしている
  • 子供の総所得金額等が48万円以下である

「生計を一にしている」とは、簡単に言うと「同じ財源で生活している状態」を指します。つまり、あなたが稼いだお金で生活している子供は、あなたと「生計を一にしている」と見なされます。なお、国税庁によれば、別居でもこれに該当する場合があります。

引用
会社員、公務員などが勤務の都合により家族と別居している又は親族が修学、療養などのために別居している場合でも、①生活費、学資金又は療養費などを常に送金しているときや、②日常の起居を共にしていない親族が、勤務、修学等の余暇には他の親族のもとで起居を共にしているときは、「生計を一にする」ものとして取り扱われます。
生計を一にする - 国税庁

「総所得金額等が48万円以下」については、そもそも子供に収入がなければ無視して構いません。子供がアルバイトをしている場合は、給与所得が48万円以下に収まるか確認しておきましょう。(アルバイト収入が103万円を超えると、給与所得は48万円を超える)

要件④ 扶養親族がいる(離婚の場合のみ)

夫と死別をしておらず、単に離婚しただけの場合は、①~③に加えて「(子供以外の)扶養親族がいること」という要件が課されます。「扶養親族」とは、下記の要件をすべて満たす人を指します。

扶養親族の要件

  • あなたの親族(6親等内の血族及び3親等内の姻族)や里子などである
  • あなたと生計を一にしている
  • その人の合計所得金額が48万円以下である
  • あなたが営む事業の専従者でない*

* 青色事業専従者の場合、その年に給与を受け取っていなければOK

基本的に、あなたの収入で一緒に生活している親族(親や兄弟など)は、あなたの「扶養親族」に当たると考えてOKです。常に生活費などを送金しているなら、一緒に暮らしていなくても問題ありません。

ただ、その親族に収入がある場合は注意が必要です。たとえば、アルバイトやパートの給料が年間103万円を超えると、合計所得金額が48万円を超え、「扶養親族」には該当しなくなってしまいます。
>> 扶養親族の定義について詳しく

従来の寡婦控除との違い【2019年まで】

寡婦控除は、「ひとり親控除」の新設に伴い、2020年分の確定申告から制度内容が改正されました。継続して適用を受ける人は、変更点に注意しましょう。

改正前
(2019年以前の所得に適用)
改正後
(2020年以降の所得に適用)
控除額一般の寡婦:27万円
特別の寡婦:35万円
27万円
主な対象寡婦全般子供を養っていない寡婦
所得要件一部の場合のみ課される必ず課される

改正前、控除の対象者は「一般の寡婦」と「特別の寡婦」に区別され、それぞれ控除額が異なりました。しかし、改正後は一般・特別の区別がなくなり、控除額も一律27万円になっています(「特別の寡婦」に相当する人は「ひとり親控除」の対象になった)。

2019年分以前の還付申告では改正前の制度に従う!

2019年以前の所得について還付申告などをする場合、寡婦控除は従来の制度内容に従って適用されます。改正後の内容は、「2020年以降に行う申告」に適用されるのではなく、あくまで「2020年分以降の所得」に適用されるという点に注意しましょう。
>> 従来の寡婦控除について詳しく

まとめ

寡婦控除は、夫と離婚 or 死別をした女性を対象とする、控除額27万円の所得控除です(住民税の控除額は26万円)。受けるための要件は「離婚の場合」と「死別の場合」で異なります。

寡婦控除の要件

夫と離婚した場合夫と死別した場合*
① 離婚後、再婚をしていない
② 合計所得金額が500万円以下
③ 子供を養っていない
④ 扶養親族がいる
① 死別後、再婚をしていない
② 合計所得金額が500万円以下
③ 子供を養っていない

*夫が生死不明の場合も同様

再婚の有無は、控除を適用する年の12月31日時点の状況で判断します。12月31日の時点で独身なら、実際に確定申告をするタイミングでは再婚していても問題ありません。

「合計所得金額」については、そもそも1種類の所得しか得ていないなら、その所得の金額で考えればOKです(長期譲渡所得・一時所得は2分の1の金額)。ただ、複数の所得を得ている場合は、以下のように計算しましょう。

合計所得金額と総所得金額等の考え方

なお、「子供を養っている」と言えるかどうかの判定には「総所得金額等」という言葉が登場します。これは、上図のとおり「合計所得金額に繰越控除を適用した金額」のことです。ほとんどの人は繰越控除を受けないので、「合計所得金額 = 総所得金額等」になります。

>> ひとり親控除について
>> 扶養控除 - 扶養親族の定義について詳しく
>> 従来の寡婦控除について