個人事業主・自営業者・フリーランスの違い

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更新日 2022年2月09日

個人事業主・自営業者・フリーランスの違い

「個人事業主」とは、事業の種類や規模に関わらず「会社を設立せずに事業を営んでいる人」のことです。似た言葉に「自営業者」や「フリーランス」がありますが、必ずしも同じ意味ではありません。

個人事業主・自営業者・フリーランス

まずは3つの言葉の意味を確認しておきましょう。

個人事業主
(個人事業者)
法人(株式会社など)を設立せずに事業を行う人
業種や規模に関わらず、個人の事業者を指す
自営業者自ら事業を営む人
広義には、個人事業主に加えて小規模企業のオーナー経営者も含めた表現
フリーランスひとつの組織に専従せず、案件単位の契約で仕事をする人
特定の働き方をする人を指し、個人事業主以外を含める場合もある

基本的には、下図のように分類できます。個人事業主であっても、コンビニや美容室といった店舗オーナーをしているようなケースは多く、そのような人のことをフリーランスとは呼びません。たとえばそのような人が、個人事業主の中でフリーランスには該当しない部分にあたります。

個人事業主・自営業者・フリーランスの違い

また、フリーランスであっても、小規模企業経営者(オーナー経営者)のケースがあります。いわゆる「一人会社」で、フリーランスの働き方をしていながら、節税目的などで法人にしているケースがこれにあたります。

「個人事業主」とは?

法律上では「個人事業主」ではなく「個人事業者」という言葉が用いられます。消費税法において「個人事業者」は、「事業を行う個人」と定義されています。

【引用】
三 個人事業者 事業を行う個人をいう。
四 事業者 個人事業者及び法人をいう。
消費税法 第2条(定義)

たとえば、消費税法や地方税法では「事業者」が、「個人事業者」と「法人」に区別されています。つまり、事業の種類や規模に関わらず、「法人ではない事業者」はすべて「個人事業者」に該当するといえます。

個人事業主(個人事業者)と法人の定義

法文では「個人事業主」という言葉を見かけませんが、「個人事業者」も「個人事業主」も同じ意味としてとらえてよいでしょう。 国税庁のウェブサイトでも、これらの表現は統一されていないようです。

【引用】
「事業者」とは、個人事業者(事業を行う個人)と法人をいいます。
タックスアンサー No.6109 - 国税庁

【引用】
新たに業務を開始した個人事業主については、その業務の開始の日以後2か月 を経過する日まで、承認申請書の提出を行うことができます。
帳簿の記帳のしかた - 国税庁

どの時点から「個人事業主」?

「税務署へ開業届を提出したら個人事業主」という考え方もあります。しかし、開業届を出していなくても、個人で事業を営んでいる実態があるなら、税務上は「個人事業主」として扱われます。

専業と副業

下記のような人はすべて「個人事業主」に該当します。 なお、ここで言う「個人事業」とは「法人を設立せずに行う事業」の全般を指しています。

  • 個人事業の収入だけで生計を立てている人
  • 個人事業を営みながら、副業として会社などに勤めている人
  • 会社などに勤めながら、副業として個人事業を営んでいる人

「自営業者」とは?

「自営業者」は、「自ら事業を営む者」の俗称です。一般的には個人事業主を指す場合が多いですが、本来の意味に従えば、小規模企業の経営者も含めた表現と言えます。もちろん、大企業などの経営者を指して「自営業者」と呼ぶのは不自然ですから、あくまで小規模な企業までに限定されるのが順当です。

じえい - ぎょう【自営業】
自ら事業を営んでいること。また、自ら経営する事業。
広辞苑 第七版

行政機関などは、小規模企業の経営者も含めて「自営業者」と表現することが多いです。ただ、用法は省庁によって異なることもあり、厳密な定義が必要な場合は「自営業者とは〇〇を指す」と明記されています。

参考までに、中小企業庁が公開している「中小企業白書」では、「自営業者」をあくまで一般的な用語としたうえで、下記のように再定義しています。

【引用】
……ここで言う「自営業者」は、他人に雇われるのではなく自らの事業のために働く事業主という意味での一般的な用語であるが、その範囲を考えると、個人企業と法人企業とは全く異なる実態を持つ存在というわけではなく、自営業の実態をよりよく把握する上では個人企業と実態的に大差の無い法人企業層を取り入れた上で「自営業者」概念を構築し、分析対象とする必要がある。具体的には、家族経営等の生活と事業との関連が深いことに着目して定義されている小規模企業者(「中小企業基本法」により常時使用する従業員の数が20人(卸売業、小売業、飲食店、サービス業は5人)以下の事業者と定義されている)を「自営業者」として捉える事が適切な場合が多いと考えられる。
中小企業白書 2005年版 第3部 第3章 第2節 2.中小企業を巡る環境の変化と開業率 - 中小企業庁

ここでは、個人・法人の区別は関係なしに、個人事業主と小規模企業の経営者を「自営業者」としてとらえるのが適切ではないかと述べられています。

「フリーランス」とは?

「フリーランス」は、特定の組織に専従せず、案件単位の契約(請負契約・委任契約など)で仕事をする人のことです。あくまで、特定の働き方をしている人を指す言葉であり、必ずしも「フリーランス = 個人事業主」というわけではありません。

フリー - ランス【freelance】
(もと中世の傭兵の意)特定の組織に属さず仕事をする人。自由契約の記者・作家や無専属の俳優・歌手など。
広辞苑 第七版

働き方の多様化によって、「フリーランス」の幅は広がりつつあります。たとえば、いわゆる「一人会社」の経営者なども、その事業形態によっては「フリーランス」と呼んで差し支えありません。

フリーランス協会(一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会)は、フリーランスを大きく「独立系」と「副業系」の2種類に分けています。

【引用】
……企業や組織に属さず雇用関係を持たない独立系フリーランスには、法人経営者(法人成りしている人)、個人事業主、 すきまワーカー(開業届未提出の個人)がいて、たいていが業務委託契約や準委任契約で仕事を請け負う。……一方、副業系フリーランスは、基本的に主となる企業や組織に雇用され、すきま時間を使って個人の名前で仕事をしている。副業系フリーランスには、1社に雇用されながら起業する人、1社に雇用されながら他の組織や個人と契約を結ぶ人、2社以上に雇用される人がいる。
フリーランス白書2018 - フリーランス協会

この「独立系フリーランス」の中に、法人経営者が含まれています。 「フリーランス」という言葉も、個人・法人の区別は重要でなく、その人の「働き方」を重要視した呼称だといえます。

まとめ

「個人事業者」は、消費税法や地方税法に従えば「法人ではない事業者」と定義できます。それに対して「個人事業“主”」はあくまで一般的な表現ですが、同様の意味で使われる言葉と考えてよいでしょう。

一方「自営業者」と「フリーランス」は、どちらも一義的に用法を定めるのが困難ですが、 もし個人事業主という言葉を含めて定義するならば、下記のように表現できます。

  • 自営業者………小規模な法人経営者や個人事業主
  • フリーランス…請負や委任の契約で働く、個人事業主や一人社長

なお「一人社長」とは、「自分しか所属していない会社を運営する人」を指す俗称です。たとえば、個人事業の延長で会社を設立した人などが該当します。

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