白色申告・青色申告10万・55万・65万円控除の納税額の違い

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更新日 2021年5月26日

白色申告と青色申告の税金の違い

白色申告と青色申告の種類

白色申告に特別控除はありません。青色申告の「青色申告特別控除額」は、10万円・55万円・65万円の3段階です。

白色申告青色申告
簡易簿記簡易簿記現金式簡易簿記複式簿記複式簿記 + 電子*
控除なし10万円控除10万円控除55万円控除65万円控除

*青色申告で65万円控除を受けるには「電子申告 or 電子帳簿保存」が要件

青色申告の10万円控除は、簡易簿記と現金式簡易簿記の2種類に分けられます。55万円控除と65万円控除は、どちらも複式簿記が必須です。
>> 簡易簿記・現金式簡易簿記・複式簿記の違い

これらは「控除」であって、実際にまるまる10万円節税になったり、 納税額が65万円少なくなるということではありません。 この控除額によって実際に納める税額にどのくらい差が出てくるのか、本ページで順番に解説していきます。

青色申告特別控除が反映される「所得税」と「住民税」で見ていきます。 ちなみに「消費税」や「個人事業税」には青色申告特別控除が反映されません。
>> 個人事業主が納める税金をおさらい

所得税で納税額を比較

まずは所得税の計算からです。以下の計算式で、所得税の金額を算出します。 「各種控除」の部分に、青色申告の特別控除額を含めます。

所得税の計算式
収入 - 必要経費 - 各種控除 = 課税所得金額
課税所得金額 × 税率 - 控除額 = 所得税額
>> 所得税の計算方法や税率について

※住宅ローン控除などの「税額控除」がある場合は、所得税額から差し引く

課税所得金額に応じて、税率と控除額が決まります。 課税所得と税率・控除額については下の表を参照してください。

課税所得金額税率控除額
195万円以下5%0円
195万円を超え 330万円以下10%97,500円
330万円を超え 695万円以下20%427,500円
695万円を超え 900万円以下23%636,000円
900万円を超え 1,800万円以下33%1,536,000円
1,800万円を超え 4,000万円以下40%2,796,000円
4,000万円超45%4,796,000円

(平成27年分以降用)

「収入700万円・必要経費200万円・各種控除120万円」と仮定し、所得税額を比較してみます。これらの金額を、先ほどの計算式に当てはめて算出します。

白色申告の場合
700万 - 200万円 - 120万円 = 380万円
380万円 × 20% - 427,500円 = 332,500円(所得税額)

青色申告10万円控除の場合
700万 - 200万円 - 10万円 - 120万円 = 370万円
370万円 × 20% - 427,500円 = 312,500円(所得税額)

青色申告55万円控除の場合
700万 - 200万円 - 55万円 - 120万円 = 325万円
325万円 × 10% - 97,500円 = 227,500円(所得税額)

青色申告65万円控除の場合
700万 - 200万円 - 65万円 - 120万円 = 315万円
315万円 × 10% - 97,500円 = 217,500円(所得税額)

本例では、それぞれの所得税額が以下のようになりました。

白色申告青色申告
10万円控除
青色申告
55万円控除
青色申告
65万円控除
所得税額 332,500円所得税額 312,500円
白色との差額
-20,000円
所得税額 227,500円
白色との差額
-105,000円
所得税額 217,500円
白色との差額
-115,000円

この場合、青色申告10万円控除では所得税が20,000円の節税になり、 青色申告65万円控除では115,000円の節税になるということです。

住民税で納税額を比較

住民税には、均等割と所得割の2種類があります。この2種類を合計した金額を、住民税として納付します。

均等割

「均等割」は、みんな一律の金額を納めるもので、ほとんどの地域では年間5,000円程です。 均等割に青色申告特別控除は関係しません。 なお、所得がかなり低い場合には、納めなくてもよいことになっています(住民税の非課税について)。

所得割

「所得割」は、納税者の所得に応じて金額が変わります。 ほとんどの地域で、税率は10%です。この所得割に、青色申告特別控除が影響します。

住民税(所得割)の計算式
(所得金額 - 所得控除額)× 10% = 所得割の税額

※ふるさと納税などで「税額控除」がある場合は、所得割額から差し引く

青色申告特別控除は、計算式の「所得控除額」に入ります。 ですので、基本的には青色申告控除額に10%をかけた額がそのまま節税額となります。

要するに、住民税は所得金額がそこまで低くなければ、 青色申告10万円控除の場合は白色申告より10,000円節税になります。青色申告65万円控除の場合は白色申告より65,000円節税になると覚えておけばOKです。

納税額の違い【比較一覧表】

5パターンの所得金額別に、白色申告と比較した場合の節税額をまとめました。 下表は、納税額の違いをおおまかにとらえる目安としてご覧ください。 「この所得金額であれば納める税金がどれほどになって、青色申告特別控除による節税額がどれくらいになるか」ということをざっくり理解するための表です↓

所得金額 - 各種控除* = 課税所得
課税所得 × 税率 - 控除額 = 所得税(税率と控除額は先述の表を参照)
課税所得 × 10% = 住民税(所得割)
*本例では、青色申告特別控除・基礎控除・社会保険料控除だけを考慮して概算

所得税と住民税(所得割)の節税額

白色申告青色申告
10万円控除
青色申告
55万円控除
青色申告
65万円控除
所得金額
200万円
所得税 56,000
住民税 117,000
合計 173,000
所得税 51,000
住民税 107,000
合計 158,000
白色との差額 −15,000
所得税 28,500
住民税 62,000
合計 90,500
白色との差額 −82,500
所得税 23,500
住民税 52,000
合計 75,500
白色との差額 −97,500
500万円 336,500
387,000
723,500
316,500
377,000
693,500
−30,000
229,500
332,000
561,500
−162,000
219,500
322,000
541,500
−182,000
800万円 876,500
657,000
1,533,500
856,500
647,000
1,503,500
−30,000
766,500
602,000
1,368,500
−165,000
746,500
592,000
1,338,500
−195,000
1,000万円 1,323,600
857,000
2,180,600
1,300,600
847,000
2,147,600
−33,000
1,197,100
802,000
1,999,100
−181,500
1,174,100
792,000
1,966,100
−214,500
2,000万円 4,612,000
1,857,000
6,469,000
4,572,000
1,857,000
6,419,000
−50,000
4,394,100
1,802,000
6,196,100
−272,900
4,361,100
1,792,000
6,153,100
−315,900

※ 表の中の「所得金額」は、青色申告特別控除前の金額

表の中の赤い文字が、白色申告と比較した差額です。 つまり、青色申告特別控除による所得税と住民税(所得割)の節税額を表します。 納税額は各人の控除などによって前後するので、目安としてとらえてください。

復興特別所得税

平成25年から令和19年までの各年分においては「復興特別所得税」もあわせて課税されます。

復興特別所得税の計算式
所得税額 × 2.1% = 復興特別所得税

表の一番左上の例、所得税55,000円の場合は「55,000円 × 0.021 = 1,155」で、納税確定額の100円未満は切り捨てるので、1,100円が復興特別所得税額となります。これを所得税と合計して納めます。
55,000円 + 1,100円 = 56,100円(所得税+復興特別所得税)

青色申告特別控除は国民健康保険料にも影響する

本ページで挙げた「所得税」と「住民税」に加えて、 「国民健康保険料」の計算にも青色申告特別控除が反映されます。 国保の計算方法はお住まいの自治体によって異なります。

>> 複式簿記の知識がない!それでも青色申告55万円・65万円控除を狙うには?
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>> 青色申告特別控除の改正点【2020年分から】