会社設立(法人化)を選択するメリット

法人化(会社設立)のメリットとデメリット

開業にあたって、個人事業ではなく会社設立することのメリットとデメリットをまとめました。

会社設立のメリット会社設立のデメリット

社会的な信用度が増す

  • 取引先、仕入れ先などからの信用
  • 社員やアルバイトなど、従業員の採用が有利になる
  • 金融機関等からの融資が受けやすくなる

取引先、仕入れ先などからの信用

法人(株式会社など)にすることで、取引先や仕入れ先からの信用が増します。
取引先によっては個人事業との取引は行わない企業もあり、
取引先から法人化を要求されるケースもあります。

従業員の採用が有利になる

従業員にとっても個人事業所に勤務するより法人に勤務する方が安心感があり、応募意欲も高まります。 後述の社会保険も、従業員にとってはメリットのひとつになります。

融資が受けやすくなる

金融機関を納得させる事業計画を出せる事が前提で、
個人では難しい資金量を調達できる可能性が高まります。
ただし、創業融資において個人事業よりも法人の方が有利かというと必ずしもそうでありません。

節税につながる

  • 法人税率は一定
  • 課税所得の計算で給与所得控除が差し引かれる
  • 退職金や生命保険料などを会社の経費にできる
  • 赤字の繰越し額が3年から9年に延びる
  • 相続税がかからない

法人税率は一定

法人所得と個人所得の調整により節税が可能になります。
個人事業では収入 − 経費 = 事業所得となり、
この事業所得に応じて最高45%の税率が課されます。 >> 所得税の計算式と税率について
法人税は800万円以下が15%で、800万円を超える部分は25.5%の税率です。
つまり、利益が多いほど税金面では法人の方が有利になるわけです。

課税所得の計算で給与所得控除が差し引かれる

法人の場合には、経営者の給料が役員報酬として経費扱いになります。
そして、経営者の給料は給与所得控除が差し引かれて、
それに所得税がかかることになります。>> 会社員の所得について

退職金や生命保険料を経費にできる

個人事業主への退職金という制度はありません。(それに近い共済はありますが)
法人にすると退職金という制度が用意されている上、
個人事業では「控除」扱いの生命保険料を経費にすることができます。
控除よりも経費になる方が節税になります。

赤字が9年繰り越せる

個人事業での赤字の繰越は青色申告で最長3年ですが、
法人は9年まで赤字を繰り越す事ができます。

相続税がかからない

会社設立をして資産を法人名義にすれば、子供などへ事業を承継する時に相続税がかかりません。

決算月を自由に決められる

個人事業の場合は1月1日~12月31日が事業年度と決まっていますが、
法人の場合は決算月を自由に決めることができます。

法人であれば、決算月が12月でなくても良い訳です。

日本の企業は3月か12月に決算月を設定している場合が多いのですが、
事業の繁忙期や確定申告時期を避けて決算月を決めることができるので、
上手く設定することで事業運営がスムーズになる場合があります。

無限責任ではなく、有限責任となる

個人事業主は事業の負債に対して無限責任を追いますが、
株式会社などの法人であれば出資の範囲内で責任を負うことになります。

無限責任とは、会社が倒産した場合などに負債の全額を支払う責任を負う事です。

ただし、一般的な中小企業では銀行などからの借入金について、
代表取締役の連帯保証が求められます。
つまり、中小企業の多くのオーナー社長については実質的に無限責任を負っているというのが現状です。

経営のモチベーションになる

会社設立のためには、約30万円の登記費用をかけて開業することになります。
設立費用をかけずに開業届の提出だけで開業できる個人事業とは異なり、
責任をもって経営をしていこうというモチベーションが生まれます。

また個人事業の廃業は簡単ですが、法人の廃業には手間と費用がかかります。
これも会社を運営する上で後には引けないという気持ちにさせ、
経営者にとって良い刺激となるでしょう。

名刺の肩書きに「代表取締役」と記載できるのも経営者のモチベーションのひとつです。
ちなみに個人事業の場合は「代表」という記載になります。

会社設立(法人化)を選択するデメリット

設立コスト、ランニングコストが増す

  • 会社設立の際に約30万円の登記手続き費用が必要
  • たとえ赤字でも法人住民税約7万円は毎年必ず納付する必要がある
  • 各種手続き、税務が煩雑になるため専門家に依頼することになる(税理士費用など)

登記手続きで30万円が必要

個人事業は開業届と呼ばれるA4用紙に自分で記入して提出するだけで、
料金がかからず手軽に開業できます。
しかし会社設立する場合には登記手続きが必要で、
一般的には設立代行会社や司法書士に書類作成等をお任せする形になります。
この手数料を合わせて設立費用として約30万円必要です。
(電子定款認証費用 約5万円、登録免許税 15万円、専門家への手数料 5万円~15万円)

法人住民税(均等割)として年間約7万円のコスト

たとえ会社が赤字でも法人住民税として年間で約7万円の税金が必ず発生します。
これは事業所ごとにかかる税金で、例えば2カ所で事業を展開している場合は、
7万円 × 2 = 14万円(年間)の法人住民税(均等割)がかかります。
これは個人事業には無い出費です。

各種手続きの代行料が余計に発生する

法人会計は個人事業の会計に比べて複雑なので、
会計業務は一部を税理士に任せることになります。
顧問契約を結ぶとなると、年間30万円以上のコストが増すと思っておきましょう。

また、個人名義での銀行口座では特に維持費がかかりませんが、
例えばメガバンク(みずほ、三菱東京UFJ、三井住友など)の法人口座は、
月額基本料だけで毎月2,000円以上の固定費が必要になります。
(法人口座でも、ゆうちょ銀行や一部のネット銀行では月額料金がかかりません。)
この他にも、あらゆる民間サービスで法人名義での契約の方がサービス料金が高くついてしまいます。

つまり、所得(利益)が少ない場合には個人事業の方が有利なのです。
いくら以上の所得であれば法人の方が良く、いくら以下であれば個人事業の方が良い、
という明確なラインは存在しません。

事業者の状況によって大きく前後しますが、
一般的には個人事業で課税所得400万円~900万円あれば法人化を検討しても良い、
と言われています。(課税所得 = 収入 − 経費 − 所得控除)
基準にずいぶんと開きがありますが、
個々の事業者の状況に左右され、専門家の間でも意見がわかれる所です。

インターネット上では、基本的に税理士サイトを中心にこの額が低めに見積もられているので注意しましょう。 会社設立を選択してくれれば、税理士の仕事が増えるからです。

1年間の儲けを予想して経営者の給料を決めなければならない

個人事業の場合は年間を通して得た所得が、事業主の取り分になります。
(所得 = 収入 − 経費)

しかし、法人の場合は、経営者の給料が経費になります。
この給料はあらかじめ毎月の取り分を期首に決めておく必要があります。
役員報酬は1年間、金額を固定しなければ経費として認められません。

(ただし、決算から3ヶ月以内であれば金額を改定することもできる)
(従業員への給与は毎月変動しても経費として認められる)

ちなみに、業績が良くなったからといって役員へボーナスを支払っても、
これは経費にはできません。
(事前に届け出ていれば経費にできる。役員報酬の事前届出制度)

基本的に年度の途中で役員の報酬を変更することはできません。
なので、収入が安定していない仕事では給料をいくらに設定するかが決めづらく、
効果的な節税が難しいということになります。

社会保険への強制加入

個人事業の場合は、従業員を雇っていても5人以内であれば社会保険は任意加入です。
入るか入らないかは従業員の話し合いで決めることができます。
(従業員5人以上の場合は、基本的に強制加入)
>> 個人事業での従業員の社会保険について

一方、法人の場合は社会保険へ強制加入となります。
経営者一人だけの会社でも社会保険の強制加入の対象となります。

また、一人でも社員を雇う場合には労働保険に入る必要があります。

企業は雇用者として、従業員の社会保険料の半額を支払う必要があります。
法人にすると従業員の社会保険加入は強制になるので、
その分だけ運営コストが増すと思っておきましょう。

ちなみに、個人事業主が加入する国民年金の月額は大体16,000円程です。
一方、厚生年金は給料によって保険料が決まります。(月額の上限は約90,000円)
もちろん、たくさん納付する分、将来受け取れる金額も多くなります。

交際費が全額経費にならない

個人事業の場合、接待交際費を青天井でつけることができます。
定められた上限額はありません。
(もちろん、常識の範囲内でなければ税務調査で指摘される元になります。)

法人の場合は、接待交際費の上限が定められています。
資本金1億円以下の法人で、1年間で800万円まで接待交際費にできます。

事務負担の増加

  • 会社組織としての事務作業(登記の変更等)
  • 労働保険・社会保険
  • 会計は複式簿記・年に一度の決算

会社組織としての事務作業(登記の変更等)

まず、会社設立のための手続きが複雑なので、
会社設立の代行会社か税理士に設立を手伝ってもらう必要があります。
(この設立費用で25万円前後の費用が発生)
設立後に、会社名や事業の目的を変更するときにも登記手続きが必要です。

労働保険・社会保険

上述しましたが、労働保険・社会保険などへの加入手続きも
法人における事務負担増加のひとつです。

会計は複式簿記・年に一度の決算

事業運営における税務、各種の手続きも複雑になるので、
これも基本的に外注する形になります。
個人事業であれば、会計ソフト1本とその解説を見れば一人で確定申告できますが、
法人では難しくなるので決算の作業などを税理士にお任せすることになります。

事業の廃止に手間と費用がかかる

個人事業では事業を辞めたいときに比較的簡単に辞めることができます。
設立費用も廃業費用もかかりません。

しかし、一度会社を設立するとこれを辞めるときの清算手続きに手間と費用が発生します。
具体的には、解散登記3万円、清算人選任登記9,000円、清算結了登記2,000円
この手続きを司法書士に依頼する場合には約5万円の費用が別途発生します。

>> 個人事業の開業に関する情報まとめ - 個人事業主の起業準備