個人事業での給料賃金とは? - 消費税区分や専従者給与との違い

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更新日 2021年1月18日

個人事業での給料賃金

個人事業での給料賃金とは?

給料賃金とは、従業員へ支払う給料や手当のことを指します。 「給与」や「給料」「給与手当」なども同じ意味ですが、確定申告で提出する決算書には「給料賃金」と記載されています。 従業員を雇わず、一人で仕事をしている個人事業主には関係のない勘定科目です。

従業員への基本給や残業手当などが、給料賃金にあたります。 給料賃金として帳簿につける金額は、源泉徴収分などを差し引く前の総支給額です。

給料賃金の消費税区分は「不課税」です。
(ただし、「通勤手当」や「現物給与」は課税でつけます。)

従業員を雇って給与の支払いをするには、事前に届出が必要です。 給与の支払開始から1ヶ月以内に、税務署へ「給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出」を提出する必要があります。 このA4用紙1枚を提出するだけで、難しいものではありません。
国税庁 - [手続名]給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出

給料賃金の仕訳方法・仕訳例

例えば、従業員の月給が300,000円の場合でみてみましょう。 このうち、健康保険料15,000円、厚生年金25,000円、源泉徴収税10,000円を差し引いて従業員に給与を支払うとします。 (説明を分かりやすくするため、実際の税額ではない単純な金額にしています。)

15,000 + 25,000 + 10,000 = 50,000円
この差し引いた50,000円は、勘定科目「預り金」で帳簿づけします。 これは、従業員の代わりに納めておく保険料や税金を、一時的に預かっておくときなどに用いる科目です。 まず、事業用の預金口座から給与を振り込む場合には、以下のように帳簿づけします。

複式簿記での帳簿づけ例

日付借方貸方摘要
20XX年5月20日給料賃金 300,000普通預金 250,0004月分給与
預り金 50,000

そして、預かった保険料や源泉所得税は、実際に納税した時点で、下記のように帳簿づけします。 例えば、預かった50,000円のうち、源泉徴収した所得税10,000円を現金で納めた場合、以下のように帳簿づけします。

複式簿記での帳簿づけ例

日付借方貸方摘要
20XX年6月5日預り金 10,000現金 10,000源泉徴収税の納付

残りの健康保険料や厚生年金も、納税した日付で同じように処理しましょう。 なお、従業員の給与から源泉徴収した所得税は、給与日の翌月10日までに納付するのが原則ですが、年2回にまとめて納付することもできます。 >> 源泉所得税の納期の特例

事業主本人の給与はどうする?

個人事業の場合、事業の収入から経費などを差し引いて、残った利益が個人事業主の所得という事になります。 個人事業主への給与は経費にできませんし、そもそも個人事業においては「個人事業主への給与」という考え方もしません。

もし事業用として使っている銀行口座から個人事業主のための生活費などをおろした場合には、 「事業主貸」の勘定科目を用いて、そのことを帳簿づけすればOKです。

事業用の銀行口座から個人事業主の生活費など、 プライベートな引き落としや支出をした場合には以下のように帳簿づけします。 例)事業用口座から事業主の生活費20万円を引き落とした

複式簿記での帳簿づけ例

日付借方貸方摘要
20XX年5月20日事業主貸 200,000普通預金 200,000私費のため

このような場合、摘要は空欄でも構いません。 「事業主貸」は個人事業に特有の勘定科目です。 上記の仕訳は「事業用の銀行口座から20万円を、事業主の個人的な用途で引き出した」ということを表します。

給料賃金と専従者給与を区別しよう

個人事業主で、生計をともにしている家族や親族に仕事を手伝ってもらっている人もいるかと思います。 個人事業を手伝ってくれる家族従業員のことを「専従者」と呼びます。 (「専従者」の要件に関しては、以下の専従者給与に関するページを参照)

青色申告の場合、事前申請により専従者への給与を必要経費として計上できます。 専従者へ支払う給与は「給料賃金」の勘定科目で記帳するのではなく、「専従者給与」で記帳します。専従者給与も経費の勘定科目ですが、専従者への給与だと分かるよう、給料賃金とは区別して使うことになっています。

白色申告の場合、専従者への給与が青色申告のようには経費計上できません。 白色申告の場合、厳密には控除の対象になります。節税の観点からは、白色申告のほうが少し不利です。
>> 白色申告の専従者控除 - 計算例や要件など

>> 個人事業主・従業員・専従者 - それぞれの給与ってどう記帳する?
>> 個人事業で使う必要経費の種類一覧へ