個人事業主になるには?開業までに最低限必要な手続き

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更新日 2023年9月01日

個人事業主になるには?

「脱サラして個人事業を始める人」と「副業で個人事業を始める人」に向けて、開業までに行うべき最低限の手続きを説明します。会社の立ち上げと比べると、個人事業主になるための手続きはとても簡単です。また、基本的には手数料なども一切かかりません。

手続きの流れ

個人事業を始める際の手続きは、大きく以下の3つに分けられます。「これだけ?」と思うかもしれませんが、金銭的・時間的なコストをかけずに始められるのが、個人事業のメリットでもあります。

① 社会保険の手続き退職の翌日から14日以内
(会社に所属したまま個人事業を始める場合は不要)
② 許認可の取得営業を始めるまで
(許認可が不要な業種も多い)
③ 税務署への届け出開業から1ヶ月以内

副業で事業を始める場合、社会保険の手続き(①)は不要です。また、ライターやプログラマーなど、営業に許認可が要らない業種なら、許認可の取得(②)も必要ありません。

ちなみに、税務署への届け出(③)をしなくても、特に罰則はありません。ただ、最初の年から節税したいなら、キチンと手続きを済ませておきましょう。(詳細は後述)

そもそも個人事業主とは?
厳密に言えば「個人事業主」とは、法人(株式会社など)を設立せずに事業を行う個人を指す。つまり、特に手続きをしていなくても、個人で事業を行っている以上は「個人事業主」として扱われる。ただ一般的には、上記のような手続きを済ませた時点で「個人事業主になる」と考えることが多い。
>> 個人事業主について詳しく

① 社会保険の手続 - 脱サラの場合のみ

会社員と個人事業主では、加入する年金保険・医療保険が異なります。脱サラしたら「国民年金」と「国民健康保険」の手続きをしましょう。この手続きは、退職の翌日から14日以内に行います。

加入する公的年金保険・公的医療保険の違い

会社員個人事業主
年金保険厚生年金 + 国民年金(第2号被保険者)国民年金(第1号被保険者)
医療保険健康保険国民健康保険

手続きは、市区町村の役所でまとめて行えます。この際、退職を証明する書類(離職票や健康保険の資格喪失証明書など)が必要になるので、退職時に受け取っておきましょう。なお「厚生年金」や「健康保険」の脱退手続きは、会社が代わりに済ませてくれます。

国民年金の手続きについて

20~60歳の個人事業主は、基本的に「第1号被保険者」として国民年金に加入します。ほとんどの会社員は「第2号被保険者」として加入している状態なので、この切り替え手続きが必要です。

ちなみに、配偶者(会社員)に養ってもらうなら「第3号被保険者」として加入できる場合もあります。第3号被保険者になれば、保険料の納付が不要になります。が、そもそも「年収130万円以下」などの要件を満たさないと該当しません。>> 国民年金 第1号,第2号,第3号の違い

国民健康保険の手続きについて

脱サラしたら、都道府県が運営する「国民健康保険」に加入します。業種によっては、その業種に特化した「国民健康保険組合」を選択することもできます。これらは、民間の医療保険(がん保険など)とは異なり、加入が必須の「公的医療保険」です。

なお、最大2年間にわたって、会社の健康保険に継続加入できる制度もあります(任意継続)。とくに家族を養っている人は、これを利用したほうが保険料を抑えられる場合があるので、必要に応じて会社に確認しておきましょう。
>> 個人事業主の社会保険について詳しく

② 許認可の取得 - 必要な業種のみ

業種によっては、営業にあたって保健所や警察署の許認可が必要になります。いわゆるフリーランス系の業種(ライター・プログラマー・デザイナー等)では許認可がいらない場合が多いですが、とくに店舗を構えるような業種では要チェックです。

許認可が必要となる業種の例

業種の例許認可の窓口
・飲食店、喫茶店業
・食料品等販売業
・理容業、美容業
保健所
・古物、質屋営業
・自動車運転代行業
・風俗営業
警察署
・建設、不動産業
・旅館業
・医療品販売業
都道府県の役所

一口に許認可と言っても、ちょっとした「届出」から、審査に通らないと得られない「許可」まで、様々なパターンがあります。必要な許認可を受けずに営業をしていると、営業停止や罰金の対象となる可能性もあるので、念のため確認しておきましょう。
>> 許認可が必要な業種一覧

③ 税務署への届け出

実際に事業を始めたら、税務署へ「開業届」を提出しましょう。提出期限は、事業を始めた日から1ヶ月以内です。A4用紙で記入項目は多くないので、パパっと作成できます。

個人事業の開業・廃業等届出書

>> 開業届の書き方・記入例・提出方法について

屋号」を記入する欄があるので、このときまでに決めておくとよいでしょう。ただ、屋号は無記入でも問題ないうえ、提出後に変更したりしてもOKです。

開業届の提出は必須?
開業届の提出は法律で義務づけられているが、提出しなくても特に罰則はない。ただし、下記の「青色申告承認申請書」を提出する際などは、開業届を出してあるほうがスムーズなので、期限内に提出するのが無難だと言える。

「青色申告承認申請書」も一緒に出すのがオススメ

確定申告には大きく「白色申告」と「青色申告」の方式があり、開業後2ヶ月以内に申請書を提出すれば、最初の年から青色申告を選択できます。この申請書は、開業届と同じく税務署の窓口で提出します。あらかじめ、白色・青色のどちらを選ぶか検討しておきましょう。
>> 白色申告と青色申告の違いについて

開業時から従業員がいる場合は、開業届と合わせて「給与支払事務所等の開設届出書」なども提出します。とはいえ、ほとんどの人はひとまず「開業届と青色申告承認申請書!」と覚えておけばよいでしょう。

個人事業を始めたら - 確定申告に向けてやるべきこと

個人事業主は、原則として毎年2月16日~3月15日に「確定申告」を行います。確定申告とは、簡単に言うと「収入や経費を書類にまとめて、税務署に報告する手続き」のことです。この申告内容をもとに、所得税や住民税などの税金を納めます。

2024年(令和6年)の確定申告期間

開業した年の収入や支出については、2年目の2月16日~3月15日(土日祝の場合は翌平日)に確定申告を行います。

帳簿づけって何をするの?

個人事業主には、日々の収入や支出の記録が義務づけられています。この作業を「帳簿づけ」や「記帳」と言います。具体的なルールは、おおよそ確定申告の方式によって異なります。

白色申告青色申告
10万円控除55万円・65万円控除
簡易な簿記
(単式簿記)
簡易な簿記
(単式簿記)
正規の簿記
(複式簿記)

青色申告の「〇〇円控除」とは、青色申告者だけが受けられる節税メリット(青色申告特別控除)の大きさを表しています。ひとまず、青色申告だからといって、必ずしも難易度の高い「複式簿記」が必要になるわけではないと覚えておきましょう。
>> 単式簿記と複式簿記の違いについて

まとめ

個人事業を始める際に必要な最低限の手続きは、大きく以下の3つです。

概要期限
社会保険の手続き市区町村の役場で、国民年金の切替えと、国民健康保険の加入手続きを行う退職の翌日から
14日以内
許認可の取得保健所や警察署などの窓口で、営業に必要な許認可を得る営業を始めるまで
税務署への届け出所轄の税務署に「開業届」などの書類を提出する開業から1ヶ月以内

脱サラをせずに、副業として個人事業を始めるなら、「社会保険の手続き」を行う必要はありません。また、「許認可の取得」が必要なのは一部の業種だけです。

手続きに関する重要ポイント

  • 脱サラしたら、国民年金は「第2号被保険者」から「第1号被保険者」になる
  • 脱サラしたら、会社の「健康保険」を脱退して「国民健康保険」に加入する
  • 「国民健康保険」の代わりに「国民健康保険組合」に加入できる業種もある
  • 会社の「健康保険」を2年間継続できる制度もある(任意継続)
  • 店舗を構えるような業種は、許認可が必要な場合が多い
  • 許認可の窓口は保健所、警察署、役所など、業種によって様々
  • 税務署に提出するのは、主に「開業届」と「青色申告承認申請書
  • 白色申告でよいなら「青色申告承認申請書」の提出は不要

ちなみに、従業員を雇う際は、税務署への届け出に加えて、従業員の社会保険に関わる手続きなども必要になります。そのほか、特殊な業種や業態での開業を予定している場合は、念のため税務署や役所に必要な手続きを確認しておくとよいでしょう。

>> 個人事業主とは?知っておくべきキホンのまとめ
>> 確定申告とは?初めての方に分かりやすく説明
>> 帳簿づけや確定申告の流れ - 個人事業主の年間スケジュール