「起業・独立・開業・創業・創立・設立」の違いを整理
更新日 2024年7月25日
これらの言葉を厳密に使い分ける必要はありませんが、たとえば「起業」と「独立」ではニュアンスが異なります。本記事では一般的な用法をもとに、それぞれの微妙な違いを整理しています。
【一覧】一般的な用法・意味合い
それぞれ、仕事に関する文脈において、以下のような意味合いで使われることが多いです。
独立 | 雇用されていた会社を辞めて事業を始めること 他に束縛・支配されないという意味合いも含んでいる |
---|---|
起業 | 新しい事業を始めること 事業の形態や内容を問わず、事業を起こすことを指す |
創業 | 新しい事業を始めること 事業の沿革を示すときにも用いられる |
開業 | 個人事業を始めること 「起業」「創業」とほぼ同義だが、個人事業でよく使われる |
設立 | 会社などを立ち上げること 「法人の設立」「会社の設立」という表現は法律上でも使われる |
創立 | 新しい組織をつくること 複数人が所属する会社などの立ち上げを指して使われる |
この中で、よく明確に使い分けられているのは「開業」と「設立」くらいです。「開業」は主に個人事業の開始を指し、「設立」は法人(会社など)を立ち上げる際に使われます。逆に「個人事業の設立」「法人事業の開業」とは言いません。
独立
「独立」には「自分の力で生計を営むこと」という意味があります。そのため、事業の形態や内容に関わらず、「脱サラして事業を始めること」を指して使われるケースが多いです。
慣用句や用語の例
- 独立開業
- 独立支援
- 会社からの独立
端的に「起業を前提に会社を辞めること」を指す場合もあります。そのため「独立起業」や「独立開業」などの複合ワードで使われることも多いです。
起業
「起業」という言葉は「新しい事業を始めること」を指して使われます。事業の形態などに関わらず、幅広く使える言葉です。
慣用句や用語の例
- ベンチャー起業
- 起業家
- 起業セミナー
- 社内起業
「創業」とよく似た言葉ですが、一般的に「起業」のほうが「従来にないビジネスを始める」という意味合いが強いです。また「開業」と言うと個人事業に限定されがちであり、「起業」のほうがより広く使える表現だと言えます。
創業
「創業」もまた、「新しく事業を始めること」を指す言葉です。 個人事業と法人のどちらをスタートするときにもこの表現を使えます。 ただし、個人事業を開業した後、期間をおいて法人化した場合には、個人事業の開業時点を「創業」と記載します。 コーポレートサイトなどで会社の沿革を示す際に、この表現が用いられます。
慣用句や用語の例
- 創業〇〇年
- 創業記念日
- 創業者
- 日本政策金融金庫の「新創業融資制度」
「創業」と言うと少し堅い印象があり、話し言葉としては「起業」のほうがポピュラーです。より具体的なニュアンスを伝えるためには、個人事業なら「開業」、法人事業なら「設立」と表現すればよいです。
開業
「開業」は、よく個人事業のスタートを指して使われます。本来の意味は「起業」や「創業」とほとんど同じですが、法人事業に対して「開業」という表現はあまりしません。(例外として、病院は法人でも開業と言うのが一般的)
【引用】
……したがって、新たに開業した個人事業者又は新たに設立された法人のように、その課税期間について基準期間における課税売上高がない場合又は基準期間がない場合には、原則として納税義務が免除されます……。
タックスアンサー No.6531 - 国税庁
上記は、消費税に関する国税庁の説明の一部です。個人事業には「開業」、法人には「設立」という言葉が、あえて区別して使われています。
慣用句や用語の例
- 開業資金
- 開業1年目
- 個人事業の「開業届」
- 勘定科目の「開業費」
個人事業の開始を税務署へ届け出る際には、いわゆる「開業届」を提出します。これが、個人事業において特に「開業」という言葉が使われる原因だと考えられます。ただ、もちろん法人事業のスタートを「開業」と言うのも間違いではありません。
設立
法人として事業を始めるまでに必要な手続き(定款の作成など)を済ませることを、一般的に「法人を設立する」と言います。下記のように、法律においても株式会社の立ち上げは「設立」と表現されています。
【引用】
株式会社を設立するには、発起人が定款を作成し、その全員がこれに署名し、又は記名押印しなければならない。
会社法第26条(定款の作成)
この他にも「法人の設立」という言い回しは、民法や商法の条文にも出てきます。他の言葉と比べるとキッチリ使い分けられていることが多いです。
慣用句や用語の例
- 会社の設立手続き
- 「発起設立」と「募集設立」(株式会社の設立方法)
- 法務局に提出する「株式会社設立登記申請書」
- 税務署に提出する「法人設立届出書」
実際の手続きを伴うという点で、「起業」や「創業」よりも具体的な表現だと言えます。ちなみに、個人事業のスタートは「開業」と表現することが多く、「設立」と言うことはほとんどありません。
創立
「創立」は「組織や機関を新たにつくること」を指す言葉です。法人として事業を始める際には「会社を創立する」と言ったりもします。ただ、“複数人が所属する組織をつくる”というニュアンスがあるので、個人事業についてはあまり使われません。
慣用句や用語の例
- 創立〇〇周年
- 創立記念日
- 株式会社の「創立総会」
- 勘定科目の「創立費」
「設立」が具体的な手続きを伴う言葉だとすると、「創立」はもう少し抽象的な表現と言えます。たとえば、よく「会社の設立手続き」とは言いますが、「創立手続き」と言うと違和感があります。
まとめ - 個人・法人での使い分け
それぞれの言葉に大きな意味の違いはありませんが、個人事業と法人事業で使い分けられているものもあります。
【個人・法人】一般的な言葉の使い分け
個人 | 法人 | |
---|---|---|
独立 | ○ | ○ |
起業 | ○ | ○ |
創業 | ○ | ○ |
開業 | ○ | △ |
設立 | △ | ○ |
創立 | △ | ○ |
単純に「独立」「起業」「創業」というと、個人事業を始めたのか、会社を設立したのかまでは伝わりません。 しかし、ある程度税務に精通している人になら、「開業」といえば個人事業の開業、「設立」といえば法人の設立ということが伝わります。
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