白色申告も発生主義で記帳する必要がある?
更新日 2021年9月02日

白色申告でも発生主義で帳簿づけする
結論からいうと、白色申告でも基本的には発生主義で記帳する必要があります。 ただし、白色申告は簡易な方法による記帳が認められており、 「きっちりとした」発生主義で記帳しなくても構いません。詳細は後述しています。
現金主義による記帳が認められるのは、下記の要件を全て満たし、許可を得た場合だけです。
- 青色申告であること
- 小規模事業者であること(おおまかにいうと前々年の所得300万円以下)
- 期限内に税務署へ届け出をだすこと
>> 3種類の青色申告を比較
白色申告で事業所得等が300万円以下の場合は、そもそも帳簿を作る義務がないという情報がいまだにインターネット上で散見されますが、これは古い情報ですのでご注意下さい。 平成26年(2014年)以降は、白色申告者全員に記帳と帳簿保存の義務が課されるようになりました。 つまり、現在では所得300万円以下の白色申告者にも記帳義務があるということです。
白色申告の記帳方法
記帳義務はありますが、白色申告では簡易な方法による記帳が認められています。 例えば、少額な現金売上はひとつひとつ帳簿づけせず、1日分をまとめてつけてもよいとされています。
また、掛売で取引している場合でも、納品書や請求書で内容を確認できるものについては、 実際に現金を受け取ったときに現金売上として記載するだけで構いません。 もっとも、これだけでは現金主義による帳簿づけとなりますが、 例えば、年末の売掛金に関しては、本年中の売上として記載することになっています。
「掛売上の取引で保存している納品書控、請求書控等によりその内容を確認できるものについては、日々の記載を省略し、現実に代金を受け取つた時に現金売上として記載する。この場合には、年末における売掛金の残高を記載するものとする。」
簡易な方法による記帳 事業所得(一般) 1の(4) - 国税庁
つまり「期中は現金主義的な記帳方法でいいけど、期末あたりの取引はしっかり発生主義的な記帳でよろしく」ということです。
>> 発生主義と現金主義の違い
期中現金主義・期末発生主義をもう少し具体的に解説
先ほど述べたとおり、簡易な方法による記帳では、売上や経費については、実際に現金の動きがあった時に記帳すればよいとされています。ただし、年末の売上や経費は、本年中のものとして計上します。
たとえば、8月10日に売掛が発生し、9月20日に売掛分の現金が回収できたとします。 この場合、まず8月10日の日付で売掛金が発生したことを記載し、 9月20日に現金が回収できたことを記載するのが原則です。合計で2回記帳をするわけです。 しかしこれを簡略化し、最初の記載を省略して、9月20日に売上として現金を得たことだけを記載すればよいわけです。
ただし、これは年をまたがない「期中」だけの話で、「期末」の掛売に関しては、その年の売掛金として記載する必要があります。 基本、個人事業の会計期間は1月1日~12月31日と規定されているので、期末の取引というのは、つまり年末の取引のことです。
期中 | 期末 |
---|---|
現金主義による記帳でOK | 発生主義による記帳をする |
例えば、当年12月15日に売掛が発生し、翌年1月20日に売掛分のお金を回収する場合には、 12月15日に売上を売掛金として記載し、当年分の売上に計上します。 実際に入金をされていない状態でも、帳簿上は当年分の収入金額としてカウントするということです。 この売上は翌年の1月20日に入金されますが、当然その年分の収入としてはカウントしません。
「1年間の合計収入」を考えるときには、8月に売上が出ても9月に売上が出ても同じなわけです。 しかし、12月に売上が出るのと、翌年1月に売上が出るのでは、年ごとの収入金額に影響しますね。 なので、期末の取引で年をまたぐものは、きっちり発生主義的に記帳します。 翌々月払いなどということもあるので、年をまたぐ取引であれば、10月や11月の取引も同様に扱います。
年末に残った売掛金は「◯◯社 売掛金」というメモ書きを摘要欄にでも記しておき、その年の売上として計上します。 白色申告者の決算の手引 P.3「6 未収入金など」 - 国税庁
このように、期中の取引については、実際にお金が動いた段階でのみ、それを記帳すればよいことになっています。 そして、期末の取引については、まだ実際にお金を受け取っていない売上でも、売掛が確定した時点でその年の収入として計上します。 これは売上だけでなく、仕入れや経費についても同じ考え方で処理します。
>> 発生主義と現金主義の違いをおさらい
>> 白色申告の簡単な帳簿づけ・領収証等の保存
>> 個人事業の確定申告で提出する必要書類