外注先へ報酬を支払う時の源泉徴収税の計算・仕訳方法
更新日 2024年7月17日
個人事業主でも源泉徴収をされる側の人だけでなく、支払いの際に源泉徴収をすることになる人もいます。本ページでは、源泉徴収をする側の立場で説明をすすめています。
源泉徴収の義務について
株式会社などの法人は源泉徴収義務者です。個人事業主であっても、源泉徴収義務者であれば、 外注先の個人へ「源泉徴収が必要な報酬・料金等」を支払う時には源泉徴収をする必要があります。
逆に、源泉徴収義務者に当てはまらない個人事業主は、外注先の個人へ「源泉徴収が必要な報酬・料金等」を支払う時でも、源泉徴収をする必要はありません。
従業員を雇用しておらず、一人で仕事をしている個人事業主は、源泉徴収義務者には当てはまりません。たとえば、フリーランスのWEBデザイナーなど、誰かを雇うことなく仕事をしている方は、源泉徴収義務者には当てはまらないということです。
源泉徴収が必要な報酬の計算方法
報酬の支払い金額が100万円以下の場合は「報酬額の10.21%」が源泉徴収する税額です。 昔は源泉徴収の税率が10%でしたが、 2013年(平成25年)以降は「復興特別所得税」が加算されて10.21%となりました。 >> 支払金額が100万円超の場合
報酬が決まっていて、そこから源泉徴収税を差し引く場合には、 下記のように源泉徴収税と支払い金額を算出します。
- 源泉徴収税と支払い金額
- 報酬 × 10.21% = 源泉徴収税
報酬 − 源泉徴収税 = 振り込む金額(手渡す金額)
報酬から源泉徴収税を差し引いた金額が、外注先へ振り込む or 手渡しする金額となります。 外注先のフリーランスから見れば、振り込まれる金額(手渡しされる金額)が、いわゆる「手取り金額」です。
上記は、「報酬が決まっていて、そこから源泉徴収税を差し引く場合」です。 「手取り金額を先に決めておき、そこに源泉徴収税をのせてあげる場合」は、 また違う計算方法になります。
源泉徴収税の計算例と早見表
たとえば報酬が10,000円の場合、下記のように振込額を計算します。
10,000円 × 0.1021 = 1,021円(源泉徴収税)
10,000円 − 1,021円 = 8,979円(実際に振り込む or 手渡す金額)
よくある報酬額と源泉徴収税の対応は、下表の通りです。 報酬額・源泉徴収税・支払い額の確認用として利用して下さい。
報酬額 | 源泉徴収税 | 支払い額 |
---|---|---|
1,000円 | 102円 | 898円 |
3,000円 | 306円 | 2,694円 |
5,000円 | 510円 | 4,490円 |
10,000円 | 1,021円 | 8,979円 |
15,000円 | 1,531円 | 13,469円 |
20,000円 | 2,042円 | 17,958円 |
30,000円 | 3,063円 | 26,937円 |
40,000円 | 4,084円 | 35,916円 |
50,000円 | 5,105円 | 44,895円 |
60,000円 | 6,126円 | 53,874円 |
70,000円 | 7,147円 | 62,853円 |
80,000円 | 8,168円 | 71,832円 |
90,000円 | 9,189円 | 80,811円 |
100,000円 | 10,210円 | 89,790円 |
源泉徴収税の小数点以下の端数は切り捨てる
例えば、25,000円の報酬を支払ったときには、源泉徴収税に小数点以下の端数が生じてしまいます。 このように算出された源泉徴収税に1円未満の端数が生じる場合は、小数点以下を切り捨てた金額を源泉徴収することになります。
25,000円 × 0.1021 = 2,552.5円
この場合は、0.5を切り捨てて、2,552円が源泉徴収税(所得税と復興特別所得税)となります。
25,000円 − 2,552円 = 22,448円(振り込み or 手渡しする金額)
所得税と復興特別所得税を別々に計算して、それぞれで切り捨て処理をしたものを合算してはいけません。 上記のように、所得税と復興特別所得税の合計額から切り捨て処理を行います。
報酬を支払った時・納税した時の仕訳例
外注先へ報酬を支払った時と、源泉徴収しておいた所得税を納める時の仕訳例を紹介します。 まずは、先ほどの計算式を見直してみましょう。
- 源泉徴収税と支払い金額
- 報酬 × 10.21% = 源泉徴収税
報酬 − 源泉徴収税 = 振り込む金額(手渡す金額)
ここでの「報酬」が、外注費などの勘定科目で経費計上できます。 源泉徴収税は、支払い者がひとまず預かっているイメージです。 なので、まずは「預り金」などの勘定科目で帳簿づけしておきます。 預かった所得税は、その報酬を支払った日の翌月10日までに納税する必要があります。
複式簿記での仕訳例は以下のとおりです。まずは、報酬の支払いを行った時点で帳簿づけします。
報酬を支払った時点での帳簿づけ例
日付 | 借方 | 貸方 | 摘要 |
---|---|---|---|
20XX年3月25日 | 外注費 10,000円 | 現金 8,979円 | デザインA 支払い額 |
預り金 1,021円 | 源泉所得税 |
この仕訳では10,000円の「外注費(外注工賃)」を経費計上しますが、この時点で実際に出ていく現金は8,979円です。残りの1,021円はまだ事業主の手元にありますが、後に税務署へ納めることになります。
次に、預かっておいた源泉徴収税を納付した時点で帳簿づけします。 上述の通り、外注先へ支払いを行った日の翌月10日までに、預かっておいた源泉徴収税を税務署へ納めます。
源泉徴収した所得税を納付する時点での帳簿づけ例
日付 | 借方 | 貸方 | 摘要 |
---|---|---|---|
20XX年4月7日 | 預り金 1,021円 | 現金 1,021円 | 4月分の源泉徴収額 |
源泉徴収した税金を納める時に使う用紙に必要事項を記入して、銀行やゆうちょ、税務署などの窓口で納税します。 この用紙はダウンロード・印刷して使えるものではないので、税務署へ取りに行きましょう。税務署から郵送してもらうこともできます。
>> 源泉徴収税の納付期限、納付場所、納付書の書き方など
>> そもそも源泉徴収が必要な報酬・料金等とは?
>> 個人事業の源泉徴収に関するまとめ
>> ブラウザで動作する源泉徴収の自動計算ツール - 自営百科