源泉徴収税・消費税の請求と計算例・仕訳例
更新日 2024年7月18日
- 取引先から個人事業主に支払われる報酬について
- 源泉徴収税をどのように計算するか
- 報酬が決まっていて、そこから源泉所得税が引かれる場合
- 手取り金額が決まっていて、それに応じて源泉所得税をのせてもらう場合
- 源泉所得税の小数点以下は切り捨てる
- 報酬を受け取った場合の帳簿付け・仕訳例
- 消費税について
取引先から個人事業主に支払われる報酬について
報酬金額が決まっていて、そこから源泉徴収税が引かれる場合と、 手取り金額が決まっていて、そこに取引先が源泉徴収税をのせてくれる場合があります。 基本的には、報酬が決まっていてそこから源泉徴収税が引かれ、手取り金額が支払われるものだと考えておきましょう。
- 源泉徴収税とは?
- 給与や報酬などを支払う際に、支払側が差し引いておく税金のこと。 報酬の支払いにおいては、支払側が所得税を差し引いて、税務署へ納めておく。
ただし、こちらが個人事業主だからといってどんな仕事の報酬でも源泉徴収されるわけではありません。 >> 源泉徴収が必要な報酬・料金とは?
また、取引先が源泉徴収義務者でない場合には、源泉徴収されることはありません。 相手が法人の場合は、源泉徴収義務者です。相手もこちらと同じように個人の場合は、源泉徴収義務者でない可能性が高いです。
源泉徴収税をどのように計算するか
2013年〜2037年は、通常の所得税(10%)に復興特別所得税(0.21%)も合わせて、源泉徴収税の税率は10.21%となっています。 報酬金額にこの10.21%をかけて源泉徴収税を算出することになります。
報酬金額から源泉徴収税を差し引いた額が、実際に振り込まれる金額になります。 源泉徴収税は、取引先が税務署へ納めてくれます。
請求金額 − 源泉徴収税 = 実際に振り込まれる金額
請求書などで報酬額と消費税額を明確に分けている記載している場合は、消費税を含めていない報酬金額に10.21%をかけて算出しても良いことになっています。(消費税等と源泉所得税及び復興特別所得税 - 国税庁)
それぞれの例を順番にみていきましょう。
報酬が決まっていて、そこから源泉徴収税が引かれる場合
【報酬 10,000円(消費税込)の場合】
10,000 × 10.21% = 1,021円(源泉徴収税)
10,000円(報酬金額)
10,000 − 1,021 = 8,979円(実際に振り込まれる金額)
【報酬 10,000円(消費税別)の場合】
10,000 × 10.21% = 1,021円(源泉徴収税)
10,000 × 10% = 1,000円(消費税)
10,000 + 1,000 = 11,000円(税込みの報酬金額)
11,000 − 1,021 = 9,979円(実際に振り込まれる金額)
手取り金額が決まっていて、それに応じて源泉徴収税をのせてもらう場合
【手取り10,000円(消費税込)の場合】
10,000 ÷ 0.8979 = 11,137円(報酬金額)
0.8979という数字は、1から源泉徴収税の税率(10.21%)を差し引いたものです。
1 − 0.1021 = 0.8979
11,137 − 10,000 = 1,137円(源泉徴収税)
10,000円(実際に振り込まれる金額)
【手取り10,000円(消費税別)の場合】
(10,000 ÷ 0.8979) − 10,000 = 1,137円(源泉徴収税)
11,137 × 10% = 1,113円(消費税)
消費税は、手取り金額ではなく、報酬金額に対して発生します。
この場合の報酬金額は11,137円となるので、この金額に消費税率をかけます。
10,000 + 1,137 + 1,113 = 12,250円(報酬金額)
12,250 − 1,137 = 11,113円(実際に振り込まれる金額)
源泉徴収税の小数点以下は切り捨てる
源泉徴収税を算出する時に、 確定税額で1円未満の端数が出る場合は、切り捨てることになっています。
例えば、報酬が15,000円(消費税込)の場合
15,000円 × 10.21% = 1,531.5円
このように、算出される源泉徴収税に小数点以下の数字が出る場合には、 その小数点以下の数字を切り捨てることになっています。
つまり、この場合の源泉所得税は1,531円です。(「0.5」の部分は切り捨て)
15,000円 − 1,531円 = 13,469円
この場合は、13,469円が実際に振り込まれる金額となります。
報酬を受け取った場合の帳簿づけ・仕訳例
複式簿記の帳簿づけ例 ①
報酬 10,000円(消費税込)
報酬から源泉徴収税が差し引かれ、源泉徴収後の金額を現金で受け取った場合
日付 | 借方 | 貸方 | 摘要 |
---|---|---|---|
20XX年5月15日 | 現金 8,979 | 売上高 10,000 | A社 デザイン料 |
事業主貸 1,021 | A社 デザイン料 源泉徴収 |
取引先に源泉徴収された金額は、事業主貸で仕訳します。 (事業主貸ではなく、仮払源泉税や仮払税金といった勘定科目で仕訳しても構いません。 その場合は、決算のタイミングで事業主貸へ清算をします。)
複式簿記の帳簿づけ例 ②
報酬 10,000円(消費税込)
制作したものを納品し、翌月末日に報酬から源泉徴収税が差し引かれた金額を振り込みされた場合
まずは、仕事を終えて納品するときの日付で仕訳します。
日付 | 借方 | 貸方 | 摘要 |
---|---|---|---|
20XX年5月15日 | 売掛金 10,000 | 売上高 10,000 | A社 デザイン料 |
そして、実際に預金口座へ入金があった日付で以下のように仕訳します。
日付 | 借方 | 貸方 | 摘要 |
---|---|---|---|
20XX年6月30日 | 普通預金 8,979 | 売掛金 10,000 | A社 売掛金回収 |
事業主貸 1,021 | 源泉徴収 |
消費税について
報酬と一緒に受け取った消費税は、課税事業者でないかぎり、そのまま事業主のものとなります。
免税事業者は、受け取った消費税を納税する必要はありません。
>> 個人事業主の消費税について
個人事業主の場合、基本的に開業してから2年間は免税事業者でいられます。 また開業してから2年以上経っていても前々年の課税売上高が1,000万円を超えていなければ、免税事業者のままでいられます。 (ただし、前年の上半期の課税売上高だけで1,000万円を超え、なおかつ、この期間の給与等の支払い金額も1,000万円を超えた場合には課税事業者となります。)
これらの消費税や源泉徴収税を、どのように請求書へ記載するかは下記を参考にして下さい。
>> 個人事業での請求書の書き方・作り方