消費税の益税問題とは?
更新日 2021年2月17日
消費税の「益税問題」について、分かりやすくまとめました。消費税の益税問題とは、最終的に国へ納付されるべき消費税が、それを一旦預かった事業者の利益になってしまうことを指します。
消費税の「免税事業者」と「課税事業者」
まずは消費税の「免税事業者」と「課税事業者」の違いをおさえておきましょう。 消費税を税務署へ納めなくてよい事業者を「免税事業者」と呼び、納付の必要がある事業者を「課税事業者」と呼びます。 消費税の納付において、事業者は大きくこの2つに分かれます。
基本的に、開業してから2年間は免税事業者として扱われます。 この間、事業者は消費税を税務署へ納める必要がありません。
また、開業してから3年以上経過していたとしても、 前々年の課税売上高が1,000万円を超えない限りは、免税事業者として継続して事業運営できます。 (特定期間の判定もあり)
「免税事業者」にとっての益税
免税事業者は、消費税を税務署へ納める必要がないということを上述しました。 しかし、免税事業者であっても、お客さんから商品代金と一緒に消費税を頂くことにはなります。
消費税が10%として、1,000円のものに100円の消費税分を加えると「1,100円(税込)」などと表記することになります。 免税事業者といえども、このように商品代金を税込で表記し、販売して構わないわけです。
では、この商品代金と一緒に受け取った消費税はどうなるのかと言えば、 納付を免除されているので、受け取った免税事業者のものになります。 つまり、商品を販売した事業者の取り分になるということです。
消費者(お客さん)からみれば、最終的に税務署へ納付してもらうために払った消費税が、納税されないことになります。 事業者からみれば、その「消費税がそのまま利益(益税)」になります。これが「益税問題」のひとつです。
「簡易課税制度」による益税
消費税の免税事業者だけでなく、課税事業者にとっても益税が発生することがあります。 まずは、事業者が納付する消費税の計算方法を見ていきましょう。
消費税の基本的な計算方法は、 売上と一緒に受け取った消費税から、仕入れや経費として支払った消費税を差し引くというものです。
- 消費税の基本的な計算式
- 受け取った消費税 − 支払った消費税 = 消費税の納税額
これよりも簡単に納付する消費税を算出できる方法として「簡易課税制度」による納税方法が用意されています。 この簡易課税制度は、簡単にいうと「小規模な事業者は、納付する消費税をざっくり計算して構わんよ」という制度です。
この方法では、以下の計算式で納付する消費税を算出します。
- 簡易課税方式での最も基本的な消費税計算
- 受け取った消費税 − (受け取った消費税 × みなし仕入率) = 納付する消費税
この「みなし仕入れ率」は、業種によって定められています。 例えば、小売業では80%、サービス業では50%と定められています。 前半の計算式にあった「支払った消費税」は全く考慮せず、 業種に応じた一定の割合で「ざっくりの消費税額」を算出するだけの方法なのです。
事業者によっては、この方法を選ぶことで納める消費税が少なくなります。 そして結果的には、預かった消費税の一部がそのまま事業者の利益(益税)になるというわけです。 これが、もうひとつの「益税問題」です。
「消費税の免税事業者にとっての益税」と「簡易課税制度による益税」を見てきました。 このように、本来正しく納められるべき消費税が、そのまま事業者の利益になってしまう場合があります。 このことが益税問題と呼ばれ、消費税制度の問題点として指摘されています。
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